seventeen red
会えず、歩けずの車いす日々。
いくら短いといっても、僕にとっては、嫌でしかない。
歩けないおかげで、勉強をする以外の楽しみがないんだ。
もう、少し。あと、もう少しって、思うたびずっと、頭の中から、チトセが消えない。
そんななか、男性の怒鳴り声が聞こえてきた。
一応、僕は怪我人なのだが、そのあたりの考慮はどうなっているんだろうか?
電動の車いすで助かる。
僕は、その声のほうへ行ってみた。
そこは、応接間。
真矢さんと母、兄がいて、袴をはいている男性は真矢さんのお父さんだ。
僕は、理解した。
その瞬間、兄、史乃の頬に平手が飛んできた。
その手は、お義父さん。
「真矢は、江祇時家の跡取りと結婚するんじゃ!お前なんぞに大事な娘を渡せるか!」
これは、僕はいないほうがいいな。
「お父さん!」
真矢さんの鋭い悲鳴のような声が、いつもは穏やかな応接間を静かにさせた。
「楢木さん、史乃が失礼をいたしました。しかし、真矢さんは澪と一緒にいて、幸せになれるでしょうか?」
皆、母のほうを見た。
「楢木さん。澪は、まだ元婚約者が忘れられずにおります。その上、跡取りになる気もないと言っております。真矢さん、あなたが選びなさい。あなたのいく道です。他の誰でもない、真矢さん、あなたが選びなさい」
母のキリッとした言葉が空気を乾燥させた。
「わ、私は、史乃さんと一緒にいたい。いたいです、お父さん!」
隣で頬を腫らす兄は、叩かれたのとは別に、顔を赤くした。
小声で、呟いた。
《兄さん、よかったね》
と。
僕も、あんな風になれるかな?
分かり合えるかな?
兄の顔は、みるみる赤くなってその兄に、真矢さんが抱き付いて、楢木さんは黙り込んだ。