sixteen time
「澪様、史乃様。奥様の支度ができました。お車への移動をお願いします」
部屋であれこれ言ってるうちに時間になってしまった。
「今、行く。
澪、行こうか」
兄さんの穏やかな声を最後に、意識が無くなった。
見えるのは、温かい陽だまりと、知十世?
僕は、横になっていて、チトセは少し離れた場所で、本を読んでいた。
あぁ、笑ってる。良かった。
「チトセ、こっち来て」
振り向くチトセが可愛い。
「ねぇ、もっとこっち。ココ来て」
素直にコッチへ、来てくれるのに
「なんで、しゃべってくれないの?」
悲しい。のかな?
もう少し、よく見せて。
「チトセ」
「澪!」
兄さん?チトセは?
「戸叶!医者を早く。澪、痛いところとかは無いか?」
え?何が?
「兄...さ、ん?チトセは?」
少し驚いて、悲しい目をした。
「澪、ここは病院だ。澪が、倒れたんだ。覚えてるか?」
「えーっと...僕が、あっ!倒れたんだ」
じゃあ、チトセは...
「澪、夢でチトセさんに会ったのか?」
頷く。それしかできなかった。
僕の目には、大粒の涙。
声も鼻声。
「逢え、た。よ」
滲む世界。
「そっか」
「チトセ。会いたい。会いたいよ」
「澪、医者に裏の手、使って知十世さんの病状聞こうと思ったんだけど、ダメだった。でも、『余命』があることはわかった。期間も聞いた。あと【半年】が限界だそうだ」
半年...?
たった、半年。
「なんで?今すぐ、逢いに行く。兄さん、退いて」
ベッドを降りようとしたとき、僕は兄さんに抱きしめられた。
「ダメだ。その体じゃ、行っても苦しめるだけだ」
僕は、今。足に力が入らなかった。
なんで?
「歩くようにはなれる。でも、まだ、ダメだ」
「いやだ。兄さん、行かせてよ。ねぇってば!」
兄さんは、僕を抱きしめて、離さなかった。
そのあと、僕が歩けないのは、能力の使い過ぎにあった。
5日ほどで治るそうだ。
その間にも、命は刻一刻と、近づいている。