threeteen future
そのあと、僕は真矢さんが帰ったあとでやっと解放された。
「兄さん、一応耳塞いだけど、少し聞こえてたからね?」
=気を付けろ
「あぁ、ごめん。なんか崩壊した。可愛くて、たまらなくなった。」
「幸せそうで何よりです。兄上」
普通に言ったら、皮肉っぽく聞こえるけど、笑顔で言った。
だって、嬉しいから。
兄が、こんなに笑ってることは珍しい。
嬉しくて、嬉しくてたまらない。
こんなにも、心がふわふわする。
なんていえば伝わるんだろうって思う。
「澪、すっごいニヤケてるけど、大丈夫?」
そう言う兄だってすごく笑ってる。
こんなことが僕にもあった。
兄は今まで、こんな経験があったんだろうか?
「全っ然大丈夫!そういえば、兄さんはこういう経験あるの?」
ちょっと驚いた顔して、少し暗くなった。
聞かないほうがよかったかな。
「澪、真矢はもしかしたら、俺みたいな奴は、嫌うかもしれない」
「兄さん...何があったの?」
聞いていいのか、わからない。
でも、聞かないといけない気がする。
「俺な...父さんとかの仕事によく行ってたのは知ってるよな?俺は、感情とかは関係なしに、」
顔がどんどん黒ずんでいくように奇妙な笑い方をし始めた。
それはまるで、壊れた人形のようで。
「口説いて、落として、満足させて、必要な者も物も手に入れてきた。それは、一人や二人じゃない。それは、何十人か。いや、それ以上だ。女も男も、俺はそう...してきたんだ」
兄さんがこんなに傷ついてるのも知らずに、僕は。
「兄さん、ごめん。もう、思い出さないでいい」
「いいんだ。澪。俺はちゃんと言わなきゃならないことは変わらない」
黒い笑顔は、明るい未来を壊さないかな。
そんな思いが、頭をよぎった。
「うん」
としか、応えられなかった。
「あぁ、長いこと、ごめんな。もう、行こうか」
そう言って、もとに戻った姿。
本当に、これでいいのか少し怖かった。
未来が、もし、背を向けていたら。