eleven where
家に帰ってきた僕に一番早く話しかけて来たのは兄の史乃だった。
「お帰り、知十世さんのところ?」
「兄さんただいま。そうだよ。チトセのところ」
「ついさっきのことなんだが、聞いてくれるか?俺の部屋で話したい」
なんだか、いつもと違う様子。
「うん。じゃあ、一回僕の部屋に寄っていい?」
「いいけど。何かあるのか?」
「うん。ちょっとね」
見ればわかる。
兄はその事もわかったようだ。
取りに行ったのは、『盗聴器発見器』
僕の部屋にも取り付けられていることがたまにある。
だいたいの犯人はわかっている。
でも、毎日確認してるから、すぐに見つかる。
一応、母や父、誰にも内緒でいろいろな免許を持っている。
そのくらいなら、許されるでしょ?
兄の部屋に来ることはあまりなかった。
離れていたし、第一に忙しかったから。
でも本当は、もっと遊びたかった。
いつも会ったときは、能力関係か、勉強関係だけだった。
兄は、父の勉強面の期待を全て受け止めて、僕にあまり向かないように必死だったことはよく知ってる。
僕と比べられないようにと、時間を割いて教えてくれた。
温かいクリーム色が基調とされる兄の部屋は暖かくて、安心する。
チトセを抱きしめているときとは違う、安心がある。
兄の部屋には、盗聴器なんて物はなかった。
兄は、自分のベッドに腰を掛けた。
兄らしい、水色と紺色のベッド。
「それで、真矢さんのことなんだが」
「うん」
「泣いていた」
ん?
「どういう意味合いで?」
沈黙が数秒続き、
「わからない」
「えっと、状況を教えてほしい」
あれは、澪を探しながら、真矢さんも探してて、澪の靴がなかったから、いないなってわかって、真矢さんを探していた。
『真矢さん!澪、知りませんか?」
あれ例外なんて、言えばいいかわからなかった。
「澪さん、なら、いません。...ち、とせさんのところじゃないかと思います」
かすれそうなそんな声聞いたら、抱きしめてた。
「史乃さん!?」
『俺じゃダメ?澪の婚約者ってことはわかってるけど、俺は真矢さんが好きなんだ。俺じゃ代わりにならない?」
「私は、どうすることもできません。婚約は、父が決めたことです。従わなければならないです。史乃さんすごくうれしいです。でも」
「嫌いなら、もう、この腕をすり抜けていなくなってるよね?けして、嫌いじゃないとは、思っていい?」『史乃さん?』
「真矢さん、嫌じゃなければもう少しこうさせて」