悪役令嬢はもう古い?
あえて身体的特徴などの描写を省きましたので、そこは皆様の想像にお任せしますです。
――それでは短いお付き合いをどうぞ。
私の名前はメアリ・ハーネスト、伯爵家の三女でこの春から学校に通う予定。
ある日、頭を打って前世の記憶を取り戻した私はそのまま五日間寝込んだ。ここまでは良く有る事(?)だと思った。
軽く説明すると前世の名前は橋本美月、二十六歳のOLで……、死んだ記憶は無いのに転生してる? 突然死だったのかな? まぁいいや。
意識を取り戻すと目の前には婚約者である第二王子マーク・アインハルツの顔があった。おいおい、婚約者とはいえ寝ているレディの寝室に入るかよ普通。とか思っていると……
「どうしても早く二人きりで確認したくてな、人払いをさせてもらった」
そんなに心配だったのかと思ったが、……人払い? 何で? そう思って首を傾げる私に一言。
「俺も一ヶ月前に頭を打って数日寝込んだ。この意味が解るよな?」
えっ? それってまさか……。
「えっと、別の記憶があったりします?」
「やっぱりお前もか」
そこでお互いの記憶をすり合わせた結果、ここが前世でプレイした乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢なのが解った。そして案の定、このままでは破滅人生一直線な訳だ。
そして驚いた事に王子様は昔クラスメイトだった中村君だった。といっても接点も無かったので名前ぐらいしか覚えてないけどね。
当然破滅は回避したいし中村君も協力をしてくれると言ってくれた。うん、何とかなりそうな予感。
取り敢えず結婚云々は置いといて、明後日からの学校についてはフラグを全力で折りつつ出たとこ勝負って事で話は纏まりました。
まぁ、心変わりする筈の王子が味方なら助かったようなもんだよね。
登校初日、教室に入ると自分の席に座る。少し離れた席に座る中村君が手を振っている。懐かしいな、昔の席もこの辺りだったなぁ……。
そこで教室の数人がやけにソワソワしていたり、挙動不審に周囲を伺っている。
まさかと、ある仮説が頭を過ぎる。そこへ担任の教師が入ってきた。面倒臭いとばかりに手入れを怠った髪の毛は寝癖がついており、お洒落のおの字もない服はヨレヨレで皺だらけ。
「あ~、今日からこのクラスの担任になる、小……じゃなかったジアス・アルオネアだ。俺に面倒掛けなきゃ後は自由だ。よろしくな。
じゃあ、手始めに学級委員長でも決めるか。立候補か推薦はあるか?」
うん。そうそう、こういう担任だったよな。いつでも投げ遣りかつ面倒臭そうな進行の仕方して、ヘタすると自習にして携帯弄ってたあの頃のまんまだ。
この瞬間、私の想像した仮説は確定となった。あれは間違い無く元担任の小林先生だ。すると、……私は立ち上がると、ある女性の席まで歩いた。
「また委員長をやってくれないかしら? 蘇我さん」
その言葉にクラス全員が驚いて注目する。私は席に戻ると隣に座る男子に『石井君でしょ? 久しぶりね』と声を掛けた。
その瞬間、全員が理解したようで互いの名前を確認し始める。やっぱり全員前世の記憶持ちなんだなぁ。もしかして他のクラスもそうなのかもと思っていると。
「あ、俺本多ね。あのさ、学校の正面にパン屋と雑貨屋があったんだけど、日本に居た頃にも同じ場所に無かったか?」
彼の言葉に記憶を手繰る。そういえば有ったような……。それを切っ掛けに皆で今の学校の周辺と過去の記憶を照らし合わせ始めると、かなりの割合で合致した。
まさかの地球ごと転生ですか? スケールでか過ぎないか? 意味あんの?
何が何だか解らないけど、何もしなくても破滅エンドは回避できたみたい。
――安心したので今日は同窓会気分で語り合う事にしようかな。
読了お疲れ様でした。
もしも続きが書きたいという方がいましたら、お持ち帰り下さい。
(一報あると嬉しいかも)
その際、名前の変更とかも御自由にどうぞです。
それでは、最後までお読み頂きありがとうございました。