二つ目の回復の泉
気を取り直して、発見した二つ目の泉についての見解を述べたいと思います。
とまあ、気取って解説風にしてみたけど。
単純に、ここ、二つ目の町の跡地だわ。
ゲームの時の、うっすらとした記憶と照らし合わせて、何となく、見覚えがある。
といっても、ここも初心者の館と同じように、瓦礫だらけなんだけどね。
ここの回復の泉は、噴水みたいになっていて、確か何かのイベントのフラグがあったよな。
私は遠い遠い記憶を手繰り寄せる。
……なんだっけ?
思い出せない。
仕方なく、泉を詳しく調べてみることにする。
周りが瓦礫だらけに比べれば、泉の保存状態は良い。
泉を取り巻く煉瓦の壁は、少し欠けているだけで、まだしっかりと立っているし。
私はそーと手を煉瓦に沿わせて滑らせていく。
あるところで、煉瓦が少し、がたつく。
私はがたついた煉瓦を持ち上げてみる。
あっけなく外れる、煉瓦。
あっ、思い出した。
私の記憶の蓋も開く。
この町のイベント、悪霊退治だった。町の人に紛れ込んだ悪霊を探しだして、退治するんだったよな。そうそう、なかなか見つけられなくて、時間が経つごとに、町の人の犠牲がどんどん増えてきて。しかも悪霊が人を殺すごとに強くなると言う、鬼畜なイベントだった。
うん、だんだん思い出してきたぞ。確か、この煉瓦のしたに何か手がかりが……。
私が覗き込むと、確かにそこには手紙とおぼしき紙が。
そっと取り出す。
「あっ……」
時間が経ちすぎていたのか、風化した紙は崩れてバラバラになってしまった。
ふぅー。
軽く息を吐く。大丈夫、手がかりも何となく覚えている。
結局、酒場の地下で、戦闘になった気がする。確かこっちだったよな。私はうろ覚えの記憶だよりに瓦礫の町を歩いていく。
空腹でだいぶ精神的にやられていたのだろう。どこか現実味のない、ゲームの中にまだ居るような、そんな気分に逆行していたとしか思えない行動をとってしまう。
もしくは、何の娯楽も楽しみもない所に2週間もいて、ゲームの名残を見付けて好奇心にかられてしまったのか。
私はそのまま歩き、酒場の跡地を見つける。
すっかり瓦礫で埋もれているが、ここで間違いない。
「顕現せよ、ニブルヘイムレコード」
お馴染みのお片付け魔法、もとい上級魔法で、瓦礫を片付ける。
中に入り、床を探索する。すぐに、カウンターとおぼしき残骸の奥に、地下への穴が現れる。
「そうそう、確か酒場のマスターの子供が悪霊に取り付かれて、取り込まれちゃったって話だったな」
私は何が起きるか深く考えず、瓦礫で長年封じられていた地下への穴へと降りてしまった。