再び回復の泉にて
結論から言おう。
食料探しは全敗でした。
腹へったな……。
もうこの草食っちゃうかな。凍らして、すりおろしたら食えないかな……。鑑定で見る限りは毒はなさげだけど。
あのあと勇んで四方を探索しました。分かったことと言えば、始まりの町と思わしきこの廃墟の町は、大体長径三キロと短径二キロの楕円形をしていた。
その回りは木々が繁っていて、森のようになっていた。森も二時間くらいさ迷ったが、収穫はなし。
いわゆる豊かな森とは言えない、単植生の木々が優勢で、生き物の気配が不自然に少ない森だった。
疲れたからだを引きずり、初心者の舘まで戻る。
帰ってきたー。
知らない土地だと見慣れたものって、それだけで少し落ち着くよね。
自身を鑑定するとSPが減っている。ローブを脱ぐのもめんどくさいが、習慣とは恐ろしいもので。空腹を抱えつつ、脱いだローブもそこそこに、回復の泉に浸かる。
癒されるわ〜。
これで温かければ最高なんだけど。SPももちろん回復していく。
あれ、空腹もなくなっていく?
そう言えばこのゲームに出てくる食料アイテムの効果ってSPの回復だったっけ……?
え、どういうこと?
空腹も回復の泉で回復するの?
飯を食べなくても、回復の泉に浸かってればいいってこと?
このゲームのような世界に迷い混んで一番の混乱に襲われていた。
深く考えれば考えるほど気分が悪くなってくる。
生命の根幹部分がまるで異なってる?
自分が人間以前に、生き物ですらない何かになってしまったような恐怖感。体の芯から別の次元での存在に侵食されてしまっていて。しかもそれに全く今まで違和感を感じられていなかったとか。
ふらふらとした足取りで回復の泉から出る。
胃がからっぽでなければもどしてしまっていたかもしれない。
やばい、なにもする気が起きない。
こちらの世界で目が覚めて、知らず知らずのうちに張っていた緊張の糸が切れてしまった。
思ったよりも反動がでかい。自分で感じてたよりも今の状況にストレスを感じていたようだ。
ローブだけ羽織り、回復の泉の近くの瓦礫にもたれ掛かるように座り込んでしまう。