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初心者の舘

 そうして一週間前の私は新しい世界で一歩を踏み出した訳です。


 かつては石畳だったと思わしき道は見たことのない雑草に覆われ、所どころに散乱する瓦礫に足を取られそうになる。


 靴は、はいてるかって?


 もちろん、はいてますとも。ファンタジックな黒っぽい革のブーツです。

 もしゲームの時のままの装備ならカエル系の魔獣の革の加工品だったような。深く考えると気持ち悪くなりそうなので強制的に思考を停止させる。いい装備ではあるんだけどね。


 さて、パッと見、食べれそうなものはないな。木立はそこそこに群生しているんだけど、果物らしきものはなし。鑑定スキルでも名前なんかはわかっても食べれるかどうかは不明。


 寝床になりそうなとこも、建物の残骸らしきものがあっても壁だけだったり、瓦礫に埋もれてたりしてなかなかこれといったものはなし。

 真っ直ぐ歩いていて、途中明らかに樹木の群生密度が濃くなってきたので何となく右に方向転換する。


 歩くこと10分程度で損傷の少なそうな建物が前方に見えてくる。


 慎重に近づいていく。


 どうやら正面部分だけ奇跡的にほぼ無傷の舘。左右の壁はなくなり、天井も抜け落ちている。

 しかしその無傷の正面の様子がなんだか記憶を刺激するんだよね…。

 あれ、もしかして、ここって初心者の舘か?


 初心者の舘。それはゲーマーには馴染み深い人も多い響きだろう。チュートリアル的な解説をしてくれるNPCがいたり、回復アイテムが手には入る宝箱的な何かが無造作に置かれていたり。はたまたセーブポイントが設置されていたりするあれである。


 ここの初心者の舘は、既に内部は崩れてしまっているから当然チュートリアルをしてくれる人物は見当たらない。宝箱だって落ちていない。そこまで観察して、ふと思い付いて奥の部屋に向かう。


 いやはや歩きにくい。


 当然奥の部分も壁すら崩れて瓦礫に埋まり、部屋とも呼べない状況。

 しかし私には鍛えに鍛えた氷結魔法魔法がある。


 威力を抑えるよう強く意識して呪文を唱える。


「顕現せよ、ニブルヘイムレコード」


 唱えたのは上級の範囲魔法。ゲームではフィールドを一部氷属性にし、冷気で敵モンスターに継続ダメージを与える。発動とともに、初級とは比べ物にならないMPの消費が体感できる。

 と言っても自動MP回復スキルで10数秒で回復する程度。


 発動した冷気が、部屋の外まで地面を凍らせていく。


 まだまだこれから。


 凍らせた地面から氷の柱を起立させていく。部屋を埋めていた瓦礫を全て持ち上げたら後は氷を傾けて、瓦礫を順々に部屋の外へ建物の外へと滑らせて捨てていく。


 起立した氷結を見ると、鏡のようになり、自分と思わしき姿が映り込んでいた。


 うわっ、顔までゲームのキャラかよ。参ったね……。


 しばし呆然としていたがしんしんと染み込む冷気に耐えがたくなり、瓦礫の搬出も終わっていたので魔法を解除する。


 うん、無事に氷も消えた。意識して置けば氷を残すのも出来そうだと感覚的にわかる。

 ここら辺はまんまファンタジーだな。


 氷の消えた地面には予想通り回復の泉があった。

 やっぱりこの部屋の作りに回復の泉の位置、ここは初心者の舘で間違いないか。


 ということは、ここは、始まりの町なのか。


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