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077 探検者達 2

「そういえばこのオオカミ、何か落とした?」


 はぎ取られたオオカミの毛皮に浄化(ピュリフィケーション)を掛けて血や抜け毛を処理したミカエラは、それを畳みながら誰とはなしに聞いた。


 ウルフカットにした赤い髪にやや目尻の吊りあがった赤い瞳のミカエラは、百六十センチ程のスレンダーな身体に肩やひざなど要所要所に金属板の補強が入った赤茶色の革の上下を着けていた。短めの革ジャケット、長い革パンツに革ブーツという出立ちは、現代日本のバイク乗りの様にも見える。


拘束(バインド)を解除した時には気が付かなかったから、何も無かったと思うわよ。この辺のオオカミなんだから元々そんなに期待はできないわね。あっ、サンちゃん。そこは骨に沿って包丁を動かすの」


「え? ええと、こう?」


「そうそう、そんな感じで」


「分かった。……で、ボクも気が付かなかったなあ」


 折り畳みテーブルに向かって包丁を使いながらカリーネとサンドラが答えた。テーブルに置かれたまな板の上にはオオカミの脚が乗せられ、二人はそこから食用になる部分を切り取ってはツボのような陶製の容器に入れていく。


 カリーネは深い緑色の瞳をしており、背中まで伸ばしたゆるく波打つ緑色の髪を首の後ろで一つに束ねている。背はミカエラよりやや高く、膝くらいまでの長さの茶色い革の上着に包まれた胸の膨らみはミカエラよりかなり大きい。


 一方のサンドラは青い瞳で、肩甲骨辺りまで伸ばした青い真っ直ぐな髪をいわゆる姫カットのような形に整えている。背はミカエラよりやや低いが、カリーネの物と似た形の膝上丈の薄茶色の上着に金属製の胸当てを着けており、その中身はカリーネよりさらに豊かに見える。


 二人とも上着の上に革のベルトを締めており、その裾から伸びる足はそれぞれの上着の色に合わせたミカエラと同じような革パンツと革ブーツに覆われていた。


「でも、アイテムボックスを使う動物がいるっていうのも何だか不思議だわね」


「アイテムボックスは人以外も持ってて、同じように神様に教わって使うっていう話になってるんだよね」


 人が死ぬとその人のアイテムボックスの中身がその場に現れる、というのはよく知られていることである。同じ様に、狩りをした際に倒した獲物のそばに何かが現れることがある。そしてほとんどの場合、それはその動物のエサとなるもの――オオカミであればかじりかけの肉や骨など――である。


 故に、動物にもアイテムボックスを持つものがいるらしい、とされている。ただし、どうして動物がアイテムボックスを使えるのかは分からない。神様が教える以外にないだろう、というのが大方の意見である。


 ◇


「さて、後はナザールの里へ戻ってからにしましょう」


 しばらくの後、カリーネがそう宣言してオオカミの解体は終わった。毛皮や肉には保存(プリザベーション)――変質や腐敗を防ぐ魔法――が掛けられてアイテムボックスに仕舞いこまれる。


「おっ、僕の出番かい?」


 シャベルで穴を掘った後、バルトと見張りをしていたトルステンが声を聞いて戻って来た。桶に入れられた残った部分を少しずつ穴に入れては土を掛けていく。


 トルステンは百八十センチはあるだろうという、筋肉質の大柄な男である。あちこちに金属板を貼りこんだ黒っぽい革鎧の上下と相まって、遠目には剣呑な姿に見える。ただし、面長な顔にやや細い茶色の瞳と首の後ろでまとめてくくったしっぽのような茶色の髪のおかげで、顔だけ見ると優男に見えなくもない。


「片付けたら出発だな。魔晶はどうだった?」


 トルステンとは反対側にいたバルトも戻って来た。バルトの出で立ちもトルステンと似たり寄ったりである。短めの金髪に金色の目、百七十五センチほどの身長に鍛えられた筋肉と、いわゆる細マッチョな体格である。もっとも、トルステンの横に立つと一回り小さいような印象を受ける。


「二型の大きさのが二個だったよ」


 ミカエラが、大人の男の親指くらいの大きさの透明な水晶のような筒状の物を取り出して見せる。片方の端の真ん中に小さな出っ張りのあるこれが魔晶である。


 この魔晶はある程度以上の大きさの動物等の体内――内臓のある物なら大抵は心臓付近――に存在しており、何故か何種類かの決まった大きさの物がある。魔力を込めたり使ったりすることのできるこの魔晶が、ある意味では狩りをする一番の目的でもある。


 ◇


「さあ、洞窟まで一歩きだな」


 やがて、片付け――(ウォーター)浄化(ピュリフィケーション)が活躍する――も終わり、五人の(パーティー)は装備を整えると、バルトの掛け声の下、山に向かって歩き始めた。

誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。

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