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新世界のメイド(仮)さんと女神様  作者: あい えうお
第二章 メイド(仮)さんの一日
59/502

059 夕食戦線異状あり 2

2015/04/23 前話のサブタイトルを変更しました。

というか、仮に付けてたサブタイトルを直すのを忘れてアップしてました。

 おそらく、状況を見た時点でタリアの頭には既にいくつかの案があり、その上であえてサニアに判断を委ねたのだろう、とマリコは思った。言ってしまえば後継者教育の一環である。実際のところ、全ての材料が底をついた訳でもなく、日本のレストランのようにメニューの内容がマニュアル的に決められている訳でもない。やりようがいくつもある以上、今日来たばかりのマリコに思いつけることがタリアに思いつけないはずがない。


 ところが、委ねられたサニアの取った方法は、現場担当者のマリコに案を出させるというもの――タリアの言うところの丸投げ――だった。もちろん、ややのんびりしたところのあるサニアの性格故という部分もあるだろう。しかし、マリコには、自分で全てを一から作り上げねばならなかった「初代」の女将であるタリアと、できる人がいるなら任せた方がいい場合もある「二代目」であるサニアとの差であるように思えてならなかった。


(里の状況が変われば、女将さんに求められるものも変わる、ということかな。でも、話の振り方がなんだかタリアさんらしいな)


「何をニヤニヤしてるんだい、あんたは」


 微笑ましい気持ちになったマリコだったが、しっかり顔に出てしまっていた。


「え? いえ、何と言いますか。親子だなあ、と思いまして」


「なっ。いきなり何を言い出すんだい」


 マリコが素で返すと、珍しくタリアがそっぽを向いた。


 ◇


 方針が決まったところで、マリコは後からやってきた二人を紹介された。赤茶色の髪の娘はシーナ、水色の髪の娘はマリーンと名乗った。二人とも、背丈はミランダと同じくらいだが胸の豊かさはジュリアと同じくらいである。ただし、体格はシーナがやや骨太でマリーンはやや華奢に見える。


 はじめまして、と挨拶をしそうになったマリコだったが、改めて見るとこの二人には見覚えがあった。昨日初めて宿屋に入ってきた時にサニアと一緒にカウンターにいたのがシーナで、アリア達と昼食を摂った時に給仕をしていたのがマリーンだったのである。この二人に、エリー、ジュリアと今日は風邪で休んでいるフローラという娘を加えた五人がほぼフルタイムで宿屋に勤めており、他に時間単位で仕事に来る者が何人かいるとのことだった。


 三人が挨拶を交わしていると、後ろ側の扉が開く音が聞こえた。振り返るとミランダが入ってくるところだった。


「ああ、ミランダさん。あの、大丈夫ですか?」


「マリコ殿。ああ、問題ない」


 マリコの問いにミランダはやや目を泳がせながら答えた。微妙に頬が赤くなっている。


「大丈夫って、ミランダさん、どうかしたの?」


「何だか、お顔も赤いようですけれど」


「えっ? い、いや、どうもしないぞ」


 不思議そうな顔で聞いてくるシーナとマリーンに、ミランダは顔に手を当てながらあわてて答える。その動きはむしろ何かあったと言っているように二人には見えた。


「あー、ええと、ミランダさんは先ほどの空き時間に、私とちょっと剣の稽古をしたんです。多分、そのせいだと思うのですが」


「え? マリコさん、もうミランダさんに勝負を挑まれたの?」


「まあ。それはマリコさんの方が大変だったのではないですか?」


 思わず口を挟んだマリコに二人から同情的な声が上がる。すると今度はミランダが声を上げる。


「何が大変なものか。マリコ殿は私に勝ったのだぞ」


「ええっ!?」


「そうなのですか?」


「ああ。手も足も出なかった。完敗だったとしか言い様がない」


「ほええ、ミランダさんが完敗って」


「まあ」


 今度は二人の畏怖の目がマリコに向いた。居心地の悪くなったマリコは手を前に出して振りながら言い訳を口にする。


「いえ、たまたまですよ、たまたま。運が良かっただけですから」


「マリコ殿。それはあまりに謙遜が過ぎるというものだ。たまたまであんな技を何度も出されてはたまるものか」


「ええと……」


「お前達、剣術の話は今はいいから。さ、準備を始めるよ!」


 ちょっとした騒ぎになりかかったところへ様子を見ていたタリアから声が掛かって、皆はとりあえず収まった。


(これ、後で絶対もう一騒ぎ起きるよな)


 ◇


 遅れてきたミランダへの説明と簡単な打ち合わせの後、皆はそれぞれの作業へと散って行った。ジュリアとマリーンは待っている人達への説明と客席の準備、タリアとシーナはごはんや野菜、スープの準備、サニアとマリコ、ミランダは揚げ物と焼き物の準備である。アリアはハザールを連れて、奥へと戻って行った。


 昼間の持ち場へと戻ってきたマリコ達のやることは、まずは火起こしである。とは言え、昼の炭火がまだ残っているし、ごはんを炊いている火もあるので、それを分けて炭や薪を足し、火を大きくしていくだけである。その作業をミランダに任せたマリコとサニアは、昼に準備してしまっておいた材料を冷蔵庫から引っ張り出して調理台に並べていく。


 ある程度揚げ物を進めたら、途中から焼き鳥と同時進行になる。マリコは腕まくりをし直して気合を入れる。


(さて、戦闘開始というところかな)

誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。

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