055 猫耳メイドさんと 10 ★
「うう、まだ何かムズムズする」
起き上がったミランダは耳をパタパタと立てたり伏せたりをくりかえし、自分で引っ張ったり、付け根を髪ごとガシガシ掻いたりした後、隣に座ったマリコを振り返った。その顔には決意の色が浮かんでいる。
「マリコ殿、もう一度触ってみてもらえまいか」
「え、大丈夫なんですか?」
「ああ、ちょっと確かめてみたいことがある」
ミランダはマリコの手を握って持ち上げながらそう言った。
「分かりました。では……」
マリコはミランダの言葉に従って、彼女の耳をゆっくりと撫でた。
「んんっ!」
「わっ」
ミランダが声を上げて身体をびくりとさせたので、マリコはあわてて手を離した。
「本当に大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。触られるのがこんなに気も……いや、自分で触るのと違う感じがするとは思ってなかったのでな。ちょっとびっくりしただけだ」
少し顔を赤くしたミランダは、宙に浮いたままのマリコの手を見つめながらそう答えた。
「そ、そうですか」
「ああ」
「……」
「では、次はしっぽであったな」
二人の間に微妙な沈黙が落ちたが、それはすぐにミランダの声に破られた。彼女は靴を脱いでベッドの上に足を上げながらそう言った。
「しっぽはまた今度、ということにした方が良くはありませんか?」
「いや、約束は約束だし、先ほどので大体の感じは分かった。気構えができておればどうということはあるまい。さあ、来られよマリコ殿」
ミランダは膝をついてベッドの奥側へ移動すると、うつ伏せに寝転がってそこにあった枕をぎゅっと抱え込んだ。スカートの裾から覗くしっぽの先がヒョコヒョコと動いている。念願の赤トラ猫しっぽである。それを拒むことはマリコにはできそうになかった。マリコもサンダルを脱いでベッドに上がると、ミランダの方を向いて座り直した。
「いいんですね。スカートを捲らせていただきますよ」
「ああ、同性に見られるくらいで恥ずかしがる程の子供ではないからな。そちらは大丈夫だ」
「では失礼して」
マリコはミランダの深緑のスカートを捲り上げた。スカートの下には短めのパニエが入っており、さらに下に着た丈の短いシュミーズ越しにオレンジ色の下着が透けて見えていた。しっぽは下着の上、腰の後ろから伸びている。
「あれ?」
「え? 何か変なところがあるのか?」
マリコが思わず上げた疑問の声にミランダがあせったように聞き返した。
「いえいえ、そうではなくて。しっぽのある人の下着って、しっぽを通す穴があるのかと思ってました」
ミランダの下着はいわゆるローライズな形で、上端は両脇からしっぽのある中央に向けてゆるいV字を描いていた。
「ああ。小さい子供向けにはそういうものもある。ただ、それだと根元辺りの毛がこすれて擦り切れてしまうのと、あとは、あー、お手洗いで困るからな、大抵はこんな形だと思う」
「ああ、なるほど。穴を通す度にいちいち逆撫ですることになるんですね」
「そういうことだ」
マリコは納得してミランダの身体に視線を戻した。
(改めて見るとミランダさんの脚、細くて長いなあ)
スレンダーに見えていたミランダの脚は、印象どおりのものだった。腰の幅もやや狭く、ウエストも折れそうなほどに細い。ただし、きちんと筋肉が付いているのでひ弱そうには見えない。マリコは先ほどの手合わせの時のミランダの動きを思い出した。
(確かに素早かったよな。「マリコ」の能力が無かったらきっと勝つどころか、目が追いつきもしなかっただろうな)
「マリコ殿? どうなされた」
ミランダの声が考え込んでいたマリコの意識を呼び戻した。
「すみません。ちょっとミランダさんの脚線美に見惚れていました」
「なっ!? 何を申されるか。マリコ殿とて……見えぬな」
マリコの長いスカートは足をすっかり覆い隠している。ミランダは不満そうな声を上げた。
「いえ、そんなに大したものではありませんので……」
「まあ、今は仕方ない。後でじっくり拝見させてもらうことにしよう」
「えっ!? 後でじっくりって……え?」
「え、ああいや、べ、別に変な意味ではないぞ。どうせ夜には風呂に入ることになるのだ。我々住み込みの者は大抵最後に一緒に入ることになるゆえ、その折には見られるだろうというだけの話だ」
「ああ、お風呂ですか」
マリコはさっき見た大きな建物を思い出した。中までは見なかったが数人は入れる大きさだと聞いたはずである。きっとゆったり浸かれるだろう、と考えたところでマリコは気付いた。
(って、お風呂!? ミランダさんと一緒に!?)
しっぽまで行き着きませんでした……orz
誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。




