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新世界のメイド(仮)さんと女神様  作者: あい えうお
第六章 メイド(仮)さんの奔走
455/502

449 戻ったら戻ったで 7

 タリアを先頭に、里の住人の一団がゾロゾロと宿に向かって移動する。ダニーの店を出たところで質問責めにならなかったのは、先制してタリアの一喝があったからだった。


――龍の国から帰ってきたマリコの話もあるし、宿に戻ってからまとめてやるよ!


 マリコの方は探検者(エクスプローラー)が帰還した時と同じ扱いである。各々にも係わる事なので、基本的には情報を共有する。今回は特に初めて龍の国に行ってきたという話なので、聞きたくない者などいないに等しい。


 再び人型を取ってメイド服姿に戻り、一緒に歩いているシウンには多くの視線が向けられていた。だが、シウンの正体についての疑問も含まれてはいるものの、その大半は好意的だった。シウンが抱えて戻ったエリーの怪我はかなりの者が目にしており、そのエリーが今は何事も無かったかのように列に加わっているからである。


「マリコ殿。一つお願いがあるのだが」


 並んで歩いていたシウンから話し掛けられ、マリコはそちらに目を向ける。


「何でしょう?」


「実は、頂いたこの服なのだが……」


 シウンのお願いはメイド服の改造依頼だった。今回のような急の形態変更(モードチェンジ)の際に、脱がなくても済むようにならないか、というものである。メイド服を破損させる覚悟で形態変更(モードチェンジ)した話はマリコも聞いた。それでも破れず、逆に翼を押さえ込まれてしまったことで性能に対する信頼度が増したというか、惚れ込んでしまったらしい。


「そうですねえ……」


 同好の士――メイドさん好き――が増えるのは望むところだが、これはちょっと違うような気がするなと、内心苦笑しながらもマリコは考える。下着については、一緒に話を聞いたミランダから、自分のようにしっぽに対応したデザインの物を着けていればいいのではと知恵をもらったが、服の方はそう簡単にはいかない。翼対応の服など、今のところまだ存在しないのだ。


 安直に考えるなら、翼が出てくる部分を切り抜いて窓を作ってしまえばいいのだろうが、それだと人型の時に背中が丸見えになってしまう。今はシウンだけだが、こちらにやってくる龍族の女性は先々増えていくだろうし、改めて考えてみればこれは男性にも起きる問題なのだとマリコは気が付いた。


(その場しのぎで済ませていい話じゃありませんね、これ)


 服飾の専門家にも聞いてみるべきだろう。とりあえずマリコの頭に浮かぶのは服屋のケーラの顔だった。今後の問題点の一つとして挙げるなら、神格研究会の協力も得られそうだ。そうした事も踏まえて、マリコはシウンに頷いた。


「シウンさんも手伝ってくださいね」


「それはもちろん」


 形態変更(モードチェンジ)をする人の協力が無いと、使える物かどうか確かめることができないのである。


「お帰りなさい。準備はできてます」


 そんな話をしている間に一行は宿に着いた。大した距離も無いのですぐである。宿を囲む壁に設けられた門をくぐった所でサニアがエイブラムたちと共に待っていた。見れば宿の建物の前に、イスが沢山並べられている。どうやらこのまま外で話をするつもりらしい。


(まあ、全員が食堂に入るの、無理ですよね)


 マリコは後ろを振り返って思った。宿の門から入ってくる人々の数はいつの間にかぐんと増えている。シウンの飛来騒ぎは里のど真ん中で起きたので、話が流れるのも早かったのだろう。住人に工事関係者や旅行者と、今里に居る人のほとんど全部が集まってきているように見えた。


「席が足りないだろうけど、ありったけ出てるはずだから勘弁しとくれ!」


 そんな言葉と共に、タリアができるだけ席に着くよう促す。マリコとシウンは報告者と渦中の人物ということで最前列に呼ばれた。そこには記録用らしきテーブルが置かれた席がいくつかあり、エイブラムら研究会のメンバーやマリコが会った覚えのない数人が座っていて、一人は猫耳が生えている。ブランディーヌなどはもうテーブルにノートを広げていて、何やら書き付けていた。


「さて。皆、聞きたい事もいろいろあるだろうが、まずは龍の国から戻ったマリコの話からさね」


 最前列のさらに前に一脚だけ置かれたテーブルに着いたタリアがマリコを呼ぶ。皆に対して横向きに座っているタリアに向かい合う形でマリコは席に着いた。するとタリアが目の前のテーブルの一つを指してマリコに言う。


「そこの席の四人は見た事がないだろうから、先に言っておくがね。中央四国から来た方々さね。さすがにどこも国長(くにおさ)が来るのは控えてくれたらしくてね。必要そうなら後でちゃんと紹介するよ」


 先に釘を刺されたマリコと四人はとりあえず会釈を交わす。見たところ、四人は共に三、四十台で三人が男性、その内の一人が猫耳だった。全員が割りとパリッとした服装なのは、やはり各国の代表として来ているからだろう。


 じゃあ始めとくれと促されたマリコは口を開く。


「まずは、第一の目的だった二度童(にどわらべ)の治療については、当面の全該当者の治療を終えました。今は全員が復帰または休養なさっています」


 そこまで言ったところで皆から「おおおお」と歓声と拍手が上がる。それが収まるのを待ってマリコは続きを話し始めた。向こうの里長がツルギとなったこと。龍族は原則的に転移門を使うつもりがないが、ツルギの一族は例外となったことなどなど。


 ドラゴンの門からいきなり行けるのは中央四国とナザールの門だけだが、消費魔力の関係で多くの人はナザールの門としか行き来できそうにないという話に人々は多いに沸いた。しかし、向こうで飲まれている酒だと言ってマリコがテキーラの樽を取り出して見せた時にはそれ以上に沸いたのだった。

誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。

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[一言] 飲兵衛達はきっと 龍の怖さ<<<<<酒 だな( ˘ω˘ )
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