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新世界のメイド(仮)さんと女神様  作者: あい えうお
第五章 メイド(仮)さんの探検
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357 待つ日々 4

「ああ、まだ日暮れまでには間がある故な」


 ミランダはそう言いながら窓へと目を向け、それが閉まっているのを見てあれっという顔をする。変神シーンを見られないように閉めた時のままなのである。マリコは素知らぬ顔で窓を開けて外を見た。


 四角い中庭はもう半分ほど日陰になっていて、陽の当たる場所には下着類が干されているのが見える。もっとも、ロの字型をした宿の建物に囲まれているので中庭は陽が陰るのが早い。太陽は大分傾いてきているが、確かにまだ夕方というほどではなかった。


「ほら、十分であろう……あっ」


 マリコの隣に立って同じ様に中庭を見渡していたミランダが途中でピタリと動きを止めた。何だろうとマリコはミランダの視線の先を追う。わずかに引きつった顔が向けられていたのは物干しのようだった。


「エリーめ、やめろと言うのにまた我らの物を並べて干したな」


 紐状の物や三角の物、カップが二つ連なった物がいくつもぶら下がっているので、パンツやブラが干してあるなというのはマリコにも分かるのだが、どれが誰の物かまでは気にしていなかった。改めて見てみると、色合いや形から自分のだと思えるブラの隣にカップが一回り小さな物が干されている。あれがミランダの物なのだろう。


 何となく負けたような気分になるからと、並べて干されるのをミランダが嫌がっているのはマリコも知っていた。しかし、普段中庭に出入りするのは宿で働いている者ばかりなので、そこまで気にしなくてもとも思っている。恐らくエリーも似たようなものなのだろう。だが、今それを口にすると薮蛇になるのは明らかである。


「……ええと、それでも流石に今から準備して出掛けるには遅いんじゃないですか?」


 マリコはミランダのセリフをスルーすることにして、やや強引に話題を元に戻した。ミランダは一瞬眉をぴくりと動かしたもののふむと頷いて、話を蒸し返すことはしなかった。


 エリーたちのうちの誰かと行くにしても着替える必要はあり、女の子の着替えにはそれなりに時間が掛かる。それにマリコ自身は空き時間だが他の皆はそれぞれ仕事をしているのだ。いくらか人手が増えているといってもいきなり引き抜くわけにはいかないだろう。


「誰かを連れて行こうとするならそうであろうな」


「え?」


「だが、我ら二人だけで赴くなら別だ。マリコ殿は出ようと思えば今すぐにでも出られよう? 実はもう、その方向でサニア殿の許可は取り付けてきてある」


 腰に手を当てたミランダは、どうだと言わんばかりに胸を張って鼻を鳴らした。二人とも狩りにはメイド服のまま出掛けるので特に着替える必要も無い。武器の類もアイテムボックスに入っているので、確かにこの足で出発しても全く困らないのだ。


「いずれにせよ狩りの必要はある。このままであれば、明日にでも食堂の編成を見直して誰かを向かわせることになるだろう。今手の空いている我らで済ませられれば手間が省けるという話だ」


 ミランダは畳み掛けるように続けた。そう言われてしまえばマリコも納得するしかない。既に決まっているシフトをいじるよりは確かに手っ取り早い。その辺りを取り仕切っているサニアの手助けにもなるなと、マリコは頷いた。


 ◇


「捕まえられるものなら、捕まえてみられよ!」


「待って下さい! なんだって走るんですか!」


 田植えを待つばかりの、畦道に四角く区切られた水面(みなも)に、駆け抜ける二人のメイド服姿が映り込む。マリコとミランダは里の南側の門に向かっていた。途中、そこここで作業をしている人たちが何事かと顔を上げるが、走っているのが誰なのかが分かるとその顔には笑み、あるいは納得の表情が浮かぶ。


 やがて里の内と外とを隔てる門に近付いた。門扉はいつもの通り閉ざされている。しかし、ミランダは速度を落とすことなく、そのまま門へと真っ直ぐに突っ込んでいく。


「ちょ! どうするつもりなんで……」


「とうっ!」


「あっ!」


 マリコが止める間も無く、ミランダは掛け声と共に地を蹴って飛び上がった。門柱を支えている控えに足を掛けてさらにジャンプ。あっと言う間に二メートルほどの高さがある壁の上に立っていた。前よりさらに身軽さに磨きが掛かっているように見える。


 この辺りの壁は宿を囲む壁のように上に通路があるわけではないが、それでも人が立てるだけの厚さは十分ある。腕を組んでそこに仁王立ちしたミランダは、壁際に駆け寄って止まったマリコを見下ろした。スカートの下から伸びたしっぽがゆらゆらとうねっている。


「どうだ、マリコ殿。これなら門を開く手間が省けるというもの。さ、マリコ殿も来られよ」


 得意気にそう言うミランダを仰いだマリコは、その光景にドキリとする。一瞬固まった後、そっと視線を泳がせた。


「どうなされた? この程度、マリコ殿なら訳も無いはずだ」


「いや、ミランダさん。その位置だとですね、中が……」


「何!?」


 ミランダの着ているメイド服は、マリコから贈られたショート丈の物である。膝上までしかないスカートの裾は中のパニエによって広げられており、下からの視線に対してはほぼ無防備と言っていい。


「で、では私は先に下りている。マリコ殿も急がれよ」


 スカートの前を押えたミランダは取って付けたようにそう言うと、壁の向こう側に消えた。壁の外には空堀があるはずだが、ミランダなら難なく飛び越えただろう。


 ミランダとはお互い、下着姿どころかその中身さえ、風呂場で毎日のように目にしている。それが何故、こういう場合だと恥ずかしく感じるのか。見てはいけないもののように思えるのか。


(これがチラリズムの威力ということですか)


 マリコはポリポリと頭を掻いた後、今日はいつも以上にテンションの高い気がするミランダを追うべく地面を蹴った。

誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。

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