表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新世界のメイド(仮)さんと女神様  作者: あい えうお
第五章 メイド(仮)さんの探検
330/502

326 西二号洞窟 10

「このくらいでよろしいでしょうか?」


「ええと……。うん、こんな感じ」


 池から手桶で汲んだものを樽へトポトポと移しながら発せられたイゴールの問いにミカエラが答えていた。それぞれ短パンとビキニ姿で一見水遊びでもしているようだが、汲んでいるのはスライムの粘液である。


 一騒ぎあったものの、あの後スライム狩りは続けられ、一旦は落ち込みかけたマリコも気を取り直してもう一度池に入った。


――いきなり全部溶けて無くなるわけじゃないから


 というカリーネたちの言葉に励まされたのと、そのまま引っ込んだのでは何かに負けたような気分になりそうだったからである。実際、水流(ストリーム)で洗い流された後で確かめた時にはツルツルになったりはしていなかった。


 そちらの詳しい話はまた後で、ということになっている。改めて足を入れた池の底は、十分に気を付けていれば滑って転ぶこともなく、マリコたちは無事に追い込み役を全うすることができた。


「我々だと持てる樽の数が……」


「今の池の大きさを考えたら……」


 イゴールとミカエラの話は持ち帰れる量のことになっている。それを聞きながら、マリコはふとバルトに目を向けた。さっきは少々過剰に反応してしまったような気もしないではない。そのバルトはというとマリコに威嚇されたからか近くにはおらず、アドレーが粘液を汲むのを見守りながらミランダに何か話をしていた。


(……かと言って、説明するわけにもいきませんし)


 恥ずかしさでいたたまれなかった、などとどうして言えようか。


 ◇


「それで、例の件なんだけど……」


 一同を見回した後、そうカリーネが口火を切った。今、女性陣五人はミランダのテントの中で車座になっている。


 スライムを一匹倒して粘液などを回収した後、一行は洞窟を出た。岩の魔物の後始末という当初の目的は果たされているので後は里に戻るだけである。来た道を戻り、昨日と同じ場所で再び野営ということになった。


 到着したのは昨日より少し早い時間だったが、先に進んでもどの道明るいうちに帰り着くのは無理である。それなら途中で新たに野営地を切り拓くより、風呂の小屋も残っているここの方が楽だ。明日の朝出発すれば昼過ぎには里に着ける距離でもあり、特に反対する者もいなかった。


 テントを立て、湯船や作業台などを引っ張り出してある程度準備したところで、見張りと薪集めを男性陣に任せたカリーネは四人を引き連れてここに籠ったのである。人数が足りているからか話の内容を察したのかは分からないが、男たちからとがめられることもなかった。


 こうしてカリーネの話に時折ミカエラとサンドラが補足する形の、マリコとミランダに向けた講義が始まった。


「確かにスライムの粘液は、かなりいろいろな物を溶かしてしまうのよ。でもね、完全に溶かすにはそれなりに時間が掛かるの」


 これはスライムの粘液による溶解が「消化」だからだろうとカリーネは言う。強酸に軽金属を放り込んだ時のように、シュワシュワと音と泡を立てて一気に溶けるようなことはないのだそうだ。それでも刃物などは確実に切れ味が落ちるし、そのままにしておくと完全に溶けてしまう。


「それは髪や爪も同じでね、浸かったままだと髪なんかの毛は全部溶かされてしまうし、爪は伸びてるところが溶けて、根元の方は表面が溶けて薄くなるの」


 カリーネたちはその性質を利用して、スライム狩りの後はそれを無駄毛処理に使っているのだと言う。ただし、それをするにはある程度まとまった量の粘液が必要となる。しかし、その量の粘液を長期間入れておける容器が無く、今のところ狩りの後しばらくの間しかできないのだそうだ。


「じ、じゃあ、浸かったままにしなければ……」


「ええ、すぐに水で洗い流せば完全に溶かされることはそうはないわ。でもね」


「でも?」


「髪みたいに細いものだと、どうしたってそれなりのダメージは受けて傷むことにはなるの。だから、ずっと無事なままかどうかは私にも分からないのよ」


「う……」


 全く安心できる要素のない話に、マリコは短く(うめ)いて黙り込んだ。


「それでも今夜お風呂に入ってみれば、大体は分かると思うわ」


「それ、どうしようもなくなってたらどうするんですか」


 おかしな質問になっているとは思ったが、マリコとしては聞かずにはいられなかった。今度は聞かれた方のカリーネが沈黙する。しばらく何事か考えた後、顔を上げた。


「これを使ってちょうだい。塗りつけて十分も待てばきれいに溶けるわ」


 そう言って取り出したのは手桶だった。もちろん中にはわずかに青味がかった粘りのある液体が入っている。マリコは一瞬言葉を失った。


「私がしっかり注意してなかったのが原因なんだから、その時は私も一緒よ。ミランダ、どうなったか教えてね」


「私がか!?」


「ダメならお風呂の順番を代わってもらえる?」


「い、いや、ダメとは言わぬが……」


「ならお願いね」


 マリコが絶句している間にとんでもないことが決まってしまったようである。


 ◇


 翌朝、一行はナザールの里へ向けての帰途についた。

結末は皆さんのご想像にお任せします(汗)。


誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=289034638&s

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ