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新世界のメイド(仮)さんと女神様  作者: あい えうお
第二章 メイド(仮)さんの一日
33/502

033 寝起き 6

「真理子……?」


 マリコがつぶやくと、鏡の中の顔も同じように口を動かした。鏡を持っていない方の手を顔に当ててみると、鏡像も当然顔に手を当てる。


「これ、私の顔なのか……」


 形を確かめるように自身の顔を撫でながら、マリコは改めて鏡を覗き込んだ。


 マリコはゲームを始めた時、真理子をモデルに「マリコ」を作った。ゲームの中で真理子を再現しようとしたと言った方がいいのかもしれない。


 キャラクター作成時の顔の設定は、目や口といったパーツごとに十数種類の中から選ぶ方式だった。ゆえにマリコは、なるべく真理子のものに似た形のパーツを選んだ。


 ただし、キャラクターの顔の基本的な造作は、アニメか漫画っぽくデフォルメされたものである。実際にできあがった「マリコ」の顔は、真理子に似ていないこともない、というレベルに留まっていた。


 しかし、鏡に映ったマリコの顔は髪や瞳の色以外、ずっと若かった頃の真理子によく似ていた。切れ長の目、優美なカーブを描く細めの眉、通った鼻筋、ほんの少し口角が上がった口元。むしろ全体としては、より整った顔立ちになっているようにも見える。


(何でだ? 若いのはまだ分かる。「マリコ」はキャラ設定で十九歳にしたはずだから、今の私も多分十九歳になってるんだろう。でも、ゲームの「マリコ」の顔がもとなら、いくらリアルに変換したからって、こんなに真理子に似た顔にはならんだろう。もしかして、本当に真理子なのか? いや、それならこの身体ももっと真理子に似ていそうだけど、そんなことにはなってないな)


 先ほど確かめてみたばかりのマリコの身体の柔軟性や、自分で見た限りの全体的なプロポーションは、真理子どころか一般的な日本人のものではない。プロポーションについては、マリコに限らず昨日から会った人達もそうである。皆、基本的に頭身が高く手足も長い。


(要するに、私自身も含めて皆スタイルがいいんだ。西洋人っぽいというか、カッコよくデザインされたアニメキャラやゲームキャラを実体化した感じというか。一体なんで……って、いや、今これ以上考えても無駄だな。推論に推論を重ねるだけになる。神様が、とか言い出したら何でもありな気がするし、それこそ神様(ほんにん)にでも聞かないとな)


 結論の出ない考えを打ち切ったマリコは、椅子に座って鏡を机の上の籠に立て掛けた。一晩寝ていたことでさすがに少々乱れていた髪を、鏡を見ながら櫛とブラシで梳かしていく。


(でもこれじゃあ、尚のこと死んだりしたくないな)


 マリコはそう思い、ブラシを置いてホワイトブリムを手に取った。フリルが曲がっていないことを確認して頭に着ける。本来ならリボンなどで結ぶのだろうが、マリコのホワイトブリムはカチューシャ型で、頭にはめるだけの簡単仕様である。それでもカチューシャ部分は金属製で、申し訳程度には装備としての防御力を持っていた。


 最後に、ベッドの上に残っていた赤いリボンを取って、メイド服の襟の下に通して前で蝶結びにする。出来を確かめようと鏡をのぞき込んだ時、マリコは首のチョーカーの事を思い出した。首を少し反らし、襟に指を掛けて少し引き下げてみると、先ほど触って確かめたとおりの位置にあるのが見えた。


(ああ、やっぱりハーウェイ様のと同じ形だったな。でも色が違うな。なんでだろう)


 巨乳女神様のチョーカーは白い帯にやたらとキラキラ光る黄色っぽい石のようだったが、マリコのそれは黒い帯に白い石が付いていた。肌の白さにチョーカーの黒が映えている。


(まあ、これも後回しだな)


 マリコは襟から手を離してリボンの形を整えた。椅子から立ち上がって、できあがりを一通りチェックする。ホワイトブリムもリボンも背中の蝶結びも曲がっておらず、肩のフリルもピンと立っている。


(よし。メイドさんはやっぱりこう、ピシッとしてないといかんよな)


 マリコのメイドさん好きというか、メイドさんに対する思い入れ――もしくは思い込み――は、対象が自分自身であっても変わらないようだった。


 身支度が整ったところで、マリコは残された物に気が付いた。ポットや食器、今脱いだ浴衣などである。


(これ、厨房なり洗濯なりに持っていった方がいいよな。お盆もないし、どうやって持っていこう。……あ、そうか。アイテムボックスに入れればいいのか)


 マリコはアイテムボックスを開いた。中には昨日拾った石だけが入っている。


(これもどこかで出しとかないとな)


 とはいえ、今ここで放り出すわけにもいかない。石はそのままに、持って行く物を次々としまい込んだ。ポットと桶を入れる時、中でこぼれないか少し考えたが、サニアが直接出していたのを思い出して、とりあえず入れてみることにした。身体を傾けてみても、揺れたりこぼれたりする感じはしなかった。


(ああ、これは確かに便利だわ。これがあったら、お盆とかカバンとか要らない感じだもんな)


 マリコは「ないと無茶苦茶不便」と言ったカミルの言葉を実感した。櫛や鏡を入れた籠も含めて全部しまい込んだ後、マリコは廊下に出た。サニアの言ったとおり、左右に伸びる廊下に沿って窓や扉が並んでいる。右に行けば突き当たりは昨日行ったタリアの執務室で、左に行って突き当たりを左に曲がれば厨房に続いているはずである。


 部屋の扉に一応鍵を掛け、鍵もアイテムボックスにしまうと、マリコは厨房に向かって歩き出した。

やっと部屋から出ました。

誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。

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