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新世界のメイド(仮)さんと女神様  作者: あい えうお
第五章 メイド(仮)さんの探検
326/502

322 西二号洞窟 6

 とりあえず広間に他の魔物などがいないことを確認した一行は二手に分かれた。洞窟にさらに奥がないか調べる班と、岩の魔物の後処理をする班である。バルト組の経験を参考にするため、(パーティー)で分けるのではなく混成班を二つとした。ミランダは調査、マリコは処理の方に入っている。


 魔晶を回収するためにバルトにやり方を聞きながら核となる大岩を割ると、以前マリコが倒したボスオオカミの時より多くの一型――単一乾電池サイズ――の魔晶が出てきた。二十個以上はあるだろうか。


「随分たくさん出てくるんですね」


「ああ、外にいる野生の動物に比べると洞窟に現れる魔物の方が出てくる魔晶は多いんだ。もちろん、身体の大きさや強さにもよるんだけど」


 マリコが驚いているとバルトが答えてくれた。それがどうしてかという話になると、はっきりはしていないが保有する魔力量に関係しているのではないかと言われているそうだ。魔物という言い方がそもそも、魔力が主体となってできている「魔力生物」の略である。それなら分からなくもないなとマリコは思った。


「みんなー、ちょっと来てー」


 魔晶を回収したところで、奥の方からカリーネの声が響いた。調査組は壁を端から順に調べていたのだ。皆がわらわらとカリーネの方へ集まる。一応作業の終わった処理組もそちらへ向かう。


「ね、ここなんだけど」


 カリーネが指したのはカーテンの襞のようになった鍾乳石の壁面の一角だった。襞の奥に当たる部分に床の少し上から二メートルくらいの高さまで続く縦に細長い隙間がある。幅十センチほどのその隙間の向こうは暗くて見通せない。


「まだ奥があるのか。照らしてみよう」


 バルトがそう言って背中の剣を抜き、その先端に灯り(ライト)を点した。それを隙間の中へと差し入れる。そのバルトとアドレーが顔を突き出してそちらをのぞき込んだ。


「結構広いようですね」


「ああ、左右はよく見えないけど、奥の壁まででも三、四メートルはありそうだな」


 二人はそう言い合うと、剣をその場に置いて下がった。残った面々が代わりばんこに隙間の奥をのぞいていく。やがて順番が来て、マリコも中を見た。隙間の幅が狭いせいでほぼ正面しか見えないが、数メートル先にやはり鍾乳石の壁が照らし出されているのが見える。それは左右共視界の端まで続いており、その先にも空間があることを予想させた。


「やっぱりこっちも続きがあるのか」


 調べてはいないものの、東一号洞窟も岩の魔物がいた場所の奥にまだ洞窟が続いていることは分かっている。なら西二号(ここ)もそうなのではないかと思っていたのだそうだ。バルトはそう言った後、アドレーに目を向けた。


「それで、どうする?」


「どうすると言いますと?」


「今ならこの先へも進めないことはない」


 バルトはトルステンを指差しながらアドレーの問いに答えた。土系統の魔法を使えば、隙間を広げられると言っているのだ。しかし、アドレーは首を横に振った。


「やめておきます。もし岩の魔物(さっきの)より強いのがいたら、うちではどうしようもなくなります」


 岩の魔物でさえ、アドレーたちだけで勝てるかどうかというところだったのである。もし、さらに強力な魔物がこの広場まで出入りするようになってしまったら、岩の魔物を狩りにくることさえ困難になってしまう。


「ああ、それはそうだな」


 探検者(エクスプローラー)の役割は無謀な挑戦をすることではない。現状で問題ないなら、そこで無理をすることもないだろう。バルトもあっさり頷いて、ここから先は当面保留ということになった。それでも情報としては十分に価値があるのだ。


 アドレーたちにとっては、今日は倒したもののいずれ再発生するのがほぼ確実な岩の魔物をもっと楽に倒せるようになる方が急務である。今回のような増員体制は毎回望めるものではない。


 仮に次回、今の状態の五人だけで来たとする。近接戦闘を挑む場合、最終的には倒せるだろうが彼らも全員無傷とはいかないだろう。穴の向こう側から削って倒そうとするなら、大量の矢の準備と長時間戦い続ける覚悟が必要になる。それらを避けようとするなら、道は自ずと限られてくる。


「結局、精進するしかないということですな。マリコ様、今後ともご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い致します」


「「「「よろしくお願い致します!」」」」


「ええと、はい」


 アドレーたちに頭を下げられたものの、マリコとしては頷くしかない。ご指導ご鞭撻と言われても、朝練など機会がある時に教えるという状況が今と特に変わるわけではないのだ。


 ◇


 岩の魔物の始末をつけるという意味では、一行の目的は既に達せられたといっていいだろう。次回以降のためにするべきことも分かっている。後は戻ってタリアに伝えればいいだけである。


 となれば、ここで初めて手を広げる余裕が出てくる。次なる獲物、スライムがアドレー組の新たな資金源となるかどうかを試すのである。


「さあ、前の広場まで戻るわよ!」


 不思議と張り切っているカリーネを先頭に一行はまず、広間の入口である穴を順番にくぐった。

誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。

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