309 探検隊、西へ 3
ますます細くなった脇道を一行が進んで行く。山側へ登っていくため、段々と傾斜も付き始めていた。今はまだ地面も土で普通の山道といったところだが、アドレーたちによるともう少し進むと一旦岩ばかりの道になるそうだ。さらに進むとまた土の地面に戻り、そこにある少し拓けたところが今夜の宿泊予定地だという。
「ここからは少し隊列を入れ替えた方がいいんじゃないか?」
しばらく緩い坂道を登り、岩場に差し掛かったところでバルトが言った。里を出てからここまで、一行の先頭はアドレーとバルトが務めていた。トルステンとアドレー組の残り四人がそれに続き、その後ろにマリコを含めた女性陣五人がピクニックよろしくついて来たのである。
これまではそれで特に問題なかったのだが、岩場になったところから道幅は少し広がったものの傾斜が急になっており、山登りというより最早石段登り、岩登りの様相を呈している。道案内の任があるので先頭の二人はそのままだが、残る男性陣と女性陣が入れ替わった方がいいのではないか、と言うのがバルトの提案だった。
「もし誰かが足を滑らせたら、後ろにいる奴が受け止めないといけないだろう? 最後尾にトルステンたちがいた方が安心じゃないか?」
「却下」
「ボクもミカちゃんに同じ」
どちらかというとマリコとミランダに向けて放たれたバルトの意見は、ミカエラとサンドラによって即座に否定される。
「何でだ。俺たちだけの時はそうしてただろう。大体、トルが落ちてきたら受け止められないって言ってたのはお前たちじゃ……」
「そうだけど!」
言い募るバルトをミカエラが手を振って遮った。バルトが黙ったのを見てさらに続ける。
「バルトとトーさんはもう、いつもの事だから今さら気にしないけど! イゴールさんたちが後ろに来るんだよ?」
そう言いながら、メイド服の裾をちょんと摘んで見せた。絶対領域がわずかにその幅を広げる。すぐに視線をそらしたものの、一瞬それに目を奪われてしまったアドレーを除く猫耳四人組。ポーカーフェイスを貫くには彼らは若過ぎたのである。
「あ! あー、そうか。すまん」
さすがに何が起こるか気付いたバルトは提案を取り下げ、隊列は元のままということになった。二列で進めるだけの道幅があるため、実際の殿はマリコとカリーネである。例えトルステンが転がり落ちて来ても、マリコの筋力であれば受け止められるだろう。その点については間違いではない。一行は再び歩き始めた。
(しかし、これは……)
進み始めたところでマリコは困った。マリコたちのすぐ前はミカエラとサンドラで、その前をイゴールと並んだミランダが階段状の岩場を登っている。すぐ前とは言っても坂道故、安全のために何メートルかは間隔を取ってある。正面を向くと登って行くミカエラたちの足元が目に入った。そこまではいい。
だが、道の先を見ようと視線を上げる。するとそれは同時に、前を行く二人を足元の高さから斜めに見上げることにもなる。革ブーツから白いストッキングに包まれた脚が伸び、それを吊ったガーターベルトが太股の脇を縦断してレース地の折り重なったパニエの奥へと消えていく。スレンダーなミカエラは脚も引き締まって細く、マリコと同等のサイズを誇るサンドラは脚も少しむっちりしていた。
ミニ丈の黒いメイド服に包まれた腰――これも二人の幅は微妙に違う――が一歩ごとに右へ左へと捻られ、それに追随してスカート部分の裾とパニエも揺れる。二人とも一応気をつけてはいるのだろうが、後ろにいるのはマリコとカリーネである。そこまで神経質にはなっていなかった。つまり、時折ちらりちらりと見え隠れするのである。
さらに二人の間からミランダの後姿も見えていた。こちらも二人とほぼ同じ服装である。違う点はしっぽの有無とブルマを穿いているというところだった。しっぽが上がればスカートも一緒に持ち上がり、その上本人に「ブルマだから大丈夫」という意識がある。ちらりどころではなかった。
(だから、何で今さら)
マリコは中身は風呂場で見たことがあるだろうと何度も自分に言い聞かせるが、それでもつい目を向けてしまう。
(これがチラリズムというものの力だというんですか)
その吸引力の強さを再確認したマリコが何とか顔にだけは出さないように苦心していると、ミカエラの声が聞こえた。
「ミランダさん、ちゃんと気をつけてないと。さっきからしょっちゅう見えてるよ」
ミランダのパンチラならぬブルモロに気付いたのだろう。マリコの位置からでも見えていたのだから、むしろ気付かない方がおかしい。ミランダの隣にいたイゴールは一瞬ギョッとしてミランダに目を向けた後、懸命に表情を取り繕って前に向き直った。聞かなかったことにするつもりらしい。
「ん? 何、これは見えても大丈夫なやつだ」
「何それ」
「うむ、下着の上に穿く物だ。私も名前までは知らなかったのだが『ぶるま』というのだそうだ。マリコ殿に教えて頂いた」
「ブルマ!?」
「そんなのあったんだね」
ミカエラに続いてサンドラも驚いたような声を上げ、同時に名前の挙がったマリコの方に振り返った。しかし、マリコを見た途端に二人して目を瞬かせる。
「マリコさん、大丈夫?」
「えっ!? マリコさん?」
前を向いていて気付いていなかったのだろう。マリコの隣を歩いていたカリーネもマリコに顔を向けてくる。
「だ、大丈夫、ですよ?」
「だって、何だかお面みたいな顔になってたじゃない。あ、もしかして疲れた?」
「いえ、そこまでではありませんよ、本当に」
心配してくれていることが伝わってくるミカエラに対して申し訳なく思いながらも正直に答えるわけにもいかず、マリコは疲れたという部分だけを否定した。今のマリコの身体能力からすれば、半日そこそこ歩いたからといってへばるほど疲れることはない。疲れたと言うならそれは肉体ではなく精神的にである。
(髪の色とお揃いのパンチラにニヤけそうになったから表情を引き締めてましたとか、そんなアホな事、言えるわけないじゃないですか!)
何とか誤魔化したものの、マリコの煩悶は坂を登り切るまで続いた。
ブルマ再び(汗)。
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