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新世界のメイド(仮)さんと女神様  作者: あい えうお
第五章 メイド(仮)さんの探検
302/502

298 変わり行くもの 8

2017/12/25 前話(297 変わり行くもの 7)にほんの少し追記しました。ストーリーには影響ありませんが、気になる方は「前の話」をご覧ください。

 陽が傾きかけた頃、メイド服三着の修繕を終えたマリコはミランダの部屋の扉を叩いた。用があるのはアドレーたちなのだが、彼らに話をするならミランダを通した方がいいだろうと考えたのである。


(直接話しに行ったからってミランダさんが怒るとは思えませんけど、そこはまあ一応、ねえ)


 ミランダとアドレーの、何と言っていいのかよく分からない関係を思えば、ここは考慮すべきだろうとマリコには思えた。自分だけが加護を得て強くなっていくことに忸怩たるものを感じていたミランダである。ミランダが考えていることとは少し違うだろうが、アドレーたちの身の安全に係わることなら知っておきたいだろう。


「ああ、マリコ殿か。ちょうどよかった。こちらから訪ねようと思っていたところだ」


 出てきたミランダはそう言ってマリコを部屋に招き入れた。ミランダ本人の出発準備は終わっているらしく、部屋はきれいに片付いている。壁に掛かったアニマの国の旗に目を向けながらマリコが部屋に入るとミランダはマリコにイスを勧め、自分はベッドに腰を下ろして口を開いた。


「それでマリコ殿は何用であろうか?」


「ミランダさんこそ、私に用があったんじゃありませんか?」


 そちらから、いえいえそちらからと、ひとしきり遠慮のし合いになった後、ミランダの話からということになる。


「今夜、女神様の所へ連れて行って頂きたい」


「女神様の所、ですか」


「ああ、女神様ご本人の了承はもう頂いている故」


 ミランダは女神に相談メッセージを送ったのだという。内容はもちろん、アドレーたちに対するミランダの「ズル」に関してである。バルトたちが戻った後、しばらく姿が見えなかったのはメッセージのやりとりをしていたからだった。


「それでだな。策を授ける故、マリコ殿に連れてきてもらうようにと」


 ミランダはそう言ってメニューを開くと、女神から送られてきたメッセージを表示させてマリコに見せる。するとそこには確かに、今夜就寝時刻になったら連れてきてもらえという内容のことが書かれていた。今のところ、ミランダが一人で女神の間に行く方法は無い、というかまだ該当項目が解放されていないので、行くなら当然マリコもセットになる。


「分かりました。私からも一応連絡を入れておきますね」


 マリコはそう言ってその場で女神宛にメッセージを打った。訪問する予定の時刻と女神の()準備(・・)をよろしくといった内容である。ミランダが見ている前なのであまり詳しく書くわけにもいかない。


部屋(・・)の方に出ちゃったら、ミランダさんが何と言うか分かりませんからね)


 女神はミランダに対してはまだ女神らしく振舞うつもりのようである。ミランダを生活感溢れるあの部屋に迎え入れる気はないだろう。マリコの連絡はそのための注意喚起であった。


「こちらの話はそれだけだ。で、マリコ殿の用というのは?」


「ああ、こっちもアドレーさんたちの話になるんですけど、ミランダさん、私が武器をいろいろと持っているのはご存知ですよね?」


 もちろん知っているのでミランダは頷いた。マリコの荷物が出てきた時にいくらか見せてももらったし、女神と会った今ではそれがマリコのアイテムストレージに仕舞われてた物であることも知っている。


「あの中からいくつか適当な物を、アドレーさんたちにお譲りしようかと思うんです」


 マリコのセリフにミランダの目が見開かれる。マリコの持っている武器は、そのほとんどがかなりの業物なのだ。以前ミランダにも何か譲ろうという話もあった。だが、ミランダが好んで使う刀に関しては、ミランダが今持っている物以上の品が無かったためにその話は見送られている。


「それは! いや、彼奴(きゃつ)らにとっては有難いことなのだが、何故」


「ええ、それなんですが、バルトさんたちの話を聞いていて……」


 マリコは説明を始めた。岩の魔物の身体を断ち切るには魔力をまとった攻撃が必要であるらしい。それには、攻撃系の魔法を撃ち込む、付与(エンチャント)系の魔法を掛けた武器か元々魔力をまとった武器で攻撃する、などが選択肢として挙げられる。


 しかし、近接戦闘タイプが揃ったアドレー組のメンバーは、誰も攻撃系魔法や付与系魔法を使えないというほどではないものの、得意と言えるほどの者もいない。これまでの灰色オオカミ(グレイウルフ)に代表される動物相手なら問題なかったが、強い魔物を相手にするには少々不利である。


「……で、今回はその岩の魔物と再戦ですよね。ならせめて魔力をまとった武器を手にしていれば、付与(エンチャント)に掛ける手間も攻撃に回せるでしょう?」


 実際には今回に限った話ではない。今後も西二号洞窟をアドレー組が担当しようとするなら、魔物対策は必須なのである。長期的に見るなら魔法についても腕を上げていく必要があるだろう。


「なるほど、(あい)分かり申した。これはむしろこちらから願うべき話であろう。それで彼奴らが少しでも……」


 ミランダはそこで言葉を止めてしまったが、何を言いたいのかはマリコにも十分伝わった。お互い、似たような立場で似たような思いを抱いているのである。


 納得したミランダの行動は早かった。部屋を出て早々に食堂でアドレーを見つけると――これはむしろ、アドレーの方がミランダを見つけやすい場所にいたのだが――「私とマリコ殿から話がある故、今すぐ集合せよ」と言い渡す。アドレーの方もミランダに言われて断るはずもなく、すぐに他のメンバーを呼びに行った。


 ほんの数分後、マリコとミランダの前でビシッと一列に並んで立っているアドレーたちの姿があった。場所はさすがに食堂ではなく、アドレーの部屋である。マリコとミランダに座るように勧めて直立不動になる彼らに、マリコは微笑ましいを通り越して笑いそうになってしまった。


「それでは皆さん……」


 表情を取り繕ったマリコは、ミランダにしたのと同じ話をし、候補となりそうな武器や盾を取り出してベッドの上に並べていく。鎧についてはマリコの持ち物が女性用ばかりなのでどうしようもない。


 かくして、アドレーの(パーティー)は新たな得物を手に入れ、その攻撃力を幾分向上させた。


「貴殿ら、さすがにそれをいきなり実戦で使いこなせるとは思うまい。私も付き合う故、明朝はそれに慣れる鍛錬だからな!」


「「「「「おう!」」」」」


 ミランダの言葉に五人が応える。目を細めてそれを見ていたマリコの脳裏に何かが引っ掛かった。


(明朝……、鍛錬……? あ)


――帰ってきたらまた手合せをしてもらえないか


 マリコにも先約があったのだった。

次回は翌朝、ではなく、まだ夜だったりします(笑)。

誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。

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