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新世界のメイド(仮)さんと女神様  作者: あい えうお
第四章 メイド(仮)さんのお仕事
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260 探検と冒険 3

探検者(エクスプローラー)の道具?」


 ミランダは野菜相手に振るっていた包丁を止めると顔を上げた。隣で同じく包丁を握っているマリコに目を向けると、こちらは手を動かし続けたたままミランダに視線だけちらりと走らせて「ええ」と答えた。


 ここしばらくの間で少なくとも包丁捌きについてはかなり進歩したと自分では思っていたミランダだったが、マリコの仕草を見てこういう所で自分はまだまだだなと思う。さすがに何か切りながらそこから目を離すのはまだ難しい。


 二人は今、厨房に立って夕食の仕込みをしている。その途中でマリコの口から出たのが、探検者(エクスプローラー)に必要な道具類についての質問だった。何故そんなことを聞くのかとは、さすがにミランダも思わない。原因、少なくとも発端はどう考えてもバルトであろう。


 一方のマリコはタリアから洞窟の話を聞いて、改めて探検者(エクスプローラー)というものに興味を持った。バルトの存在が原因のひとつであることには違いないがそれだけというわけでもない。


 この地に立って以来、自分自身と身の回りのことを把握するのに手一杯だった。しかし、宿での生活にも慣れ、女神と会ったことで自分の置かれた状況もかなり分かった。そうなったことでようやく周囲にも目が向き始めたのである。


「……基本的には、徒歩で悪路を旅するための道具と狩りをするための道具を持っているはずだ」


「はい」


「それ以外はその時どこに向かう予定かによるのではないかと思う」


「え」


 しばらくあごに手を当てて考えていたミランダから返ってきた答えに、マリコは手を止めてキョトンとした。あまりに簡潔な答えだったからである。しかし、考えてみればしごく真っ当な答えでもあった。


 探検者(エクスプローラー)は何をするのか。人跡未踏の地を行くのか特定の範囲内を見回るのかといった違いはあるが、野営をしながら進んで時に戦い、情報なり目的の物なりを持ち帰るのが仕事である。簡単に言ってしまえば確かに旅と狩りということになる。


「私は故郷を出る時に一応ひと揃え用意した故、要りそうな物は大体持っている。マリコ殿も荷物が見つかったのならある程度は持っておられるのではないか?」


「ええと」


 ミランダに聞き返されてマリコは返事に困った。アイテムストレージの使い方が分かったことで、確かにかつての持ち物はかなりその手に戻った。しかし、武器防具といった狩りに使える物はともかく、旅行用品の類はその中には無いのである。


 理由ははっきりしていた。アイテムストレージの中身は元々ゲームの時の「マリコ」の持ち物だからである。ゲーム内にはそもそも野営というものがない。イベントなどでキャラクターが眠ることや泊まることはあったがプレイヤーまで寝るわけではないのでそのためのアイテムという物が無かった。


 プレイヤー自身が寝る時は当然ログアウトするのでキャラクターは消え去り、やはり泊まる必要が無い。それらしい物としては、街の外やダンジョン内でキャラクターを安全に休ませる――HPやMPを回復させる――ための使い捨てモンスター避けアイテム「簡易結界」があった。浮き上がって見える結界の形からユーザー間で「テント」と呼ばれていたが、さすがにこれを本物のテントとは呼べないだろう。


「……ああ、持っていないからおかしいということはないぞ。普通に街や里で暮らしている者には無用だからな。ただ、マリコ殿故、何となく持っておられるような気がしたのだ」


 口ごもったマリコの様子から察したらしいミランダがあわてたように言い足した。実際、RPGのキャラクターである「マリコ」の能力やスキルは今の世界で言えば探検者(エクスプローラー)そのものである。旅や野営をしたことがないと考える方が不自然であろう。


「あーいえ、持っていないのは事実ですから。もうついでに聞いてしまいますけど、ミランダさんは何を持ってるんですか? 大体見当は付くんですけれど」


「ふむ……。私が買ったのは、寝袋と毛布、食器と、笑われそうだが調理道具に鍋、雨用の外套(マント)、あとは小型の天幕(テント)にロープや(くさび)と金槌くらいか。あとは持ち帰る予定の物やアイテムボックスの余裕と相談だ、というのはアドレーが言っていたことだがな」


「ああ、アイテムボックス」


 ミランダの列挙した内容は概ねマリコの予想通りだった。さほど実際の経験があるわけではないが、キャンプ用品やフィクションの冒険者の持ち物ほぼそのままである。個人の荷物でテントまでというところで多いなと思っていたマリコだったが、ここでもアイテムボックス様々のようだった。そこに仕舞っておくのが前提なら旅行用の小型の物などでなくても構わないということになる。


「うむ。私は剣の鍛錬の成果か割りと入ってな。天幕(テント)も持ち歩けるのはそのおかげだ。ああ、もちろん意味がない故今は持っていないぞ? 部屋の物入れに置いてある。もっともこのところまた容量が増えたようだ。今なら普段から持ち物を全部入れておいても大丈夫かも知れぬ」


 自慢そうに言うミランダにマリコはへえと思った。最近アイテムボックスの容量が増えたというなら、ミランダがレベルアップか何かで成長したということである。狩りかマリコとの朝練か料理か。マリコは自分もミランダの役に立っているような気がして少し嬉しかった。


「いずれにせよ、大体は雑貨屋で手に入る物だな。ここの里の雑貨屋だとさすがに天幕(テント)は普段置いていないやも知れぬが、注文はできるだろう」


「そうですか。ありがとうございます」


「いや、役に立ったのならいいのだ。……時にマリコ殿」


「はい」


「今わざわざこんなことを聞くということは、バルト殿の(パーティー)に加わられるおつもりか」


 あまりにも直球なミランダの言葉に、マリコは目を瞬かせた。

何やら説明回っぽい話が続いて地味目です(汗)。

誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。

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