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新世界のメイド(仮)さんと女神様  作者: あい えうお
第一章 世界の始まり
24/502

024 世界の始まり 21 二冊目『神々からの贈り物』 3

「021」から「024」までは「本の内容」となっています。

 「ハジメ」の門が見つかって数日のうちに四人の長も連れて行ってもらったので、「ハジメ」の門に行けるようになっていました。門の周りを見て回った長達は、ハジメが言ったとおりの林や草原や川がある他に、様々な動植物のいそうな山や鉄などの鉱物が採れそうな岩山が近くにあるのに気が付きました。


 四人の長はヒューマンの里に戻ってまた話し合いました。四人が見た「ハジメ」の門の周辺はとても豊かな土地に見えました。開墾や整地の必要があるとは言え、新たな里や街となるのに十分な広さと自然の恩恵があります。また、魔力が必要という条件があっても、転移できるということは「ハジメ」の門は四つの門のそばにあるのとそう変わらない、ということになります。


 このころになると四つの里ではもう、皆がそれぞれ狩りや畑作りをして着る服は自分達で作って、という自給自足な暮らしをしているわけではありませんでした。門を中心に街が広がって人の数が増えてくると、服作りが得意な人や鍛冶仕事が得意な人はそれを中心にやるようになりました。食べる物や自分が作っていない物は、それを採ったり作ったりしている人に自分が作った物と交換してもらうようになっていったのです。


 しばらく皆はそうして暮らしていましたが、さらに人が増えてくると困ったことが各所で起きるようになってきました。交換したい時に、相手が欲しいものを必ず自分が持っているとは限らない、ということです。そこで、誰にでも同じように価値がある物として、お金が考え出されました。四つの里のどこでも通用するよう、同じ大きさと形の銅貨が作られました。


 すると今度は、物の売り買いや輸送を主な仕事にする人が出始めました。商人と呼ばれるようになったこの人達と売り買いする方が、作った人が直接売りに歩くより時間も手間もかからないし、時間が浮く分多くの物や他の物も作れるからです。こうして商人の人数も扱われる物の量も増えていった結果、次は扱う銅貨の量や重さが問題になり、一枚の価値が高い大銅貨や銀貨が作られました。


 商人達はその仕事の都合から、当然門の近くに住みたがりました。しかし、土地の広さは限られていますし、便利なところにいたいのは誰も同じでした。里の中心部の土地不足は四つの門全部で起きていることだったのです。


 こうした事情から四人の長は、「ハジメ」の門にはじきに里ができることになる、と考えました。しかし、門の周辺を拓いていくに当たって、四つの里にはなかった問題がありました。それは、「ハジメ」の門に転移した場合、ほとんどの人がその日には元の門に帰れない、ということでした。


 当然、そうした人達は「ハジメ」の門の方で泊まることになります。周囲の安全が確保され、各自が住む家ができるまでの間、とりあえず安全に寝起きできる場所が必要になる、と四人の長は考えました。幸い、先に同様のことを考えたハジメの提案で建てられた小屋がありましたから、それを拡張して対応すればいいということになりました。


 四人の長はその他の問題になるであろうことについても考えました。「ハジメ」の門の辺りにどのような危険な動物がいるのかまだ全部分かってはいないので、そうした危険に対処する者が必要であること。人が集まる以上、取りまとめる者が必要であること。これは里ができるとなれば余計必要になること。各自が住む家ができても、後から訪れる者のために安全に泊まれる場所が後々まで必要であること。このような事柄が挙げられました。


 これらの問題を誰に任せるのがいいか、四人の長は少し考えましたがすぐに答えが出ました。それはハジメでした。彼は一人で新しい門まで辿り着くことができた猛者でしたし、何より彼が見つけた門には神様によって彼自身の名前がつけられています。それに、彼が連れて行ってくれなければ誰も「ハジメ」の門には行けなかったのです。四人の長は「ハジメ」の門に関する事柄はハジメに任せることこそが相応しいと考え、それをハジメに伝えました。


 四人の長にこの話をされたハジメは戸惑い、一人でできるものでもないと断ろうとしましたが、家族らと共にやればよいし四つの里も協力するからと説得されて、結局引き受けることになりました。元々土地不足による家の狭さがハジメが旅に出た理由の一つでもあったので、ツヅキ達ハジメの家族もハジメと共に新しい門の近くで暮らすことに賛成しました。


 こうして、ハジメは「ハジメ」の門の番人兼宿屋の亭主兼皆をまとめる長になることになりました。


 次に、四人の長にハジメを加えた五人は、さらに後の事を考えました。何分神様がなさることです。「ハジメ」の門が最後なのではなく、そのうちきっと次の新しい門が見つかるだろうと五人は思いました。そして、今後誰かが新しい転移門を見つけた時にどうするかを五人は話し合い、それぞれの里の皆とも相談して、次のように決めました。


・新しい転移門が見つかったら、まず門の近くになるべく安全に泊まれる宿屋を作る。

・転移門を見つけた者、つまり門の名前となった者が門の番人となり、宿屋の亭主または女将を兼ねる。そこに里ができた場合はその長になる。

・始めの宿屋を作る費用は初めの四つの門の里が立て替える。これは後々里がある程度大きくなって返済できるようなら返済する。

・次の門の番人は門の番人の家族の誰かが継ぐ。いない場合は門の番人の決めた者が継ぐ。それもいない場合は集落で話し合って決める。これは四つの里の長の決め方と同じである。


 その後、五人が予想したとおり、時折新しい転移門が見つかるようになりました。現在では、始めの宿屋を作る費用だけは銀行が立て替えることになっていますが、それ以外は今でもこのときの決まりに従って、新しい転移門の周辺は拓かれています。



門歴二百年一月一日初版第一刷発行

門歴千年一月一日改訂十二版第一刷発行

門歴千十年一月一日改訂十二版第二刷発行


監修・発行:神格研究会歴史部

頒布価格:銀貨四枚

誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。

2014/12/25 「019」~「026」を構成変更。

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― 新着の感想 ―
[良い点] えー、本の内容〜とか思ってたら、歴史物語を読むみたいにめちゃくちゃ面白かった! こういう世界観設定って長々としてて面白くないこと多いけれど、すごく読みやすく表現されてて良かったです!
2022/02/10 06:31 退会済み
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