023 世界の始まり 20 二冊目『神々からの贈り物』 2
「021」から「024」までは「本の内容」となっています。
それぞれの里が大きくなり、もう街とか国とか――街や国という言い方はもっと後にできたものです――言ってもいい大きさになってきたころ、これまで誰も行ったことがない方向へと探検に出かけていたある男が、故郷の門からずいぶん離れたとある林のはずれまで来たところ、そこに四つの門とそっくりの転移門があるのを見つけました。
男が早速転移門を使ってみようとすると、頭に浮かんだ地図にはこれまでの四つだけではなく、五つ目の門が示されていました。新しく示された、男が今いる門には「ハジメ」と男の名前がついていました。そして、「同行者を一人選ぶことができます」という神様の声が頭の中で聞こえました。
ハジメは一人旅だったので、そのまま門を通って自分の家があるヒューマンの門へと転移しました。すると、これまで四つの門で転移していた時とは違い、何かを吸い出されるような気力が無くなっていくような、そんな感覚を覚えました。それは魔法を使った時の感覚とそっくりでした。
ヒューマンの門に戻ったハジメが周りの人達に新しい門を見つけたことを伝えると、人々は驚き、発見したハジメを口々に称えたあと、早速新しい門に行ってみようということになりました。ハジメの言ったとおり、門を使おうとした人の頭に浮かんだ地図には確かに「ハジメ」というこれまでは無かった五つ目の門が示されていました。
ところが、「ハジメ」という門に転移しようとすると、「行ったことのない転移門は選べません」という神様の声が頭の中で聞こえて転移できませんでした。周りにいた人達は次々に試してみましたが、皆同じ声が聞こえただけで誰一人転移できなませんでした。行ったことのない門に行けないのなら、自分で歩いて行かない限り「ハジメ」という門に転移できるのは門を見つけたハジメだけということになってしまいます。
ここでハジメが、帰ってくる時に聞いた神様の声の事を思い出しました。そのとおりなら、ハジメが転移する時に一人だけ連れて行けるはずだということです。ハジメはそのことを皆に話して試してみることにしました。
ハジメが「ハジメ」という門に転移しようとすると、さっきと同じように「同行者を一人選ぶことができます」という声が聞こえました。そこでハジメが弟のツヅキを選ぶと、今度はツヅキの頭の中に「ハジメと一緒に行きますか」と問いかける神様の声が聞こえました。ツヅキが「はい」と答えると、ハジメの頭の中に「ツヅキが同行します」と声がしました。ハジメは今度こそ「ハジメ」という門に転移しようとしました。
ところが今度は「転移に必要な魔力が不足しています」という神様の声がハジメの頭の中で聞こえて、また転移することができませんでした。ハジメは、帰ってきた時に魔法を使った時のような感覚があったことを思い出して、これも皆に話しました。
そこにいた皆はじばらく話し合っていましたが、どちらにせよここにいる者だけの話では済まないということに気づいて、ハジメに部族の長に話をしに行かせることになりました。
ハジメの話を聞いたヒューマンの長は、新しい門の話ならこれは一つの里だけの問題ではないと思い、他の三つの里の長にも話を聞いてもらうことにしました。連絡をもらった三人の長は急いで集まり、ハジメは四人の長の前で同じ説明をくりかえしました。その結果、明日ハジメの魔力が回復してからもう一度試してみることになりました。ハジメは久しぶりに我が家に帰って眠りました。
次の日、魔力不足で今日は戻れないことを予想して、野営の道具をたくさんアイテムボックスに詰め込んだハジメとツヅキは、皆の見守る中「ハジメ」の門への転移を試しました。今度はちゃんと二人とも転移していきました。転移してみると、連れて行ってもらったツヅキもハジメと同じように魔法を使った時の感覚を覚えました。そして、ヒューマンの門に戻ろうとするとやはり「転移に必要な魔力が不足しています」と言われて転移できませんでした。そこで二人は、昼の間は門の周りに何があるのか見て回り、夜は門の近くに天幕を建てて火を焚き、その日はそこで眠りました。
翌朝、魔力が回復した二人は、それぞれが「ハジメ」の門を使ってヒューマンの門に戻りました。ハジメは、すぐまた来て使うだろうと、天幕と野営道具はそのまま置いていくことにしました。戻った二人は、待っていた四人の長や皆に、神様の声のとおりだったことと門の近くに林や草原や川があったことを話しました。
さらに次の日、ハジメとツヅキはそれぞれ一人ずつを連れて「ハジメ」の門に向かいました。すると、前の日の間に動物かなにかが来たらしく、一昨日にハジメが置いていった天幕は倒されて破れており、辺りには野営道具が散らばっていました。ハジメ達は連れが持ってきていた新しい天幕を建てると、林から何本か木を切ってきて、その周りに簡単な柵を作りました。
さらに翌朝、他の三人と一緒にヒューマンの門に戻ったハジメは、安心して休める小屋かなにかが向こうに必要だと皆に言いました。一緒に戻った三人も頷きました。そこで、次からは大工道具や材木も向こうに持っていくことになりました。こうして、新しく誰かを連れて行っては次の日に各自で戻る、ということを繰り返しました。
何日か後には「ハジメ」の門に行ける人もだいぶ増えて、門のそばには柵に囲まれた何人かが泊まれる掘っ立て小屋ができていました。また、魔法の技に長けた特に魔力の高い人であれば一日の内に往復することもできる、ということも分かりました。
誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。
2014/12/25 「019」~「026」を構成変更。




