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新世界のメイド(仮)さんと女神様  作者: あい えうお
第一章 世界の始まり
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013 世界の始まり 10

「ふうん。なるほどね」


 三人の説明――途中、アリアの「見惚れた」発言が飛び出して、カミルがサニアに責められる一幕もあったが――を聞いて、タリアは頷いた。


「門で寝てたってのは転移酔いかもしれないけど、荷物がないとか、何でここにいるのか分からないって言うのはよく分からないね」


「転移酔いってどうしてなるの? おばあちゃん」


「ああ、アリアにはまだ分からないね。いい機会だからついでに説明しとこうかね」


 タリアはそう言ってちらりとマリコの顔を見ると、アリアの方に向き直って転移門について簡単に説明していった。


・転移門の石畳の上で門を使いたいと考えると頭の中に地図が浮かぶので、行きたい門を選んで念じると門が通じる。

・基本的に実際に行ったことのある門にしか転移できない。

・転移する際には、概ね行き先との距離に比例した魔力を消費する。

・転移時、自分以外にも一人だけ一緒に連れていくことができる。

・基本的に転移に同意していない者は連れていけない。

・一緒に行く者も同じように魔力を消費する。


「ここまではいいかい?」


 タリアは一度話を止めると、アリアとマリコの顔を見た。アリアと一緒にマリコも頷く。


(ゲームの転移門と似ているけれど、細かいところが結構違うな。こっちの方が使いやすい気がする)


「じゃあ、続けるよ。基本的には、行ったことがない門に行く方法は二つしかない。直接歩いて行くか、誰かに転移で連れて行ってもらうか、だ。歩いていくのは大変だから、その門に行ける人を見つけて連れて行ってもらう方が楽だっていうのは分かるだろう? そこで「転移屋」っていう商売をする奴が出てくる」


「料金をもらって目的地の門に連れて行くんですね」


「そういうこったね」


 マリコが言うとタリアは頷いた。転移にはかなりの魔力が必要で、少し遠くの門だと送った方も魔力不足でその日には帰れないのが普通だそうで、料金は報酬分プラス相手の分の宿泊費ということになったりするそうだ。


「ただまあ、同じ人を同じ所へ二度送ることはないんだから、そんなに仕事が多いわけじゃあない。転移屋専門なんて人は私も会ったことがないね。たいていは行商人か飛脚が仕事のついでにやる小遣い稼ぎだね」


(まあ、一回行った門には次から自分で行けるんだから当然そうなるよな)


 マリコが納得しているとタリアはまた話始めた。


「で、送ってもらう方も魔力が要るだろう? 自力で行こうとした時に魔力が足りないと門は通れない。でも、送ってもらう方は魔力が足りなくてもなんでか一応行けるんだよ。ただ、魔力を使い切った状態になっちまうから転移した先でふらふらになる。それが「転移酔い」って呼ばれてる。要するに転移で起きる魔力切れなんだがね」


「じゃあ、私もお父さんに街に連れてってもらったら、倒れるかもしれないの?」


「今すぐならそうなるかも知れないね。でもちゃんと十二になった子が隣の門に行くくらいなら、そんなことにはまずならないから心配いらないよ、アリア」


 不安になったのか、そう聞いたアリアを慰めてタリアは続けた。


「まあ、魔力切れの疲れで寝ちまうってのはよくあるんだけどね。魔力切れで記憶が無くなったり荷物が無くなったりはしないもんだ。だからよく分からないって言うのさ」


「じゃあ結局、マリコさんに何があって何しに来たのかは分からないってことか」


「何があったのかは分からないけどね、何しに来たのかは分かってるよ。この娘はうちへ働きに来てくれたんだよ」


(は?)


「「「ええっ!?」」」


 カミルの問いにあっさりと答えたタリアに全員が驚いた。


「何をサニアまで驚いてんだい。こないだ話したろう。おまえがじきに動けなくなるから、住み込みの子を増やそうかって」


「え、あの話なの? お母さん、もう頼んであったの?」


 タリアに話を振られて、サニアがお腹に手を触れながら答えた。


「すぐに都合のいい人が見つかるかどうかなんて分かんないんだ。こういうのはさっさと手配するに限るんだよ」


「手回しがいいわねえ、さすが女将」


「いつまでもさすがじゃ困るんだがね、若女将」


(産休みたいになるサニアさんの代理を募集してた、ってことなのか?)


「わざわざそんな格好で来るんだから、家事とかは大丈夫なんだろう? マリコさん」


「え!? ああ、はい、多分……」


(マリコのスキルにせよ、私自身の能力にせよ、そこそこはできるだろう)


「読み書きや数の勘定は?」


「それも多分、それなりには……」


(宿屋の門みたいに日本語なら、だけど)


「上等じゃないかい、この娘は」


 ポンポン聞いてくるタリアに反射的に答えているうちに、どんどん話が進んでいく。


「紹介状が確認できないのがなんだけど、どっちにしろこの娘は一人で最前線(フロンティア)まで来た開拓者(パイオニア)なんだ。面倒見るのは門の番人(ゲートキーパー)たる宿屋の義務だからね」


 タリアはマリコの顔を見てニッと笑うとそう締めくくった。


(これ就職内定、というか決定!?)

誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。

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