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新世界のメイド(仮)さんと女神様  作者: あい えうお
第三章 メイド(仮)さんの生活
116/502

116 風呂場にて 7

 マリコの脳裏にまず浮かんだのは、かつて姪達がやっていた「寄せて上げる」技術と「豊胸体操」のことである。だが、それらについてはすぐに考えを放棄することになった。


 寄せて上げる方については「胸周りだけでなく、背中や腹からも肉をかき集めて胸に押し込む」と聞いて、なんだその怪しげな手品みたいな話は、と思った覚えはあるものの、さすがに具体的な方法までは細かく聞いていなかったためである。それにアリアが求めている答えはそういうものではないだろう。ただ、アリアの母にはそういう技術の存在を教えてもいいのではないかと、マリコは少々ひどいことを考えた。


 もう一方の豊胸体操についてはある程度は見聞きして知っているものの、こちらは効果のほどが不確実に過ぎると思われた。確かに姪達は、後に彼女達の母や叔母に匹敵するバストの持ち主へと成長した。ただし、当時のマリコの目から見たそれらは明らかに遺伝形質発現の結果であり、そこにかの体操がどれだけ寄与できたのかは(はなは)だ疑問である。


 普通に考えれば、バストを確実に大きくする方法など無い。もしその方法が実在し、一般に知られているようなものであるなら、昨夜マリコはサニアやミランダに揉みくちゃにされなくても済んだはずである。ままならぬ現実というものがあるが故に、人は自らが欲するところを求め、己が持ち得なかったものを当然のように所有する他者を(うらや)み、時に嫉妬に駆られる。


 とは言え、とマリコは考える。この世界のどこかには、バストサイズを自らの意思で決定できる選択肢、もしくは自由に増減させるスライダーの如きものが存在するのではないか。この、つい数日前までプレイしていたはずのゲームに似た世界の(ことわり)の全てを、マリコは知っているわけではない。なにせ、アイテムボックスや転移門が実在する世界である。自分の容姿を設定できる機会があってもおかしくはないようにマリコには思えた。


 マリコは改めてアリアに目を向ける。彼女の胸はわずかに丸みを帯び始めた、十歳という年齢相応のものであった。今はおさげを解いて肩口にかかっている艶のある明るい緑の髪に、赤味がかった金髪のサニアと青い髪のカミル双方の面影を見て取れる顔立ち。両親の特徴を受け継ぐアリアの容姿から、この世界にも遺伝というものが同じように存在することはほぼ確実である。


 カミルの血統が持つ因子がどういうものであるかが不明ではあるが、遺伝的に考えるなら一応の答えは得られる。しかし、「お前の母や祖母が大した大きさではないのだから、お前もさほどの大きさにはならないだろう」という現実的な回答を突きつけて、年端も行かぬ少女を絶望の淵に叩き込む悪鬼羅刹の如き所業は、マリコの望むところではなかった。


(大きい胸、大きい胸……あ)


 何と答えるべきか考えていたマリコの頭に、そのセリフと共に一人の姿が浮かび上がった。


――次に会えるのは向こうでじゃな


 女神ハーウェイ様。


 メロン――無論プリンスではなくマスクである――のような見事に巨大なバストを備えた母なる神。おそらくはマリコをこの世界へと送り込んだ全ての元凶。彼女であればこの世界のバストについての真理も知っているのではないかと思われた。


(女神様に会ったら、その辺の話も聞いてみよう)


 マリコはそう考え、ふと気付いてそう考えたことに内心苦笑した。女神様に会わなければいけない理由として、何故自分がここにいるのかという根本的な疑問を一番に思いつくことができなかったのだ。もちろん、忘れたわけではない。次々と起こる出来事に追われて棚上げしているうちに、つい目の前の事の方を先に考えてしまっただけである。


(目の前の事、大事な事……あれ?)


 マリコの頭にある疑問が浮かんだ。それを確かめるべく、アリアに向き直る。


「アリアさん、先に聞きたいんですが、どうして私のようになりたいと思ったんですか?」


「え? ええと、それはお父さんや里の皆が……」


 アリアの話を要約すると、宿に来る人達――特に男性――の間で昨日今日と何かにつけてマリコの話題が登り、同時にバストサイズについても言及されている。カミルも見ていたのは知っているし、やはり大きくないといけないのではないかと思った、ということだった。マリコ自身が直接どうこう言われたことはなかったので、密かに噂されているのだろう。初めて耳にする話だった。


(男って……、しようもない。まあ、分かるけれど)


「アリアさんも、目立っている物には自然と目がいくでしょう?」


「うん」


「それと同じだと思いますよ。それにほら、こう言うとちょっと失礼ですけど、お母さん、サニアさんはそう目立って大きい方ではないけれど、お父さんとはちゃんと仲良しでしょう?」


「うん。時々ケンカはしてるけど仲良しだよ」


 マリコは内心サニアに詫びながら引き合いに出して説明した。


「だから、大きくなくちゃいけないってことはないと思いますよ」


「そっかあ。そんなに心配しなくてもいいんだね」


「ええ」


 実例を挙げたからか、アリアは一応納得したようだった。身体も洗い終わっていたので湯に浸かるように言うと、アリアは素直に湯船に入って行く。マリコはひっそりと息をついた。


「マリコ殿」


「はい?」


 マリコがアリアのお風呂用具をまとめていると、今度は横合いから声が掛かった。そちらを振り返るとミランダが自分の胸に手を当てて眉根を寄せている。


「私個人としてはもう少しあってもいいような気がするのだがな。マリコ殿はどう思われるか」


「え、今度はミランダさんですか!?」

今回の内容が感想欄ほぼそのままな件(汗)。

書きかけがある状態でタイムリーな感想に素で返信しちゃいかんですね。

ネタバレとまでは行ってないでしょうけれど。

誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。

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