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新世界のメイド(仮)さんと女神様  作者: あい えうお
第三章 メイド(仮)さんの生活
115/502

115 風呂場にて 6

「おねえちゃん、そうなの?」


 マリコの危惧をよそに、アリアはミカエラ達の話に興味を示した。ミカエラ達二人を見比べた後、首を傾げてマリコの顔を見上げてくる。


「え、ええと……どうでしょう?」


 そこで私に振らないでくださいと言いたいのを何とかこらえて、マリコは言葉を濁すに留めた。これはどちらについてもろくなことにならない選択である。大きい方に分類されているマリコが「大きい方がいい」と言えば「自慢か」という話になり、「小さい方がいい」と言えば「嫌味か」という反応が返ってくるだろう。


 マリコがチラリとミランダに目を向けると、ミランダはミランダで何とも複雑そうな表情を浮かべて黙っている。


「大きくたって動くのに邪魔だし肩は凝るし、そこばっかり見られるし、いいことないんだよ。サンちゃんだってよくそう言ってるじゃない」


「それとこれとは話が別だよ。ミカちゃんこそ、遠目で男の人に間違えられるのはイヤだって言ってたよね。もう少しある方がいいかもって」


「そんなこと言ってない!」


「言ったよ、絶対」


 マリコ達が旗色をはっきりさせなかったからか、二人の矛先はお互いを向き始めた。普段から一緒にいる分、相手が引け目を感じているところもあるということを知っているのだろう。マリコ達を置き去りにして、そのあたりをつつき合いながらの大小議論が展開され始めた。


「あたしは好きでこのサイズでいるんだからいいんだよ!」


「ボクだって!」


 ああだこうだと言い合いが続くうちに段々とヒートアップした二人は、遂にはよく分からないことを言い始めた。


「あー、お二人とも……?」


「あなた達は何を言ってるのよ!?」


 見かねたマリコが二人の間に割って入ろうとした時、声と共に二人の頭上に背後からガスッと拳骨が落とされた。


「「痛っ!?」」


「自分達の拘りに他人様(ひとさま)を巻き込まないの、あなた達は!」


「「カーさん……」」


 ミカエラ達が頭を押さえて振り返った先には、両手を拳に握ったままのカリーネが立っていた。カリーネは拳を開くとそのまま手を伸ばし、二人のとがった耳をそれぞれ摘み上げた。その動きにつれて、こちらも当然裸のままのカリーネの胸が揺れる。サイズ的にはサンドラより少々小振りで、宿の者だとエリークラスだと思われた。


「ちょっ、カーさん!? 痛いってば!」


「耳、引っ張らないで」


「マリコ……さん、ごめんなさいね。この娘達、ちょっと酔ってるみたいで」


 カリーネはマリコに断りを入れながら、二人の耳を引っ張ったまま器用に後ろへ下がっていく。マリコが改めて見直すと、引かれていくミカエラ達の肌には確かに赤みが差している。考えてみればつい先ほどまで食堂で帰還祝いの宴会をやっていたはずなのだ。少々酔っていてもおかしくはなかった。


「アリアちゃんに何を吹き込む気だったの! 大きくても小さくてもいいじゃない、胸なんか」


「そりゃトーさんは、大きかろうが小さかろうがカーさんだったらそれでいいんだろうけどさ」


「揉んで大きくする、とか言い出しそう」


「ちょっと、何を言い出すのよあなた達は!?」


「「痛い痛い痛い! ちぎれる! 耳ちぎれるから!」」


 カリーネも少しは酔っていたらしい。元居た洗い場へと戻って行く三人の方からどことなく間の抜けた会話が聞こえてきた。思わずミランダと顔を見合わせたマリコは、ふと疑問を感じた。


「あれ? トーさんってトルステンさんのことですよね? ではお二人は……」


「ああ、マリコ殿は初めて会う故、知らないのであったな。かの二人は婚約者、というよりほぼご夫妻だな。バルト殿の(パーティー)には何某(なにがし)かの目標があるそうでな、それを達したら正式に結婚するのだと言っておられた」


「そうなんですか。確かにお似合いな感じのお二人ですね」


 マリコは頭の中でトルステンとカリーネを並べてみた。大柄なトルステンと女性としては背の高いカリーネ――百六十五センチのマリコより少し低いくらい――の組み合わせは、とても収まりがいいように感じる。


「我らの仕事にも関係するからついでに言っておくとだな。バルト殿達は部屋を三つ使っておられる。三階の南東の角の部屋がバルト殿、そこから順にトルステン殿とカリーネ殿で一部屋、ミカエラ殿とサンドラ殿で一部屋だ」


「部屋ももう一緒なんですか」


「皆大人であるし、問題ない」


 十九や二十歳でちゃんと大人扱いされていることにマリコは感心した。だが考えてみると、十九ということになっている自分も同じようにしてもらっているのだ。マリコはなるほどと納得した。


「ねえ、おねえちゃん?」


「はい?」


 アリアの声に、考え込んでいたマリコは我に返った。


「それで、どうやったらおねえちゃんみたいになれるかっていう話なんだけど……」


(そういえば、その話の途中だったんだ!)


 見上げてくるアリアを見返しながら、マリコは何と答えるべきか考えを巡らせた。

というわけで、カリーネさんは売約済みなのでした。

誤字脱字などありましたら、ご指摘くださると幸いです。

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