アイズ
彼女の奇麗な眼が好きだったのだ。
眼の中央の虹彩はきれいな黒色、硝子体がぷっくりとかわいらしく膨らんでいて、強膜が青白く、まるで宝石のようだった。
彼女と目が合う。
ファーストフードの店内、カウンターの前に立っていると、店員や後ろに控える客から急かされている気がして、目についたメニューを飲み物とポテトが付くセットで頼んだ。
お金を渡し、商品が来るまでの間、レジの左側に誘導に誘導される。この些細な時間、彼女の眼を盗み見ることが出来るだけで幸せだった。
ああ、勿体無い。あんなに眼がきれいなのに、バイトが終わり外に出てきた時の、メイクを落とした彼女の眼以外は見てもいられない。
眼の良さを殺すアイラインにつけまつげ、濃い青色のアイシャドウが強膜の美しさを台無しにする。更には不自然な茶色のカラーコンタクトで虹彩を覆い隠す。ああ、勿体ない。なんて愚かなんだ。眼が可哀想だ。
彼女を助けなければ――。
彼女を動かなくするのは簡単だった。
人通りの少ない道を通った時に、後ろから頭を辞書が入っている鞄で殴打し、倒れた彼女の左側にある肩甲骨と肘を足で踏み、手首を持ち、勢いよく持ち上げる。ボキッと案外大きな音がした後に叫び声をあげて暴れ始めたので、右側も同じようにした。
静かにしないと次は脚だ。と言うと声は鳴きやみ、時おり痛みを我慢しているのか、うめき声が漏れ、それ以外は嗚咽と荒い息が口から洩れるだけになった。
仰向けにさせると目があった。
カバンからスプーンを取り出し消毒をする。壊れないようにスプーンで眼球をすくい上げ視神経をハサミで切った。
興奮で周りの音は聞こえなくなり、自分の心臓の音だけが頭に響いた。
もう片方の眼球も取り出し、食塩水を入れた瓶の中に二つの眼球を入れた。
足をバタつかせて口を大きく開けている女を残して、宝物を手に入れた少年のようにドキドキしながら家に帰った。
彼女を助けることができた、これからはずっと一緒だよ。
しかし、一週間もすると、私は後悔した。
ビンに入れた宝物は徐々に腐食して、輝きを失った。
縁日ですくった金魚のように、死んでしまうと汚いものに見えてくる。
庭の端に浅い穴をあけ、金魚の死骸のようなソレを、ビンからデロっと出し、土をかけ割り箸を立てた。
「ああ、新しいのを探さないと」
悲しみに暮れ頭を落とし、庭一面に刺さっている複数の割りばしを見て呟いた。
恋愛を書いるつもりだった……