新時代抗争を知る秋高三年のアイドル。
お店で結構飲んで・・
「アフターはダメか?」零夜
「今度ぉ。・・明日も学校で早いし・・ありがとね今日は。」片瀬
アフターは断る。
お店の営業時間も終わりに近づき自分のお客もひけたから・・
「じゃあ、もうあがっていいよ。お疲れせっちゃん」ボーイ
「はいっお疲れ様でした」片瀬
私は、ぼちぼちの人気だ。
やっぱ見る人が見ればまだ高一くらいって分かるから、
おじさま達からは敬遠されるけど。若い遊び人や不良達からは結構人気。
他にもアフターとかめっちゃ誘われるけど・・
「無理無理・・眠いもん・・」片瀬
最近全部断ってる。朝から学校だし~・・って。
あっ、専門学校って言ってるよ。
まあぶっちゃけ秋高も専門学校だし。アウトローのね。
「ふぁ~・・運転手さん、自宅までお願いします。」片瀬
「はいよぅ。眠そうだね。寝てていいよ。」運転手
いつも利用してるタクシーで顔見知りだから自宅って言えば分かってもらえる。
いつもこの店の終わりから、朝の秋葉原に着くまでの時間の記憶が無いような・・。
私の唯一の空白の時間だ。空白というか、
完全に素になってるというか、すべての鎧を脱いでる時間というか・・。
秋高では秋高生。メイド喫茶ではメイド。キャバクラではキャバ嬢・・。
今は私。何も纏ってない私。私の時間。
(もっといい断り方ができたのかな?)
いつも布団に潜り込んで今日の反省をすれば、やっと一日の終わり。
そして・・
「ガタンゴトン・・ガタンゴトン・・」
電車の窓から眺める景色に目的地が通り過ぎるのがいつもの合図。
さあ、来るぞ・・
『次は~秋葉原~秋葉原~』
いつも通り鼻に付く電車のアナウンスに・・
「ふぁ~。・・っ何見てんだよバカヤロー!」片瀬
「う・・いや・・」
少しウトウトしてた目を擦り、
対面から私の短めのスカートをいやらしく覗いてたサラリーマンに毒づく。
「おーーいっせっちゃーん」柴
「おおーおはよ~。」片瀬
後ろから軽く駆け足でやって来る柴ちゃんと、
まだ動き始めたばかりの雑踏に腰掛けて仲良く缶コーヒーを飲む。
「今日早いじゃん」片瀬
「へへっせっちゃんも~」柴
早いのには理由がある。まあそれは後で・・
「あはは」
「へ~」
うわ・・なんだよアイツ等もか・・
まだ遠くだけど、もう声だけで分かるな・・
でもきっちりしてるな。外ではなりきってる・・オタクに・・
「あっ!愛しの柴ちゃんなりよっ」明智
「おお~早起きは三文の徳でありますね。イェイっイェイっ」赤羽
きもい・・通学のカバンはアニメの紙袋だ・・てかダサイ・・
その後もこちらに向かいながら・・
「運命かな?運命かな?」
「告っちゃえよっ。」
「でも、ここで(一年の出だし)告って、フラれたら・・」
「後三年間気まずいよな・・」
聞こえてるよ・・バカヤロー・・
柴ちゃんなんてすでに鳥肌立ってるぞ・・
そして、まったく不自然に・・
「お・・おはようっ偶然だね」
「う・・うっす・・」
「・・おはよう・・」片瀬
「・・ぉはよぅござぃます・・」柴
こりゃ告るな・・
「え~・・・
・・・実は・・・入学した時から・・」明智
「グビっ・・」
結局告るんだ?おもしろいから私はコーヒー飲みながら見てたんだけど・・
「ずっと好きでしたっ!付き合ってくださいっ!・・・片瀬さんっ!」明智
「ブーーーーーーーっ!!!!」
思いっきりコーヒー噴き出したじゃねぇか・・
「ん?っんん?」明智
そして何だぁ?そのチョイ自信あるよぅ~・・的な顔は・・
何か、まゆげクイクイ動いてるし・・きもい・・
「・・・めちゃクソごめんなさいだよ・・バカヤロー・・・」片瀬
「えええ!ダメかぁ~しょぼ~んなりぃ・・」明智
「ぶははははフラれてやんのぅ~
じゃあ、俺も勇気を振り絞って・・柴ちゃ・・」赤羽
「ごめんなさいっ!!!」柴
(早い・・・)片瀬
(声でけぇえ・・)明智
(もう少しで、唾まで吐かれそう・・)赤羽
「・・・・・・・・ペっ・・」って柴ちゃんが勇気を振り絞り。
「おお~柴ちゃん、よくやった!」片瀬
さすが秋高生っ。
でも・・
「萌えぇ~」明智
「やっぱ、かわいぃいな柴ちゃんは。また告ろ~」赤羽
ダメだこいつ等・・
「よく告れたな?」片瀬
「俺は片瀬にゃんに告白したんだよ!バカヤローの方じゃねえよ」明智
「そういえば、二人とも通学が早いのは、もしかして・・」赤羽
「うんっ。」柴
そうだね・・
学校の門まで来れば、こんな朝早くから・・
「シュっ・・シュっ・・」
「おはようございまーーすっ!」明智
「おはようございますっ先輩」赤羽
「おはようございますっ」片瀬
「おはようございます」柴
「ん?うん一年ね。おはよう」
秋高のアイドル、三年の先輩のいつもの日課の・・
「俺達も掃除手伝いますっ」明智
「いや~早起きはいいですよねぇ~」赤羽
「へへっ私も~。お前等は、あっちやれよぅっ先輩の近くに寄るなっ」片瀬
「私が、ちりとり持ちますっ」柴
「ははは、いいからいいから。みんなでね」
みんなこの人に会いたいから早く学校に来たんだ。
この先輩は誰よりも忙しいのに一番に学校に来て掃除してる。
尊敬できて、後輩の面倒見もよくて、
そしてキャバ嬢でも六本木で超有名で、不良でも超有名で・・
何より、ちょっと前にあった伝説の新時代抗争の主役達だ。
「そうそう・・あの時ね・・」
「おお~」
「すげぇ・・」
「ああ、あれはね・・」
「おお~」
「リアル~やっぱ当事者は・・」
掃除しながら、色々とお話聞かせてくれる本当にいい先輩だ。
「さあ、今日も一日がんばろうね」
「はいっ。先輩またお話聞かせてくださいね」片瀬
「へへ・・憧れてますんで、がんばってください」柴
俺達は先輩って呼んでるけど、有名な不良やアウトローの重鎮達からは・・
「リオ~、ちょっと校長室までっ」あきな
「あっはいっすぐに!」リオ
新時代や六本木では、リオって名前は有名だ。
「・・・おお・・進藤先輩校長に直で呼ばれてる・・すげえ」明智
「てか、校長早い・・もう居たんだ」赤羽
「・・あれまだ帰ってないの。まだ寝てないんだよ校長。」片瀬
「私もたまに呼ばれるよ・・あれ校長室でずっとゲームしてるの」柴
ゲームで悩んだ時(行き詰った時)に呼ばれるみたい・・
ここどうするの?アイテムどこぉ?・・って。
勿論柴ちゃんが呼ばれるのはガンダム系のゲームの時だ。
校舎に入る前に、まだ私達が見てるのに気づいてるのか・・
「スッ・・」
「おおー」
「へへっ」
こちらも見ずに、軽く手をあげて去って行く。
やっぱ新時代の人達はかっこいいや。