ラスト7秒のハヤブサ
後輪のタイヤからの白煙が、
テールランプに照らされ赤い煙となり尾を引いて行く。
「あの人が集まってる所っ!」片瀬
「分かってるっ!」赤羽
ここは俺達の餌場だ。隅から隅まで理解してる。
7・・・6・・・
「ガチっ!」
「クンっ・・」
ギアを上げる度に車速が伸びていくこの感覚。
アクセルは緩めずに、
絶妙なクラッチワークで時間のロスを防ぐ。
この自分の意思も無視して、
前に前に行こうとする単車のこの感覚が好きだ。
単車の加速に取り残されそうになるのを、
体重すべてを単車に合わせ押し込んでいく。
でも、どこだ?
どこに行けばいい?玄関前でいいのか?
「早くしろぉおおお!!」
「急げぇええええええ!」
分かってる。さすがに焦ってるけど、まだ冷静だ。
「ギュっ!」
もう一度掴み直した強すぎず弱すぎない温もり。
後ろからまわる片瀬の手の感覚もよく感じ取れてる。
もう片瀬は叫びもしない。ただ委ねている。
5ぉおおおお・・・
後少しっ。すでにアクセルは目一杯。
ただ一つ悩むのは、ギアがもう一段上げられる事。
「ウォナアアアアアアアア!!!!」
躊躇は後悔に変わる・・
エンジン音が変わった。
もうそのギアの回転数が上限に達した悲鳴の音。
一瞬のミスさえ許されない・・
上げるべきか?このままか?
これがもう少し手前なら躊躇なく上げていたが・・
微妙な距離・・
アクセル緩めずダイレクトで入れたとしても、
僅かな時間ロスは出るはず。
4ぉおおおん・・・
どこだ?ライン引いてくれっ。
ここに来れば出頭完了と明確なラインを。
あ・・59秒までだっけ?
じゃあ、1まで?
0になったら・・・
俺達の詰み・・罪・・
3ぁあああん・・・
へへ・・見られたかな?
岩永さんとか交差点に居たな。
でも、良かったでしょ?
みんな、ここで明日を夢見て、
時代時代で壮絶な恋に踊ったと思うけど・・
俺達の恋も・・・
この時代のこの六本木の夜も・・
最高・・・。
2ぃいいい・・・
うっ!!階段っ!
そう・・数段の階段のむこうの扉だ・・
友たちがここっ!ここぉ!ってジェステャーしてくれてる。
あそこがラインだ・・・あのガラス扉のむこうが。
よし・・行こう。
「もう単車ごとっ突っ込めぇええ!!」木場
「うおおおおおおおおおおお!!」赤羽
「ガチっ!」
「クンっ・・」
1・・
「ドギャッ!!!!!!!!」
階段に直撃する前輪に後輪から宙に浮く・・
それでも前に進もうとする力は止まることは無い
「ドガシャァアアアアアン!!!!!!!!」
奇麗だ・・
飛び散るガラスに六本木のネオンが反射する
この俺が・・
ハヤブサが・・・六本木の夜に・・
舞ったんだ・・・奇麗に・・
最後に・・
お互いが伸ばしたその手に触れる事も出来ぬままに・・




