神高の咆哮(方向)。
「キ~ンコ~ンカーンコ~ン」
授業の始まりのチャイムが鳴れば・・
「んだよっ、もう休憩終わりかよ・・」テシ
「とっと授業やれよ!おっさん」
「あ・・おうっ。じゃあ・・」渡辺オーナー
「お願いします」担任
これが最後の授業・・
「ガラッ・・」
「んっ?」渡辺オーナー
教室に入ってくる学校の理事・・爆撃派閥の幹部達。
「・・お気になさらずに・・」幹部
「ええ・・私達は後ろで・・」幹部
先ほどの渡辺のように後ろの方で授業を聞く幹部達。
これが、どちらなのか?・・・
下手な事を生徒達に教えるな・・の監視なのか?
素直に最後であろう渡辺の言葉、心を受け止めに来たのか?
「では・・」渡辺
生徒達も悪ぶってはいるが一様に緊張はしている。
腐っても鯛というか・・
「まず・・俺達の時代から・・散っていった友の・・」渡辺
「おお・・」生徒達
めったに聞ける話ではない。
この渡辺も伝説の抗争や時代を生き抜いて来た主役達の一人だ。
熱く語る抗争。時代時代のカリスマ達・・
渋谷・・六本木・・
何より・・
「あの時の熱い気持ちを思い出せば、今もこの胸が焼け焦がれそうで・・」渡辺
熱い感情・・
死んでいったカリスマ達の話では涙をボロボロとこぼしながら・・
熱く・・不良とはこうあるべき・・
いやっ、爆撃とはこうあるべきと。
誇れる先輩達の生き様・・
そして・・
「いいか、喧嘩ってのはな・・」渡辺
勝てばいいってもんじゃない・・
何の為にどう戦い・・
守るべき物(者)を守り・・
結局は・・
「負けてもいいじゃないかっ。負けても華は咲く!
それでも守りきった物があるじゃないかっ」渡辺
プライド・・硬派・・正義・・威厳・・チーム・・
だが・・
「・・・・・・・その話は別にいいや・・」テシ
「・・・・・・ふあぁ・・」
「・・・しーん・・だな・・」
響かない・・
この今の生徒達には。
「・・・・・・・はは・・」渡辺
どう伝えればいいのだろうか・・
いや、伝わらないのだろうか・・
「・・・渡辺オーナー・・」幹部
「ん?ああ・・どうした?」渡辺
この微妙な空気に幹部が割って入り・・
「・・・・私達は、良くも悪くも爆撃から学びました・・」幹部
「ええ・・俺達・・いや、俺も・・」次郎
「『俺』じゃなくて、『俺達』でいいよ次郎ちゃん。俺達もだ。」テシ
ここに居る全員が同じ考えだ・・
十二分に熱き心や伝統の意味もよく分かる・・
だが時代時代で負けてきた爆撃・・
失ったカリスマ達・・
「『ひとみ』さんに『キム』さん・・他にも・・」幹部
死んで行ったカリスマ達・・・
「・・・うん・・俺達の遥か先に居た飛び切りの不良達でも・・」渡辺
負け戦の続いた爆撃。いつも最悪の結果で・・
「それでも、輝いてた!」渡辺
不良として。ただそれだけでいいじゃないかと・・。
「・・・違います・・」幹部
「ええ・・俺もそう思います・・」次郎
「・・何が?」渡辺
守るべき物じゃない・・
「・・・奪わなければ始まらない・・いや生きていけない」幹部
「ええ。ただ勝つのみで道は開かれる」次郎
攻めるっ。
いや、言い換えるなら・・
「これからは結果を・・」幹部
「ええ・・俺も負けてきたから分かるんです・・」次郎
「俺達も・・」テシ
だから・・
「硬派とプライドは、もう今の時代では重荷なだけ・・」次郎
「どんな手を使ってでも勝つ・・いやっ勝ちたい!」テシ
「そう・・だから、俺達爆撃派閥と、この神高は・・」幹部
「新時代に生きるっ!!!!」
「・・・・・・うん・・」渡辺
弱弱しい返事しか出来ない。
嘘でも逃げでもなんでもいい・・
使える物は何でも使って勝ちに行く。
「・・・でも大丈夫です渡辺さん」幹部
「・・・何が?」渡辺
少しうつむいている渡辺に話しかける幹部。
「ここに居る生徒一人一人、渡辺さんが面接したじゃないですか」幹部
そう・・
ここに居る生徒達は、そのほとんどが、いじめられっ子で、
体も貧弱で今まで不良にヤラれて悔しい思いをしてきた連中ばかりだ。
だけど・・
「うん・・。アウトローの情熱か・・」渡辺
「ええ。次郎しかり、すべての生徒達が・・」幹部
今の時代では誰にも負けないほどの熱きアウトローの情熱を持っている。
「・・・・うん・・・」渡辺
一人一人の顔を見れば面接を思い出す。
皆、熱くアウトローへの情熱を語った。
有名な不良の名前を挙げ、憧れを熱い眼差しで。
こんな自分だけど、いつしか時代の主役達になりたいと。
だが・・耳に入ってくる最近の神高の悪行の数々は・・
「・・・やってる事は悪党・・いや、ただのクズだ」渡辺
だが不良で有名になるには絶対に必要な能力だ。
弱い者にどれだけ非道、無情になる事が出来るか・・
これで神高の地位というか、色を纏う。
奴等はヤバイ・・って思わせるだけで、かなり有利に事は運ぶ。
「キ~ンコ~ンカーンコ~ン」
中途半端に授業が終わる・・
(俺が古い・・。確かに結果も出てないしな・・)渡辺
そう俺が悪い・・
硬派を押し付けるのが。現役時代も一番汚かったのに・・
それに、偉そうに教えるほどの人物でもない・・
(所詮俺は爆撃の残りカス・・)渡辺
たまたま激動の時代に生まれて、
たまたまキャラで目立ってて主役達の近くにいただけで、
たまたま生き残っただけ。
いや、誰よりも臆病だっただけ・・
そう・・最後に・・
これだけは・・
「臆病さが命を繋ぐっ!」渡辺
これが最後の教え・・
勝つよりも・・
生き残れ。
熱きアウトローの情熱達よ。