姫羅の話
ベットに座った姫羅は話を始めようとしたかに見えた、が
「てか、いつまでそこでしゃがんでんのよぅ。軌羅ちゃん。ほら、こっち来ないと話しづらいでしょーが!」
と言ってベットを叩き、軌羅にベットに来るよう指示をした。
軌羅もその言葉にはっとして遠慮なく姫羅の隣に座った。
実際に座るとますます絵にかいたようなベットだ。
まぁ、軌羅が一人暮らしをする前、つまり家で暮らしていたときのベットとあまり大差はないのだが。
(それにしてもこの人、本当にお姫様っぽくない。変に馴れ馴れしいし。)
先程からの姫羅の言動を思いだし軌羅はつくづくそう思い、つい怪訝な表情になる。
しかしそんな軌羅とは正反対に姫羅は軌羅がベットに座って何故か少し満足げな表情を浮かべた。
(?)
軌羅はそれに気づき、ますます怪訝な表情になる。
「あのぉ…姫羅さん??」
軌羅が初めて姫羅の名前を呼ぶ。
(自分で言っといて何だけど、変な感じ。)
「あー、はいはい。ごめんねー。うん、初々しくていいなぁ♪あ、つい本音が(笑)」
名前を呼ばれた姫羅はかなり楽しそうだ。
説明が全然始まらない。
(時間無いとか言ってたのに。それにしてもなんだかおしゃべりだよなぁ、あたしとは正反対。)
軌羅はついそんなことを思った。
「えっと、まず説明を…」
「そうだった、時間ないんだ。」
今まで忘れていたのか姫羅は思い出したように言う。
そしてやっと、姫羅の説明が始まった。
まずね、薄々感付いてると思うけどここは夢じゃない。
ここは、異世界。
パラレルワールドともいうよね。確か。
あなたはね、各パラレルワールドに行くことができるんだよ。
その様子だと初めて発動したみたいだけど。
そしてあなたの存在はそのパラレルワールドの生物には決して認識されることはない。
ただ、各パラレルワールドにいる″自分″を除いてね。
あなたが前に来たときなんかあたしすごく驚いたもん。
あー、なんか懐かしいなぁ。
あなたにとっては今が初めてのパラレルワールドトリップだけど、あたしはあなたに会うのは2度目なんだもん。
それも、これとおんなじ説明をあなたがしてくれてた。
姫羅はそこまで言うと話を一旦止めた。
軌羅はかなり突飛なこの説明を理解するのに数秒かかった。
それでも早く理解出来たと思う。
そして口を開いた。
「えっと…それは…つまり、あたしには異世界、つまりパラレルワールドに行くことができるという特殊能力があって、ここはパラレルワールド。時系列はバラバラであたしはこれが初めてだけど、姫羅さんは過去にこれからの、つまり未来のあたしに会ったことがある。ってことかな?」
軌羅は脳内で理解したことが正しいか姫羅に確認した。
「うん、そゆこと。さすが、飲み込みが早いよねー。」
「まぁ、正直まだ現実的に受け止められないけど…。」
うなずきながら感心する姫羅に軌羅は戸惑いながらも返答した。
そしてこう続ける。
「それで、各パラレルワールドでのあたしの存在がそのパラレルワールドの″自分″以外に認識されることがないってことは……。」
が、そこまで言って言葉に詰まった。
軌羅にとってその事が一番受け入れがたかったからだ。
それを察したのか、事前に知っていたのか姫羅が答える。
「うん。あたしはあなたで、あなたはあたし。まぁ、正確にはこの世界の″キラ″だけど。」
姫羅はそう言って軌羅の目を真っ直ぐ見た。