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短いお話  作者: ねむる
9/10

僕を見て

 家が隣同士の幼馴染

 姉弟と言う関係から脱したい実樹と乙女ゲーにはまっている莉友香の話


「私が主人公ちゃんなら、実樹(みつき)は恋のアドバイザーのゆう君ね。」



 俺が今日、幼馴染の莉友香(りゆか)の家に遊びに行って言われた第一声がこれだった。




 俺と莉友香は家が隣同士の幼馴染。

 両親が元々親友同士で家族ぐるみの付き合いが多く、物心つく前から常に一緒だった。

 部屋も窓を開ければ互いの部屋が向かい合うように窓を開けており、時々互いの部屋から窓を飛び越えて遊びに行ったり、窓越しに話したりすることもしばしばで。

 昔から、姉弟(きょうだい)の様に過ごしてきた。


 でも……。


 俺は、数年前――調度、莉友香が高校に上がった時から彼女の事を一人の女として意識し始め、いつ、莉友香が彼氏なのって、男を連れて来るかと不安な気持ちを抱えて過ごしていた。

 その事を考える度に、俺は何で莉友香より二つ年下なのだろうと、考えてもどうしようもない気持ちに苛まれていくのであった。

 そんな俺の気持ちとは裏腹に、莉友香が男を連れて来る事はなく。

 というか、彼女が俺に彼氏なのと見せてきたのはゲームの男で……。

 彼女は今、女子高生の間ではやっている乙女ゲームとやらにハマってしまっているらしい。

 現実の男を見ることはないので一安心ではあるが、それはそれでどうなんだろうと思う所がないわけではない。

 だが、これは千載一遇のチャンスと考えを改め、彼女に今日も現実の男――つまり俺を見るよう差し向ける為、部屋を訪れたのだが……。

 突然、言われてしまったのは先の言葉で。

 俺はどうすればいいか言葉が見つからず、ただ茫然と窓に腰掛けて、今日も部屋で乙女ゲームを楽しんでいる彼女を見つめるのであった。


 無言で、ただ画面を見つめてうっとりとする彼女。

 そっと覗きこめば、現在何かのワンシーンの様に、綺麗な顔の男が苦しげな表情で寒そうな海に佇んでいる。

 耐えられないって、何が?

 画面に書かれた文字を読んで、それまでの経緯が全く分からない俺はふと、そう考えるのであった。



「やっぱ、このシーンは名シーンよね……。」



 ポツリ、莉友香がそのシーンを見ながら声を零す。

 とにかく、どういう状況なのかはよくわ分からないが、この場面は莉友香にとって名シーンらしい。

 彼女はそれからも暫らくそれを眺めた後、再び手を動かしてゲームを進め始めた。


 って、おいおい。

 その男、どっか行ったぞ?

 放っといていいのか?

 ……よくわからん。


 俺は視界からそのゲーム画面を外して、ふと莉友香の部屋を見渡した。

 そして、彼女が毎日眠っているだろうベッドに近付き、バフッと顔面からダイブした。

 少し鼻が布団に擦れて痛かったが、血は出てないだろう。

 そう考えていると。



「実樹ぃ、布団汚さないでよねぇ~?」


「……汚すかよ。」



 ゲームをしたままで視線を画面から離さず、間延びした彼女の言葉に、俺は少し拗ねたような表情でポツリと零す。

 すると。



「今のは、ツクシっぽいね。」


「…………。」



 ツクシって何だよ?

 いや、人名だよな?きっと。

 ってか、ツクシって名前、可哀想過ぎるだろ……。

 俺は知りもしないツクシってやつの名前に同情した。

 っとと。

 そんな事をしている場合じゃない。

 今日こそ莉友香に俺を見てもらうんだ。

 えっと……どうすればいいんだっけ?


 ……………………。


 そう言えば、莉友香は乙女チックな展開とか王道な展開とか好きだって、以前彼女にリサーチした時に聞いたな。

 あ、あと、ショタが好きって聞いたっけ?

 でも、俺は別にショタではないし……流石に、小学生みたいな真似はできん。

なら、それっぽくしてみるか?

 俺らしくはないけど……。

 考えて、俺は布団にうつ伏せのまま身体の向きを変え、ベッドに背もたれしている彼女に近付いた。

 そして、ヒョイッと、彼女の手に持っているもの――ゲーム機を背後から奪い取った。



「ちょっ!?

何すんのよ、実樹!

今良い所なの、邪魔しないで!」



 怒ったように――というか、実際怒っているのだろう彼女の顔を、俺は上目づかいで見上げ、むくれた表情を彼女に向けた。



「折角遊びに来たのにさ、ゲームばっかして遊んでないで、俺と一緒に遊ぼうよ。」



 念を押すようにコテンと小首を傾げてみると、莉友香ははぁ~っと溜息を吐いて布団に顔を埋めた。

 そして。



「何の真似なのよ……ムカつく!

私はゲームがいいの!!」



 怒った彼女に、俺はこれ以上怒らせて機嫌を損ねたくなくて……。



「なら、二人で出来るゲームしようぜ?

婆沙羅、二人でしよ?

俺、政宗でプレイするからさ、莉友香は幸村でやろうぜ?

蒼紅共闘しよ、な?」



 俺がそう提案すると、怒りからか頬を赤く染めた莉友香が仕方ないなぁとPS3の準備を渋々といった具合にはじめてくれた。

 とりあえず、変に怒らせる事がなくて良かった。

 もう少し、上手い作戦を練ってから仕掛けていこう。

 俺は改めてそう考えながら、彼女のゲームの準備を手伝うのであった。



補足。

実はもうすでに、莉友香は実樹の事を一人の男として見ていたり(笑)

布団に顔を埋めたのは、照れ隠し。

実樹が怒りから顔を赤らめていると思っていたのは実は間違っていて、照れていたから。

彼の思いが通じる日は近い……かな?

ちなみに、莉友香がしてるゲーム……分かる人いますか?

まぁ、分かる人にはわかるゲームっすね。

此処まで読んでくださりありがとうございました。


敬具


2014/01/13  ねむる


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