拝啓――。
特に設定なしです。
ポツリと、考えの赴くままに書いた話。
切ないだけの話。
超短いッス……。
それでもよろしければどうぞ。
遠く、月が踊る空を見上げ、秋の夜長を一人楽しむ。
ここには今、僕しかいない。
日中、雨が降っていたからか地面が少し湿っていて、僕が立っている道の脇――すぐ傍の草むらからは微かに草木の匂いが漂っていた。
そんな、田んぼに囲まれた細い道を一歩、踏み出す。
ジャリッと音が鳴って、靴が鳴いた。
その音が聞こえてきた足元を、ジッと見つめる。
先ほど、草むらの中を少しだけ歩いたからか、靴には泥と枯れ草がくっ付いていた。
それを拭うこともせず、僕はまた一歩、もう一歩とゆっくり歩き始め、人っ子一人いないこの道を歩く。
月に照らされて現れた僕の影と一緒に、散歩の続きを楽しむ。
少し前までは、この散歩にはもう一組の影と人物がいた。
その人は、もう、僕の傍に居ない……。
その事を自覚するとおもに、懐かしい様な、切ない様な感情が胸を占める。
そして、まだ癒えていない傷がズクリと僕を襲った。
あの時、僕がきちんと気持ちを伝えていれば――。
あの時、僕がもう少し早く行動を起こしていたら――。
考えてももう仕方がない事ばかりが頭を過ぎり始め、軽く頭を振ってそれを頭から追い出す。
過ぎてしまった時間は、もう、戻る事がないんだ……。
目頭が熱くなり、鼻の奥がツンとする。
立ち止まって、一度強く目を瞑る。
そして、軽く深呼吸してから再び瞼を持ち上げ、前を見て歩き始めた。
そんな僕を癒やすように、月と夜風と僕の影が、ずっと僕について来てくれた。
それに少しだけ気持ちが落ち着いたから――。
「君の事、ずっと好きだったよ……。」
ポツリ、伝えられなかった言葉をその場に置き去りにして、僕は前へ歩き続けた。
此処までお付き合いくださり、ありがとうございました。




