しあわせ
「赤」は、小さな村に住んでいる。とても豊かな土地にその村はあるが、人口は三十人にも満たない。両親はともに健在で、村人たちも優しい。村の周りは深い森と険しい山に囲まれているので、外の世界のことはあまり知らない。
でも、「赤」は幸せだと思っている。
「青」は生まれてからずっとベッドの上で生きてきた。でも、TVもあるし、インターネットもある。欲しいものは全て与えてもらってきた。直接知っている場所は、この病室と窓から見える風景だけ。直接知っている人も、父さんとお医者様と看護婦さんだけ。この部屋から出たことはないけど、外の世界のことは、何でも知っている。
外の正解に想いを馳せているとき、「青」はとても幸せだと思っている。
「白」は、大学をサボってドライブに行った。可愛い彼女もいるし、親からたっぷり小遣いを貰っている。知りたいことは大抵知ることが出来るし、欲しいものも大抵手に入る。将来もそこそこの企業に就職できるだろう。特に不満も不安もない。
でも、「白」はいつでもつまらないと感じている。
結局、誰が一番幸せなのだろう。
世界を知らずに現状で満たされる。
手の届かない世界に想いを馳せる。
そこそこ不満も不安もなく生きる。
どれが一番幸せなのだろう。
そもそも幸せって何だろう。
そんなことを考えている自分が一番幸せなのかもしれない。






