第4回 張郃、冠礼の儀を行う
字も決まった張郃の冠礼の儀が行われることになった。
招待したのは、いつもの自警団の者たちである。
張景は言う。
「儁乂よ、すまんな。私に力が無いせいで、名士の一人も呼べない様な冠礼の儀になってしまった。」
「そんなこと、気にされることはありません。これだけの人が、自分の為に集まってくれました。自警団を率いる父上の息子であることを、私は誇りに思っています。」
この冠礼の儀は、完全に自警団の者たちの宴会の様相を呈してしまったが、張郃はそれでも非常に嬉しく感じた。
そして、一人の者が言う。
「そういえば、何で、字が儁乂、何だ。その理由を教えてくれ。」
張郃が答える。
「この儁乂という字は、父が付けてくれました。普段の暮らしにおいて、用いる文字ではありませんが、優れた人材が世を治める、と言ったような意味に通じ、私の名である“郃”と合わせると、才知と徳によって、人々をまとめて正しき道に導け、という意味になります。父上、私の理解で大丈夫でしょうか。」
「うむ。その理解で大丈夫だ。」
実は、張景は敢えて儁乂の字を付けた意味を張郃には伝えていなかったが、きちんと自分なりに調べ、咀嚼し、その名と字に誇りをもってくれたようだ。
張郃は今回の働きで、自分より年上である二〇代の者たちからも尊敬される存在となった。張郃はそれにおごらず、年上の者を立てたので、いよいよその評判は高くなった。
そして、張郃に稽古をつけてもらいたいという者が殺到したことから、しばらくは槍の師範として、この鄚県で暮らすことになるのである。




