第37回 張郃、西方の総大将となる
張郃は翌日、再び曹操に呼ばれた。
曹操が言う。
「儁乂、夏侯淵亡きあと、西方を任せられるのはお前だけだ。本日より、西方の総大将としてつとめてくれ。」
「曹操様、お言葉ではございますが、私は敗軍の将でございます。その様な者が、夏侯淵様の後を継ぐというのは・・・。」
「儁乂よ、これは軍令であり、お前に断る権利は無いぞ。そもそも、お前を夏侯淵に付けてより、その次はお前、と決めていたのだ。」
「・・・。わかりました。軍令とあらば、受けさせて頂きます。」
「よろしく頼む。そしてお前の補佐には、郭淮を付ける。これがどういうことか、わかるな。」
「はい。自分の後は、伯済である、ということですね。」
「そうだ。若いが、私はかなりの期待をしている。引き続き、西方の安定につとめてくれ。」
曹操は、漢中はまことに惜しいが、劉備にくれてやる、ということを決めた。張郃の役目は、漢中より北方に劉備軍が侵攻してこない様に防衛線を構築することである。
張郃は、自分の補佐に正式に任命された郭淮に言う。
「私はここで伯済、はっきり言っておく。私の後、この西方の総大将を任されるのは、お前だ。そのつもりで、日々の任務にあたってくれ。無論、目の前の仕事に忙殺されることなく、大局的な視点で全体を俯瞰することが必要だ。私の眼では西方が目一杯であるが、伯済、お前はこの中華全体の事を考え、その上で、西方に必要なことを取捨選択できるようになってくれ。」
「ありがたいお言葉、感謝いたします。この伯済、精一杯つとめさせて頂きます。」
実際、張郃と郭淮が西方の防衛線を担当することにより、劉備軍の侵攻は一時的に止まり、その隙の無さが証明された。
そして、とうとう一人の英雄がこの世を去ることになったのである。




