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張郃  作者: 涼風隼人


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28/40

第28回 張郃、潼関の戦いに参戦をする(後)

 曹操は陣頭で、大声で語りかける。

 「文約よ。昨日の文は皆と見てくれたのか。」


  馬超が現れた。

 「曹操よ。お前が韓遂を抱き込んだのはわかっている。韓遂の身柄は拘束した。お前の策にはかからんぞ。」

 

 「馬超よ。先日は取り乱したが、本日雌雄を決しようではないか。」

 

 「望むところだ。参る。」

 

 両軍がほぼ同時に動き出した。

 

 馬超は先日同様、一騎駆けの勢いで突進してくる。

 

 今回は、最初から馬超には許褚を当てることにし、許褚も馬超に向かって突進をする。

 

 激しい打ち合いが展開された。

 

 今回は両軍、見とれることなく、各々の戦いが繰り広げられる。夏侯淵が張郃に言う。

 「儁乂よ。長坂での文遠との強行軍、非常に見事であったと聞いた。しかし、強行、速攻は俺の本分。遅れずについて参れ。」

 

 「わかりました。遅れをとらぬよう、必死に走ります。」

 

 夏侯淵は、初動はゆっくりとしていたが、その速さは徐々に加速していく。張郃は感覚的にこのままでは追いつけなくなる、と感じ、負けじと一気に加速をした。徐晃も遅れじとついてくる。夏侯淵を中心に、その両翼、左翼を張郃、右翼が徐晃と、まるで一筋の大きな矢となり突撃をしていく。

 

 この矢の前に立ちはだかった敵は、ことごとく殺されていく。瞬殺と言ってよい。反乱軍の動きに乱れが生じた。敵方に総大将の韓遂がいれば、早めに対応をしたのであろうが、韓遂はその身柄を拘束されており、戦場にはいない。

 

 馬超は、自分の武勇がこの反乱軍を支えていると自負しているが、年上である韓遂が様々な調整をして支えていたことに気付いていなかった。反乱軍全体の動きが、異常なほど鈍い。

 

 馬超は許褚と撃ち合いながら、自分たちに戦況が不利に動いていることで、ようやく韓遂の重要性を理解したとともに、あの文は曹操の策略であるということを悟った。

 

 馬超は、許褚との打ち合いを中断し、全体の立て直しを図るが、時すでに遅く、反乱軍の兵は己の命が大事と、一斉に退却を始めてしまった。

 

 馬超は急ぎ自分の軍営に戻り、韓遂を解放、韓遂を総大将に復させ、態勢の立て直しを依頼するが、もうすでに間に合わない状況であり、そのまま全軍退却となった。

 

 曹操は、この戦でどうしても押さえたかった拠点がある。「安定」である。安定は涼州の入口ともいえる場所で、今後、西方の経営をしていく上で、長安と共に重要な拠点と考えているからである。

 

 安定を支配しているのは「楊秋」であり、今回の反乱にも参加をしている。曹操は夏侯淵に伝令を出した。

  「他の敵はこちらで対応する。妙才は、徹底的に楊秋を追い詰め、安定を取るべし。」

 

 この伝令を受けて夏侯淵は改めて張郃と徐晃に言う。

 「曹操様の伝令聞いたであろう。安定を取るには、速さが一番重要だ。強行軍の構えで行くが、ついてこられるか。」

 

 二人は、頷く。

 

 夏侯淵が先鋒全軍に指示を出す。

 「これより、強行軍で楊秋の追撃を行い、安定を取る。その道のりは長いが、ついてこい。脱落は許さん。」

 

 夏侯淵は徹底した追撃戦を展開、そして尋常ではない速さで安定に到着すると、勝負はここまでと楊秋は降伏を願い出た。曹操は降伏をした楊秋を重用した。そのことにより、一部の軍閥や豪族も、次々と降伏を申し出てきた。それでも反抗を続ける者は、容赦なく夏侯淵、張郃、徐晃による徹底的な掃討戦が行われ、ここに西方の経営は安定することになったのである。


 張郃は、長坂で張遼とともにした強行軍が最速であろうとひそかに自負していたが、更に凄まじい速さを見せる夏侯淵の指揮ぶりに舌を巻き、尊敬の対象となった。


 これ以降、夏侯淵を中心とした西方担当の将軍として、張郃は更に飛躍していくのである。

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