第26回 張郃、潼関の戦いに参戦をする(前)
「曹操軍、漢中の張魯討伐に向かう。」
以前より喧伝していた名目で、曹操は出陣に踏み切った。
予想通り、涼州の韓遂と馬超、関中の軍閥、豪族たちが動き出し、反乱を起こした。
韓遂たちは、関中の入り口とも言える「潼関」に拠点を築き、曹操軍を待ち構えた。反乱軍は総勢一〇万の大軍である。一方の曹操軍は、七万の精鋭でこれに挑む。
曹操が涼州出身の軍師、賈詡に聞く。
「文和よ。涼州、関中の者、皆勢ぞろいし、約一〇万の大軍であるが、私から見ると烏合の衆、と感じるがどうか。」
「はい。確かに、まずは集まっており、完全にまとまっているわけではありませんので、その様に考えることもできますが、涼州、関中の兵の精強さは侮れません。よって、精鋭と相対する、と考えて臨んで頂きたく思います。」
「わかった。涼州出身のお前の考えに従おう。」
すると、報せが入る。何の前触れもなく、反乱軍が仕掛けて来たという。こちらは、先鋒の夏侯淵軍が迎え撃つ。
激闘である。賈詡の言う通り、西の兵たちは精強そのものであり、馬の数もこちらより揃っている。
敵は馬超自らが先頭を切って、こちらに押し寄せてきたという。総大将の一人が陣頭に立ったことで、反乱軍の士気は一気に高まりを見せた。
夏侯淵軍に綻びが生じる。副将の張郃と徐晃がその穴埋めをするが、敵の強さと速さが想像以上であり、間に合わず、埋められない穴がすっぽりと現れた。
そこを果敢に馬超はものすごい勢いで突撃をかけ、疾駆していく。馬超が目指しているものはただ一つ、曹操の首なのである。
まずは緒戦と考え、多少の油断が曹操軍にあったところを見事についた格好である。
馬超の速さは衰えない。そればかりか、ますます速くなっているかの様であった。
そして、とうとう、曹操の本陣にたどり着く。
曹操はさすがに慌てた。まさか、重厚さを誇る自分の陣がいとも簡単に破られるものとは思っていなかったのだ。
ふと、馬超と目が合った。
「お前が、曹操か。」
馬超がそういった様に聞こえた。恥も外聞もない。ここは逃げるべきだ、と曹操の本能がうったえる。
曹操の馬も名馬と言えるが、馬超のその馬の速さから逃げ切ることが出来ない。じりじりとその間隔は詰まっているのがわかる。そして、馬超の間合いに入ってしまった。
馬超の槍が一閃、曹操を捕らえる。曹操の兜が飛ばされた。すんでのところで、槍をかわした。二撃目が来る、というところで、曹操の親衛隊長である「許褚」が介入した。
「曹操様、早くお下がりください。」
許褚は絶叫しながら、槍を奮う。馬超と互角に打ち合う。
互いに譲らない。この一騎打ちに、周りの兵たちも戦いをやめて見とれたほどの戦いとなった。結局、何合打ち合ったのか、お互い打ち合うのをやめて引き分けとなった。
この緒戦、命からがら逃げた曹操は、本陣を大きく後退させた。緒戦は、反乱軍の勝利となった。
「正面から戦うのは得策でないな。」
曹操は思い、軍師の賈詡に何か策を考えよ、と命じた。
するとすぐに賈詡は言う。
「策はございます。ただ、曹操様、自らが動いてもらうことになりますが・・・。」
「ほう、聞こう。」
賈詡は、策のあらましを曹操に伝えた。曹操が言う。
「流石だな、賈詡。早速、実行をしよう。」
こうして、戦いは次の段階に進むのである。




