第24回 張郃、赤壁の戦いに参戦をする(後)
夜になった。
黄蓋投降の約束の時間が近付いてきている。
曹操も出てきて、対岸を見つめている。
すると、ゆっくりとこちらに向かってくる船団がある。
曹操が言う。
「見ろ、あそこに黄蓋がいるぞ。」
周りを囲む参謀陣、将軍たちが頷く。
真っ暗闇の中をゆっくり、ゆっくりと近付いてくる。
その時である。船団が急に明るくなった。そう思った瞬間、船団はまるで炎の塊となって、こちらに向かってくる。
曹操が叫ぶ。
「皆の者、下がれ!周瑜と黄蓋に謀られたぞ。この一帯は間もなく火の海になる。全員、退却だ!」
曹操の言う通り、辺りは炎に包まれた。まずは船団が焼かれ、その炎は地上にも延焼してきた。疫病で体の自由がきかない者たちは、逃げ遅れて焼死した。動ける者たちは、一目散で退却を開始する。
ここで、張郃の出番である。曹操に言う。
「曹操様、ここは私にお任せください。必ずや、呉軍の進撃を食い止めて見せます。」
「しかし、お前の所の兵もほとんどが疫病ではないのか。」
「確かにそうですが、動ける者も増えてまいりました。ここはまず、お逃げください。」
そして、ここに張遼も現れる。
「曹操様、ご退却を。私も儁乂と共に、殿をつとめます。」
「おお、我が二張が殿をつとめてくれるか。わかった。必ず、生きろ。死ぬことは許さんぞ。」
二人は馬上で、拝礼した。
張郃が言う。
「水上の退却は文聘殿に任せるしかない。俺たちは、地上部隊を一人でも多く帰らせねばならん。」
「ああ。まずは江陵までの戦いだな。」
水軍、地上部隊共に、一番近い拠点である江陵を、まずは目指しての退却であった。
張郃と張遼は殿として獅子奮迅の活躍をするものの、動ける兵がやはり少なく、苦戦を強いられる。そして、「華容」まで下がり、そこに防衛拠点を構築して再び、周瑜軍に対抗する。
この華容で、かなりの時間を稼ぐことが出来たが、張郃、張遼の身も危うくなり、江陵を目指して退却した。
江陵の守将は、曹仁であった。
曹仁の話では、曹操は無事江陵までたどり着き、ここから北上して許都を目指して退却したという。
まずは、曹操が無事であったことを張郃と張遼は喜んだ。
そして、曹仁が言うには、張郃と張遼が戻ったならば、江陵を捨てて退却するように命じられているという。
二人は驚く。張郃が言う。
「曹仁様。この江陵は荊州の最重要拠点といっても差し支えないでしょう。ここをあっさり捨てるのですか。我々も残り戦えば、何とかなるのではないでしょうか。」
「張郃よ。お前の言うことはもっともだ。しかし、曹操様は江陵を捨てたとしても、我らの身が大切だとおっしゃった。それ故、命令通り退却することにする。」
「・・・。わかりました。」
こうして、曹仁、張郃、張遼は江陵を捨てて退却、その後、江陵は呉が領することになった。
そして、この戦いで一番損をしたのが曹操ならば、得をしたのは誰か。劉備である。
劉備は、曹操と周瑜軍が戦っている隙に荊州南部の四郡、「長沙」、「武陵」、「桂陽」、「零陵」を立て続けに攻略し、領有することに成功したのである。
こうして「赤壁の戦い」は終わり、荊州北部は曹操、中部は孫権、南部は劉備が領することになったのである。




