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張郃  作者: 涼風隼人


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第23回 張郃、赤壁の戦いに参戦をする(前)

 孫権が曹操の降伏勧告を正式に拒否、ここに戦いの火ぶたが切って落とされた。


 「大都督」に任命された周瑜は、将軍の「程普」とともに、水軍三万を「赤壁」に進出させ布陣、曹操はその北岸の「烏林」に布陣をした。その兵力は号すること四〇万で、実数は二〇万ほどであった。


 お互いにこれで向き合っての布陣となったが、どちらも動かずしばらく膠着状態が続く。


 周瑜の方では、評議では戦は兵数に非ず、と強く主張したものの、いざ、曹操の大軍勢、大船団を目の当たりにすると、実際に仕掛けるのは難しい状況であった。


 一方、曹操軍の方は、一見しての大軍勢を誇るが、その内情は、曹操が思っていた以上に疫病が蔓延し、大軍といえども使えない兵士が多いのが現状であった。


 この時、張郃はどうしていたか。

 張郃自体は問題なかったが、多くの兵が疫病に侵され、戦える状態ではなかった。張遼の軍も同様であった。


 両軍動かずのにらみ合いが続く最中のある夜、曹操に一通の文が届けられた。差出人は、呉の将軍「黄蓋」である。


 その文には、大都督の周瑜は無策であり、何ら打つ手がなくただひたすら滞陣しており、その事に多くの将兵が不満を抱えていて、まとまっていない。まずは、私の投降を受け入れて頂き、私が厚遇されているとわかれば、続々と降る者が出てくる、という内容であった。


 退却もやむを得ず、と少しばかり考え出した曹操に、この文は天から下された朗報であった。


 曹操は軍議にかけることもなく、黄蓋の投降を受け入れることにした。明日の夜、部下を引き連れ投降するように、と返書を認めた。


 この返書は、すぐに黄蓋に届けられた。そして、黄蓋は側近たちに言う。


 「我々は明日の夜、曹操様に降ることにする。そのつもりで準備をしておくのだ。下々の者には、まだ言うな。」


 この様子を、曹操が以前から送り込んでいる間者が確認をして、曹操に「投降の件、疑いなし」と報告をしたのである。


 実は、黄蓋の投降を信じたのも、黄蓋が現状に不満を持っている様子の報告を事前に受けていたからである。


 曹操は軍議を招集し、参謀と将軍たちに黄蓋の投降を受け入れ次第、荊州水軍を中心にして呉軍を急襲する作戦を伝えた。この作戦の中心となる荊州水軍を率いる文聘が言う。

 「曹操様。黄蓋というのは、宿将ともいうべき古参の将軍です。今回の件、本当に大丈夫なのでしょうか。」


 「文聘よ。お前も少し前までは、荊州劉表軍に文聘あり、と言われる存在であったではないか。しかし、今はこうして私のために働いてくれている。それと、同じではないか。」


 曹操の周囲を見渡せば、曹家、夏侯家の親族以外は、ほとんどが他陣営にいた者たちである。それ故、曹操は今回の黄蓋の投降したい、という申し出を全く疑っていなかった。


 今回の作戦において、張郃も張遼も船には乗らず、地上で待機という命令であった。


 「高覧の分まで、何とか前線で戦い武功を上げたかったのだが・・・。」

 張郃は、心中呟いた。


 「こうなったら、こちらの勝利を信じるまでだ。」

 こうして、間もなく、雌雄を決する戦いが始まるのである。

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