第22回 張郃、開戦を待つ(後)
魯粛は、夏口に到着し、劉備との面談を求めた。
すぐに許され、劉備の下に通された。挨拶もそこそこに、本題を切り出した。
「劉備様、単刀直入に申し上げます。我らが孫権軍と同盟を締結して頂きたい。」
劉備は、諸葛亮の方を向いた。諸葛亮が答える。
「孫権様は、曹操との戦いをお望みなのでしょうか。」
「・・・。実は、開戦論と降伏論、開戦論は私を含め少数派、多くの者たちは降伏論に傾いているのが現状です。」
「なるほど。それで、この同盟が締結することで、開戦に踏み切る材料にしたいと。」
「隠してもしょうがありません。率直に申し上げれば、そういうことになります。」
「劉備様、お願いがございます。」
「なんだ、孔明。」
「私どもと致しましても、今後の事を考えれば、孫権様と同盟を結び、曹操に対抗するのが一番理に適っていると思います。そこで、私は魯粛殿とともに柴桑に行き、孫権様を動かそうかと思います。」
「そんなことが出来るのか。」
「はい、自信はあります。どうでしょう、魯粛殿。」
「おお、それはありがたい話です。是非、ご一緒していただければと思います。」
こうして、諸葛亮は魯粛と共に、孫権のいる柴桑に戻った。
魯粛の帰着を受けて、評議が再開された。
もちろん、諸葛亮も参加する。
孫権が魯粛に聞く。
「魯粛よ。劉備殿との同盟の話はどうなったのだ。」
「はい。本日はここに劉備様の参謀をつとめる諸葛亮殿をお連れしました。」
「ほう、この方があの有名な伏龍、諸葛亮殿か。」
「お初にお目にかかります。諸葛亮と申します。本日は、魯粛殿に無理にお願いをして、こちらの評議に参加させて頂きました。」
「それで、劉備殿はどの様にお考えなのだろうか。」
「我が主は、曹操との戦いをどんな劣勢になろうともやめるつもりはございません。故に、降伏するという選択肢はございません。」
「しかし、現実問題、曹操はその気になれば数十万の軍はすぐに動員できるのですぞ。」
「承知しております。しかし、それでも降伏する気は無いとのことです。孫権様は、そうなさるおつもりですか。」
「それを、ここで評議している。」
「顔ぶれを見ますと、皆さま、有名な名士であると推察致します。この方々は、曹操に降伏しても高位を得られると思いますが、孫権様はどうでしょうか。」
「荊州の劉琮は、降伏して大事にされていると聞いている。」
「それならば、降伏してしまえばよろしいのではないでしょうか。」
「諸葛亮殿は、私に降伏を勧めにいらしたのか。」
「私が勧める前に、孫権様のお気持ちが、降伏に傾いているように見えましたので・・・。」
「私が降伏したら、劉備殿は困るのではないか。こちらから持ち掛けたととはいえ、実際のところ、同盟が成立した暁には、劉備殿の方が得るものは多いであろう。」
「孫権様が降伏しても、我が主は降伏いたしません。」
「なぜ、そう言い切れるのだ。」
「我が主は、漢王室と同じ血筋。漢王室をないがしろにする曹操に膝を屈する気はございません。」
「ほう、一人でも戦うと申すか。」
「はい。我が主は英雄の気質があります。降伏するか開戦するかなどで迷い、評議など致しませぬ。」
孫権は、この一言に激怒して、帯剣を抜き目の前の机を叩き斬ってから言った。
「曹操軍何するものぞ。私は開戦を決意した。以後、降伏論をかざす者は、この机のごとく処断する。」
こうして、孫権はとうとう開戦を決意したのである。
張郃の出陣まで、間もなくである。




