第2回 張郃、父の出陣を見送る
昨日、この城下に通ずる街道で、盗賊が出たとの情報が入った。この報告を受けて、張景やその他の豪族、士族たちは私兵を率いて集合した。
鄚県では、「自分の身は自分で守る」が当然であり、役人に頼ってはいられないのである。
もちろん、張景も私兵を率いて参加する。
この時、張郃は一二歳になっており、自分も帯同をしたいと願い出てきたが、まだ幼いことを理由に却下した。
張郃は地団太を踏んだが、これは遊びではないのである。
―数日後―
城下の警備と、盗賊たちの居場所を探る探索が続けられたが、ようやく、盗賊たちの居場所が判明した。
街道より、獣道を登って行った先に、盗賊たちはいるという。人数は二〇名程だという。山中での戦いになる。この戦いの先頭に立ったのは、張景であった。
こちらの自警団は総勢約一〇〇名ほどであることから、策を弄せず、一気に攻めることに決定した。
張景は雄叫びを挙げながら、獣道を駆け上がっていく。
他の者もそれに続く。
盗賊たちは、人数の違いを見極め、早々に退却しようとしたが、張景たちは執拗に追撃を行い、全員を殺害もしくは捕縛をした。それらを全て、役所に引き渡した。
「ご苦労。」
役所から授けられたのは、このたった一言であった。
幸い、こちらは数名のけが人はいるものの、全員軽症で死人は出ていなかった。
役所の連中は、さも、自分たちが盗賊を撃退したように県令から郡太守に報告をし、褒賞を受けるのである。
張景たちは、このことに関しては気にしないことにしていた。役人たちと諍いがあると、明らかに暮らしにくくなるからである。
張郃は、父の帰りをずっと待っていた。
張景が帰ってきた。張郃は聞く。
「父上、お手柄は立てられましたか。」
「手柄・・・。そうだな、とりあえず、盗賊たちはいなくなった。みんなで挙げた手柄だ。」
そこに、家人の一人が口を挟む。
「坊ちゃん。今回の一番手柄は、何と言っても張景さまですよ。先頭を走って、斬り込んだんですから。」
張郃の眼が輝いた。そして言う。
「父上、さぞお疲れでございましょう。母上が湯浴みと酒食のご用意をしてお待ちです。」
張景は張郃の頭を撫でながら言う。
「わかった。もう少し大きくなったら、お前も連れて行くからな。」
張郃は、更に目を輝かせながら頷いた。




