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張郃  作者: 涼風隼人


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第19回 張郃、張遼と語らう

 荊州への南征軍が編成される。


 総司令は当然に曹操がつとめ、その補佐に「曹仁」が本軍に入った。


 まずは、先鋒。ここには、張遼と張郃が配されることになった。張郃は、曹操軍において本格的な騎兵の指揮を取るのは初めてだが、袁紹軍の時にもちろん経験をしている。


 そして、歩兵を率いるのが、「徐晃」、「于禁」、「高覧」である。


 この主力部隊以外に、「夏侯惇」と「夏侯淵」は別働隊を率いる。総勢二〇万の大軍である。


 まず、曹操軍には嬉しい誤算であったろう。劉表の後継者であった「劉琮」が、大軍に恐れをなして戦はずして全面降伏したのである。


 このとき、荊州の中心地「襄陽」近くにある「樊城」には、曹操の仇敵と言ってもよい「劉備」が詰めていたが、劉備には曹操へ降伏したことが伝えられておらず、劉備は急いで荊州の重要拠点である「江陵」に向けて撤退を開始することにした。ところが、その時に樊城の住民もついてくることとなり、住民を入れると総勢が一〇万以上に膨らみ、思う様に撤退が進まなかった。

 

 曹操は、劉備が江陵を本拠地にすれば厄介になると考え、張遼と張郃の騎兵を先行させ、急行軍で追撃するように命じた。この二人は作戦行動を共にするのは始めてであるが、さすがは名将同士である。一日に約三百里を疾駆する速さを維持して、「長坂」で劉備軍に追いついたのである。

 

 劉備軍は大混乱に陥り、一事、劉備は自分の妻子を捨てて撤退することを優先したくらいである。この燦燦たる状況を変えたのが、劉備軍で一騎当千の猛将として名を馳せていた「張飛」であった。張飛の活躍は凄まじく、曹操軍の誰も手を出すことが出来ないほどの剛勇をしめした。そして、長坂の橋を切り落として、劉備を逃亡させることに成功したのである。

 

 もう一人活躍したのが「趙雲」であり、趙雲は劉備の妻子を保護して、無事撤退したのである。

 

 そして、劉備は命からがら「夏口」に撤退をしたのである。

 

 なお、曹操が重要拠点とした江陵は、本軍から曹仁を派遣し、曹操が押さえることに成功した。

 

 できればここで劉備の息の根を止めたかった曹操であったが、その願いはかなわなかった。しかし、南征の初戦としては、上々の滑り出しであったと言えよう。

 

 曹操は特に、指示通り急行軍を敢行して、一日三百里を走破した張遼と張郃をほめたたえた。曹操は言う。

 「そなたたちの急行軍、まさに神速そのものであった。世間では“二張”といえば孫呉の張昭と張紘を指すが、私にとっては張遼、張郃、お前たちが“二張だ”。二張を我に授けてくれたこと、神に感謝せねばならんな。」

 

 張遼が言う。

 「張郃殿は、重装歩兵の指揮が得意と聞いておりましたが、その率いる騎馬隊の速さには驚きました。普段、騎兵を率いている私が遅れを取るところでした。」

 

 張郃が言う。

 「張遼殿、ご謙遜を。私は死に物狂いで付いていっただけです。張遼殿の指揮があればこそ、の急行軍でした。」

 

 曹操が笑いながら言う。

 「お互い、慎み深いのだな。劉備を討ち取ることは出来なかったが、今回の急行軍、まことに見事であったぞ。張郃、お前にはこれから騎兵の指揮を頼むことが増えるかもしれんが、よろしく頼む。」

 

 「承知いたしました。私で出来ることは、全力でつとめさせて頂きます。」

 

 張遼と張郃は拝礼して、退出した。

 

 張遼が言う。

 「張郃殿。実際のところ、重装歩兵と騎馬の指揮、どちらがお得意なのかな。」

 

 「張遼殿。どちらも得意というほどのものではございません。当てがわれた役目を必死にこなすだけです。」

 

 「そうですか。私は正直、最初は心配していたのです。急行軍の指揮を採るのは、常に騎兵を指揮している者でも難しいものです。馬と兵の限界を見極めながら、止まらずに走るのですから。」


 「私は、張遼殿の見様見まねで今回は何とかなりました。同じことをやれと言われても、出来るかどうか・・・。」


 「ご謙遜を。ところで、良ければなのですが、お互いに字で呼び合える友になりたいと私は思いますが、如何でしょうか。」


 「本当でございますか。しかし、爵位は、張遼殿は関内侯、私は都郷侯で、張遼殿の方が上でございます。」


 「その様なことは関係ありません。良ければ、私の事は“文遠”とお呼びください。」


 「文遠・・・。わかりました、それでは私の事は儁乂、とお呼びください。」


 「ここからは堅苦しい話し方もやめ、一献どうであろうか。」


 「是非に。今宵は、大いに飲みましょうぞ。」


 こうして、張遼と張郃は「友」になったのである。

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