第4話♡ 飼い主とペットの心暖まる交流
・――〈強制発情〉の効果が発動します。
・――個体:天塚聖奈が状態異常:発情になりました。
・――基礎ステータスにより発情が一部レジストされます。効果率は20%となります。
【ワースケベ】のスキルだろうか。〈強制発情〉の効果なんて想像するまでもなかった。
手の汚れをぬぐった天塚さんが、さっきまで僕が寝ていたベッドにぽすんと横たわる。とろんとした瞳は、まるで高熱で意識が朦朧としているかのようだった。
「……なんだろ……なんか変……」
上気した頬。
荒い呼吸。
「からだ……あつい……」
まるで熱に浮かされたかのようにぼんやりとした天塚さんは、さっきまで俺の妖刀を研いでいた指を自らのズボンに引っ掛けると、気怠そうにズボンを下げた。
ぷりっとした太腿と、天使に相応しい純白のショーツが露わになる。
同時、僕の鼻腔に濃密な香りが飛び込んできた。
先ほどまで感じていた桃のような香り。それを何十倍……何百倍も濃縮したような芳しい匂いだ。僕の意識を塗りつぶすようなその香りの元は、ショーツの奥から漂っているようだった。
たった一枚の薄布を隔てて、全男子が命がけで探検したいと思っている秘境がある。
その事実に、ごくりと喉が鳴った。
天塚さんは僕がいることすら忘れているのか、体を丸めると指先を自らの下半身へと伸ばした。
「んっ、く……♡」
恐る恐る、と言った風に伸ばされた指が布を撫でる。ただそれだけで、天塚さんはびくんと体を震わせ、小さく呻いた。
は、と短く浅い呼吸を繰り返しながら、天塚さんが指を動かし始める。
あまり慣れていないのか、戸惑うような、怖がっているような表情をしながらも、一度動き始めた指は止まらない。
「はぁっ……んんっ……♡」
声が。
音が。
匂いが。
その全てが僕の理性を塗り潰していく。
口の中に、唾液が溢れた。口の中が洪水になるほどの量だ。
……駄目だ。
天塚さんに手でシてもらったというだけでも、人間に戻ったら豚箱行き――それどころかファンや本人に知られたら社会的にも物理的にも抹殺されかねない。
天塚さんが能動的にやったことですらそうなるのだから、溢れ出る蜜を舐めるだなんて、絶対に許されるはずがない……!
千切れ飛びそうな理性を必死に抑える僕の脳裏に、声が響いた。
今までの中性的なものではなく、低い男の声だ。
――雌を満足させるのも強き雄の務め。臆することは許さん。
呆れるような。怒っているようなその言葉に応じるように、心臓がどくんと跳ねた。続いて、体の奥底から強い熱が生まれる。
そのまま炎が出るんじゃないかと思うほどの強烈な熱が僕の身体を勝手に突き動かした。
ベッドへと走り出し、そのまま飛び乗る。
「はぁっ、んんっ……あっ、ん……なっ、何……?」
夢中になっていた天塚さんが僕に気づいたのも束の間。
僕は貪るように、濡れそぼった薄い布へと舌を伸ばした。
***
・――興奮値が一定以下になりました。ここまでの経験を還元します。
・――性経験によりレベルアップしました。
・――性経験によりレベルアップしました。
・――性経験によりレベルアップしました。
・――性経験によりレベルアップしました。
・――性経験によりレベルアップしました。
・――性経験によりレベルアップしました。
・――性経験によりレベルアップしました。
・――性経験によりレベルアップしました。
・――性経験によりレベルアップしました。
・――性経験によりレベルアップしました。
・――性経験によりレベルアップしました。
・――性経験によりレベルアップしました。
……やってしまった。
身体が自由に動くようになった時には、もう遅かった。僕に貪られた天塚さんは汗《《とか》》で全身を濡らし、ベッドの上でぐったりしている。
まだいろいろと収まっていないらしく、時折身体をびくりと震わせながらも、蕩けるような表情を浮かべている。
「はぁっ……はぁっ……んっ…………はぁ……ふぅ……」
気怠そうにしながらも天塚さんは僕に手を伸ばし、そのまま顔の方に近づけた。
「……いたずらっ子なんだから……もうダメって何度も言ったのに」
……確かに何度もイってましたね……最後のほうは言葉にならない悲鳴をあげていた気もします……。
でももっと、とかすごい、とかも言ってませんでしたか……?
思わず敬語になってしまうのは、許可もなく女の子の大切なところを舐めてしまった罪悪感からだ。
いや、そもそも人の言葉を喋れないのはわかってるんだけどね。
感覚が人間のものよりも鋭敏なのか、僕の口の中にはいまだに天塚さんの味が残っていた。
思い出しただけで全身の血が滾るような、極上の甘露だった。一舐めごとに欲望が刺激され、身体を突き動かす燃料を注ぎ込まれているかのようだった。
そうして天塚さんが動けなくなるまで舐め尽くしたのがついさっきのことである。
「苦しかったんだよ? ……気持ち良かったけど」
咎めるような視線すらご褒美に感じられてしまうが、さすがにやりすぎなのは僕も自覚していた。
何かに操られているかのように抑えが利かなくなった、なんて言い訳ができるはずもない。万が一にでも正体がバレてしまったら、僕は刑務所ではなく処刑場に送られるだろう。
「きゅぅぅん」
「……ごめんね、怒ってないから大丈夫だよ」
天塚さんは蕩けるような表情のまま笑みを作ると、ピンと尖った僕の耳の辺りに小さくキスを落とした。柔らかく、瑞々しい唇の感触にぞくぞくしたものが体を駆け抜けた。
「お姉ちゃんと遊びたかったんだよね? 懐いてくれてるなら嬉しいなぁ……そうだ、飼うならお名前決めないとね」
「わふっ!?」
えっ!? 僕、飼われるの!?
「ん~……オオカミ……犬……うーん」
驚き固まる僕をよそに、天塚さんは枕元に放り出してあったスマホを弄り始める。
そしてすぐに俺の頭を優しく撫でた。
「ルゥくん! あなたの名前はルゥだよ! フランス語で狼って意味なんだって!」
「わふぅっ!?」
「気に入ってくれたの? これからはず~っと一緒だよ、ルゥくん♡」
優しく抱き寄せられて豊満なおっぱいに埋まり、あ……このまま飼われるのもありかも、なんて思ってしまった。
「あっ……そろそろ配信の時間だ。シャワー浴びてこなきゃ」
天塚さんは当たり前のように僕を抱き上げておっぱいに埋める。
「ルゥくんを助けた時も、ダンジョンで配信してたんだよ。視聴者さん達にお披露目もしたいし、お姉ちゃんと一緒にお風呂入ろうね♡」
「わふっ!? わふぅぅっ!?」
「怖くないよー♡ さっぱりスッキリさせてあげるからね♡」
なお、お風呂中に再び〈強制発情〉が発動してしまったせいで配信は中止。三時間近く掛けてお互いにさっぱりスッキリすることになった。
「……ルゥくんのえっち」
ぺたんと床に座り、クッションを抱きかかえながら唇を尖らせる天塚さん。きっかけは僕のスキルのせいだけど、途中から天塚さんもおねだりしてきたので情状酌量の余地はあると思いたい。




