第26話♡ カミングアウト
見覚えのある和風の家屋が視界に映る。無事に瑠璃華さんの家まで転移したようだ。
周囲を確認すれば、僕と天塚さん、そして瑠璃華さんに続いてリリン=リ・リも転移していた。天塚さんが眷属化されているという予想外の事態はあったものの、作戦通り転移魔法を発動させたのだ。
おそらくは僕が天塚さんたちとやりとりをしている間に、ローパーに隠れて呪具を設置していたのだろう。
さらに予想外な出来事として、リリン=リ・リが地に伏せていた。
「ぐっ、ぐぐぐっ……魔素、が……!」
酸欠にでも陥ったかのようにぱくぽくと口を動かして喘ぐリリン=リ・リ。その顔色も、一目で分かるほどに悪くなっていた。
――魔素不足だな。《《ユヴェルの民》》は魔素なしには呼吸できない。
……ユヴェル?
――世界を渡る民だ。そんなことよりもチャンスだ。
……そうだ、今ならリリン=リ・リを――……!
――さっさと雌を組み伏せ、眷属化の上書きをしろ。
そっち!?
思わず動揺する僕の耳朶に、リリン=リ・リの叫びが突き刺さる。
「もぉぉぉ! 魔素不足でお肌がかさついたらどうしてくれんのよッ! 〈強制収奪〉!」
何かのスキルだろうか、天塚さんの身体から魔力が放出され、リリン=リ・リへと吸い込まれていく。
恍惚とした表情を浮かべるリリン=リ・リとは対照的に、天塚さんの顔色が一気に悪くなっていく。
魔力を無理やり奪い取っているのだ。ただでさえ魔力欠乏に陥っていた天塚さんは、おそらく魔力が空っぽになっているはずだ。
「ルゥ、くん……逃げて……辛いの……早く……」
自分も辛いだろうに、それでも僕のことを案じる天塚さん。
……僕は何をしてるんだ。
傷つけたくないから離れた?
大切だから離れた?
嘘だ。
僕が傷つきたくなかっただけだろう。
嘘をついていることがバレて嫌われたくなかっただけだろう。
天塚さんのためなら。
本当に天塚さんを想うならば、傷ついてもいい。断罪されてもいい。
全てを投げ出してでも、天塚さんのためになることをしよう。
そう覚悟を決めたところで、瑠璃華さんの声が響いた。
「とーや! さっさと聖奈を連れて逃げ――って何て恰好してるのよっ!」
肌を晒け出している天塚さんを見つけた瑠璃華さんが目を剥く。
「ああもうっ! とーや、アンタが何とかしなさいっ! 〈隠遁結界〉!」
酷い無茶ぶりとともに瑠璃華さんが結界を発動させた。
……誰にも見えなくなる結界を。
結界に遮られたことで、天塚さんの香りがむせかえるほどに強くなっていた。理性をぐらつかせる背徳の香りに、僕の身体も勝手に反応してしまう。
覚悟を決めて、変身を解く。
「あっ……え……?」
「……今までずっと、黙っててごめん。僕は覚醒者なんだ」
「ルゥ、くん……?」
「ごめんなさい。これから天塚さんを助けるために、酷いことをする。一生許さなくて良いし、僕のことを恨んでくれていい」
全てが終わった後――天塚さんを救った後なら、どんな罵倒でも受け入れよう。死ねと言われればそうしよう。
覚悟を決めて、天塚さんに手を伸ばす。払いのけられるかと思ったが、天塚さんは黙って受け入れた。
「ルゥくん、人間だったんだ……《《嬉しい》》♡」
「えっ!?」
予想していたのとは真逆の感想にぎくりと固まる僕の眼前。天塚さんは僕を求めるかのように――否、僕を求めて両手を広げた。
「来て……私をメチャクチャにして」
真っすぐに求められ、僕の理性は一瞬で蒸発した。
唇を奪う。
「ちゅっ……ふっ、くぅん……っ」
舌先で天塚さんの唇をこじ開け、口の中を蹂躙する。
ぬめる舌を吸い、ねぶり、味わっていく。
「ぷはっ……はぁ、はぁ……」
「天塚さん……」
「せえな」
顔を赤くし、蕩けるような表情のまま天塚さんが唇を尖らせた。
「聖奈って呼んで」
「……聖奈さん」
「はい♡」
嬉しそうな微笑む彼女を抱きしめると、胸元がむぎゅっと潰れた。
――――――【自主規制】――――――
「お願い……私を、ルゥくんのものにして♡」




