プロローグ♡
久々のド新作です!
よろしくお願いします!
「ルゥくん♡」
ごく一般的なユニットバス。むらっとするような……間違えた。むわっとするような湯気の中、甘みを帯びた声が僕の耳朶を揺らした。
すぐさま股間にそびえる主砲が発射準備を始めるが、ターゲットへと照準を絞るべく振り向こうとした僕の背中に、むにゅん、と柔らかくも存在感を放つものが押し当てられた。
動けない。動きたくない。気持ちいい。
思わず一句詠んでしまうほどの感触である。
「あ、天塚さん……何をしてるんでせうか?」
「むぅ」
僕の問いかけに対し、返ってきたのは不満そうな呻き声だった。
むにゅん。
「えっと」
むにゅん。
「その」
むにゅん。
しがみつくように背後から抱きしめられ、押し当てられたのはたわわに実ったイケない果実。
股間のウルトラビーストがメガ進化しそうな感触に理性が飛びそうになる。
アダムが楽園を追い出されるきっかけになったのもおそらくはこの果実のせいだろう。
しかもアダムはたった一つだったが、僕の場合は二つも押し当てられているのだ。
そりゃ間違いの一つや二つあっても仕方ないだろう。
うん、僕は悪くない。悪くないったらない。
誰に対してのものかも分からない言い訳を心の中に並べて振り返ろうとするが、ぎゅっと抱きしめる力が強くなって阻止されてしまった。
「天塚さん……?」
「つーん」
備え付けの鏡を見れば、僕を抱きしめる《《天使》》と目が合った。
芸術品のような裸体を惜しげもなく晒した美少女と目が合い、思わず呼吸すら忘れて見入る。
黒く艶やかな長髪に、しっとりしていながらも張りを感じさせるきめの細かい肌。きゅっとくびれたスタイルに、圧倒されるほどの存在感を持つ双丘。
清楚でありながらも蠱惑的。
相反する二つが少女――天塚聖奈の中で奇跡的なバランスで調和していた。決して汚してはいけないと分かっていながらも、今すぐ貪りたいという欲望が僕の中でせめぎ合う。
神が作り出した奇跡。聖母。天使。そんな言葉が似合う美少女だった。
ちなみに天使だけは比喩ではない。
聖奈の背中からは、《《本当に》》純白の翼が生えているのだから。
天国から迎えが来たと言われても納得してしまいそうな姿の聖奈は、頬を染めながらも唇を尖らせて僕を見つめていた。
「聖奈、だよ。名前で呼んでってお願いしたでしょ」
「いや、あの、その……」
「……こないだ、《《シ》》た時は呼んでくれたのに」
拗ねるような。どこか寂しそうな響きでそんなことを言われてしまえば、僕に否はなかった。
「せ、聖奈」
「えへへ……なぁに?」
「その、背中に……当たってるんです、けど」
「けど、の続きが気になるなぁ……嫌なのかな。そ・れ・と・も♡」
背後から回された白く細い指がツゥ、と僕の腹部を撫でる。上から下になぞるような指先は、僕の火薬庫に到達しそうであった。
「ご奉仕してほしいのかな♡」
僕のバルカン半島が限界を迎え、理性が宇宙のかなたに飛んでいきそうになったところでユニットバスの折れ戸が乱暴に開けられた。
むわっとする空気が抜けていき、代わりにひんやりした空気と……そして一人の少女が入ってくる。
「聖奈っ! アンタ何やってるのよ!」
「邪魔しないでよ、瑠璃華ちゃん。せっかくルゥくんも《《その気》》になってくれそうだったのに」
「そそそっ、その気って……! お風呂場で何しようとしてんのよ!?」
「何って……決まってるでしょ?」
「聖奈のえっち! へんたい! もう少し恥じらいってものを持ちなさいよ!」
「えー? でも、瑠璃華ちゃんだってタオル一枚で入ってきたわけだし、あわよくばルゥくんとって思ってたんでしょ?」
「思ってないし! それに私は仕方なくよ! シてもらわないといけないんだから!」
「ふーん……それじゃあ、本当はシたくないんだ」
「そっ、そんなこと言ってないでしょ!?」
「じゃあ、シたい?」
「しっ、知らないっ! 知らない知らない知らないっ!」
「もう、素直じゃないんだから……えいっ」
「きゃぁぁぁっ!?」
瑠璃華の悲鳴に思わず振り向く。
そこには一糸まとわぬ姿の聖奈と、バスタオルをはぎ取られた瑠璃華がいた。
「……タオル、返してよぉ」
顔を真っ赤にした瑠璃華は聖奈の足元、自分の身体を抱くようにして手で隠しながらしゃがみこんでいた。
いつもはハーフツインテールにしている艶やかな金髪に、華奢な肢体は透けるような白さ。
普段はどこか幼さを感じさせるが、実際に見てみればぷりんとした尻にしっかりとくびれのある腰は、とてつもなく魅力的だ。
しゃがんだことでむにゅっと潰れた胸だって、平均サイズなんて余裕で超えているだろうほどに存在を主張している。
聖奈と比べるのは、うん、まぁ……相手が悪かったね……。
「見ちゃダメ……!」
上気した頬に潤んだ瞳で懇願する姿は、むしろ僕を誘っているようにすら見えた。
大切なところを隠そうと伸ばした手の隙間から、薄桃に色づいた部分がちらりと見えてしまう。
咲く直前の蕾を覗いてしまったかのような背徳感に背筋がゾクゾクする。
何とも嗜虐心をくすぐる光景だが、具体的な行動を映す前に、聖奈が僕の前に回り込んだ。
「ねぇ、ルゥくん」
聖奈に正面からしなだれかかられ、体のあちこちに柔らかくてすべすべなものが当たる。特にむぎゅっと潰れた母性の象徴がすごかった。
これは芸術、芸術だから疚しい気持ちを抱いてはいけない、と必死に言い聞かせる僕の耳元、つま先立ちになった聖奈が囁く。
「私の時はずーっと後ろ向いてたのに、何で瑠璃華には釘付けになってるのかなぁ……私って、そんなに魅力ない?」
分かっていて聞いているのだろう。
聖奈が体を浅く上下させたことで、もっちりしていて吸いつくような感触が動いた。固く尖り、存在を主張する感触までもがはっきりと伝わってきてしまう。
「ねぇ……こんなになってるのは、やっぱり瑠璃華で興奮しちゃったのかな?」
「あ、くっ……聖奈が魅力的だからだよ」
神が作り出した奇跡の芸術の手が、慈しむように僕の絵筆を撫で上げる。
しっとりとした指先に、僕のゴッホがドビュッシーしそうになる。
「それなら良かった♡ 瑠璃華は嫌みたいだし、私とシようよ。ルゥくんがお願いしてくれたら、私、なんでもするよ?」
「な、なんでもって……」
「気持ちいいことも、恥ずかしいことでも……ルゥくんがシたいことなら、なんでも♡ めちゃくちゃにしたくない?」
「だっ、駄目よ!」
理性が沸騰し始めたところで、しゃがみこんでいた瑠璃華が僕と聖奈の間に割って入った。
「そんなの駄目なんだから!」
「え~……でも瑠璃華は嫌なんでしょ?」
「嫌なんて言ってないもん! とーや! そんなに鼻の下伸ばして、聖奈ばっかり見てたら許さないんだからね!」
顔を真っ赤にしながらも僕に食って掛かる瑠璃華。
その背後で、聖奈が聖母のような笑みを浮かべた。
「見ちゃダメって言ってたのに、やっぱり見てほしいんだね♡」
「きゃぁっ!? はっ、離して……っ! 力強っ!?」
「これでも覚醒者だからね♡ 恥ずかしいところも、大切なところも、ぜーんぶ見てもらお?」
後ろから両手を掴まれ、バンザイする形で全てを曝け出した瑠璃華と目が合う。
ただでさえ赤かった顔が耳まで紅潮し、口がぱくぱくと開く。
「ひぅっ……うぅっ……とーやのえっち……っ!」
「そんなこと言って、始めたら一番ノリノリなのは瑠璃華なのに」
「~~~っ! し、知らないっ! シないともっとひどいことされるからだもん!」
「ふ~ん……あんなにいーっぱいシてもらっておいて、そんなこと言うんだ。じゃあルゥくんは私が独占するから、瑠璃華は無理しなくていいよ」
「だ、駄目っ! そんなのやだ!」
「ルゥくんも、嫌がってる子を無理やりするより、何でもしてくれる子の方が良いもんね?」
瑠璃華の手を離した聖奈がウインクを一つ。
からかっている側面もあるんだろうが、なかなか素直になれない瑠璃華の後押しをしているつもりなんだろう。
「ルゥくん♡」
「とーやっ」
僕を誘惑するような聖奈と、不安そうな目で見つめる瑠璃華。
「「どうするの?」」
二人に挟まれ、僕は天を仰いだ。
何でこんなことになっているのか……ことの発端は、そう、とあるニュースにまで遡る。




