穴
穴
衣替えの季節になった
スウェットの首回り手首足首が ダルダルに伸びている
締め付けのないこの緩さがちょうどいい 体のラインに沿って一回り大きくなっている
お気に入りの状態だ ゆったりしていて無駄なたるみがない
この伸び方になるには 数年かかる
もっと使えばほころびや穴が開く そうなれば捨てる時期だ
捨てると言っても 適当に切って雑巾になるだけである
使用後は洗濯などしないで そのままごみ箱行き
室内の服はそれでいいが 外出用の服ではそうはいかない
ダメージファッションと言う物があるが ダルダルの服は仲間に入れてもらえない
仲間に入れたとしても外で着るにははばかれる 気が進まない
お気に入りの服も そのうちに雑巾になる
はさみを入れる時の お別れは寂しいものだ
お気に入りの革ジャンがある
ヤギ皮で出来ており柔らかく非常に軽い 裏地もまだ健在だ
何年か前 襟の首の後ろに擦り切れて穴が開いた
新しく革ジャンを買おうと探したが なかなか気に入ったのが見つからない
肩の所はバッグのベルトですり切れて 少し色あせしざらついている
クローゼットの中に 何年もぶら下がっている
修理に出す店が見つからず 捨てずに取ってある
穴は修理し ざらつきは味として残そうと思う
候補の店はいくつかある事はあるのだが 躊躇している
きっと襟の張替えになるのだろう 店の場所か値段か
襟だけ色が違うとか新しい皮で違和感があるとか
仕上がりを勝手に想像し 違う姿になる事を気にしている
時間はかかってもいいと思っている
きっとそのうちに修理に出すであろう
昨日より素敵な明日に出来ますように