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第4話 2人の神様と罪悪感

 王族らしいといえばらしい買い物に胃を痛めた後、二人で昼食を食べにきた。今回はやや庶民的で安心だ。必死に説得して良かった。……それでも女の子に奢ってもらうのは男としてどうなんだ……?


「あとは神殿だよね、今回行くところは結構大きなとこだからたま〜に神様を拝めるよ」

「そういえばさっき言ってたね、下級神様だっけ?」

「うん、下級とはいえ、人間より圧倒的に上だから気をつけてね」

「な、なるほど……その階級ってのは、どんな感じなの?」

「下から『下級神様』『中級神様』『上級神様』そして一番上に『創造神様』がいるよ。けど、基本的に人間界にお姿を表されるのは、神殿に駐在されている下級神様か、国の大きなイベントに来られる上級神様ぐらいだよ。私は『魔法の神様』が凄く好きなんだけど、中級神様だからほぼお姿を見られないんだよね〜……」


 魔法の神様か……一体どんな神様なんだろう?


「そうなんだ……。いつか会えるといいね」

「まあ、これから行く神殿に常駐されている下級神様は魔法の神様のもとに仕えていらっしゃるから、そこでお祈りできるだけで満足だよ〜」

「……もしかしてその神殿選んだ理由って……?」

「……」


 こら、目を逸らすな。まあ、案内してもらうから別に良いけど……。そうこうしてるうちに食事を食べ終え、神殿に向かう事になった。




 ……神殿、でかくね……?

 想像以上のサイズと、現実離れした雰囲気に圧倒されつつも入口へと歩を進める。歩けないほどでは無いが、かなり人が多く、人酔いが辛い。

 人混みを掻い潜りながらロズと歩いていると、ふと「下級神様が拝める」という事について気になったので訊いてみた。

 ロズ曰く、下級神はここのような神殿の管理をすることもあり、礼拝堂に稀に姿を表すらしい。見られたら凄くラッキーとの事だ。


 いよいよ神殿に入り、礼拝堂に向かう。神殿内は地球のそれに似ている節もあるが、日本人のイメージする「神殿」とはまるで異なっていて、正しく「別次元」だ、上手く説明は出来ないが。

 神殿内では会話はできないので凄く静かだ。別次元のような独特な雰囲気に圧倒されつつも、僕たちの礼拝の時間になる。ロズの見様見真似で祈りのポーズを取ろうとしたその時――


「…………ん?」


 突然3メートル程前に白服の女性が現れた。165センチ程のスレンダーな方で、綺麗な金色の髪を後ろで束ねている。

 神殿内がざわつき始めたが、すぐに収まった。もしかしてこの方が神様……? ロズにアイコンタクトを送るとまさに予想通りなようで、驚きが隠せていないまま、コクリと頷いた。

 本当に神様を見られるとは……もう一度神様に視線を送ると、なぜかこちらを、と言うか僕の目をじっと見つめている。――僕何か悪い事したっけ……? ……200万か? やはり200万なのか?

 三秒ほど目を合わせたかと思ったら、突然僕に軽いお辞儀をしてきた。ロズと周りの人の僕に対する目線が痛い。

 その瞬間、景色が一変した。これは以前見た事がある。キャストさんの場所だ。そこで、キャストさんは既に正座していた。


「お元気そうで何よりです。改めて、謝罪させて下さい」

「あ、いえ、気にしていませんよ。それより、お久しぶりですキャストさん」

「はい、ルカ様」

「な、なぜ様付けなんですか?」

「私は貴方に取り返しのつかない事をしてしまったのです。本来ならこうして直接お話しする資格も無いのに、貴方はまた会いに来てくださいました。そんな貴方にかしずくのは当然です」

「当然……?」

「はい」

「……」


 相変わらず表情の変化は乏しいが、なんだか物悲しげである。


「……作業中に何があったのか、教えてくれませんか?」

「……はい。」


 キャストさん曰く、作業中に一人の魔族が僕を襲おうとしたらしい。キャストさんは魔法を使い、魔族を追い払えはしたものの、脳の調整作業中だったために三大欲求と記憶が消えてしまったらしい。

 どうやら本当にこの二つは消えてしまったようだ。


「……じゃあ、キャストさんは悪く無いですね」

「……いえ、そんな事はありません。私は激昂に駆られ、後先考えず貴方から手を離しました。全て私の落ち度なんです」

「……でも、キャストさんは、僕を守ってくれたんですよね? なら、キャストさんを恨んだりなんかしませんよ」

「で、ですが私は貴方を……」


 きっとこの人は、罪悪感に押し潰されそうなんだろう。責任を全部一人で抱えこもうとしている。そんな彼女に僕ができる事は……。

 僕は正座しているキャストさんの前に跪き、酷く冷たいキャストさんの手を両手で握る。やはりこの肌の白さは生まれつきでは無いな。


「……キャストさん、僕には貴方の罪悪感を消す事はできません。ましてや自分の仇だと、貴方を貶す事もしたくないです。ただ、僕は貴方にそんな顔はして欲しく無いんです」


 今にも泣き出しそうなキャストさんに、不器用な笑顔を向ける。


「…………ルカ様……ありがとうございます……」


 キャストさんが、少しだけ笑ってくれた。


「やっぱり貴方は、その顔の方が似合いますよ」

「……そ、そうでしょうか……?」

「はい、とっても」


 ほんの少し口角を上げるキャストさんの手を、また握りしめる。少しそうしていると、キャストさんが口を開く。


「……ありがとうございます。これからは貴方に隷属いたします。誠心誠意尽くしますので、何卒よろしくお願い致します」


 ――ん? なんか突拍子もないこと言い出したぞこの女神!?


「れいぞく……? え? いや、キャストさんって神様ですよね!? てかこの世界に『奴隷』なんて制度あるんですか……?」

「無いですね」

「無いんじゃないですか……!」

「ですが、忠誠を誓うにはこれが一番かと思いますが?」

「なんか変な知識ついてません……? とにかく、僕はキャストさんを『友人』としか思いませんからね?」

「では私は貴方を『ご主人様』だと思っておきます」

「話聞いてました!?」


 この人はなんだか押しが強い気がする。多分もう何を言っても無駄なようだ。


「では、時間になりましたので、またお会いしましょう、ルカ様」

「…………はい」


 元の場所に戻ってきたが、どうやら時間がゆっくり流れていたようで、金髪の神様がお辞儀をやめるタイミングだった。とりあえず跪いてお祈りしておいた。少し祈るとロズがお祈りをやめたので、僕もやめて外に出た。


「……ルカ、あの神様と知り合い? お辞儀されてたけど?」

「……いや、そんな事は無いと思うけど……」


 正直、心当たりはあった。あの神殿にいたと言う事は、キャストさんのもとに仕えているのだろう。それならあの対応も納得ではある。ひとまず僕たちは帰路についた。



―――――――――――――――――――――――



 その時、ルカの部屋に二人の神が来ていた。

「……あの、ほんとにここで待つのですか、キャスト様?」

「ええ、外じゃ目立つでしょ、フリージア」

「まあ、それはそうですが。どう考えても迷惑では……?」

???「キャスト様は今回の件のことをかなり引きずっているようですね。どんなに優秀な人でもミスはあります。それは天才である私も例外でなく……というわけです」


 なるほど?

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