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天使のほほえみ  作者: L
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天使殿の掃除①




「次の休日、天使殿にお掃除しに行くんだぞい!!」



 食堂にて、急に宣言をするスカーレットである。


 

 スカーレット以外の5人は、食べていた手を止めてスカーレットを見た。



「いきなり、、なに?」

「スカーレット、天使殿に行くの!?」

「でも、なんで掃除なの?」


 各々が疑問を口にする。


「天使殿って、王都警備隊屯所の隣にある?」

「おそらく、そうだと思います」


 殿下がダミエレ様に確認していた。



「ふふんぞい!よくぞ聞いてくれたぞい!!」



 スカーレットが誇らしげに腕を組んで話を続ける。


「父上に天使殿へ行った話をしたら、天使殿を長いこと管理していた人が高齢で亡くなっちゃったらしいって聞いたぞい!それから、新しく管理する人が決まらないって王宮でも困っていて、父上のところにも”誰かいないか?”って相談があったらしいぞい!前の人は住み込みだったみたいだけど、通いでもいいから掃除とかできる人を探していて、だから”わたしがやる”って名乗り出たんだぞい!!」


「スカーレットが掃除!?」

「掃除、、できるの?」

「掃除....掃除....」



 仮にもスカーレットは侯爵令嬢である。騎士の家系で泥や砂で汚れることに慣れているとはいえ、掃除ができるのかは甚だ疑問だ。


 私とモアナは疑問を口にしたが、ミレーネは何か別のことをブツブツ呟いている。


「侍女に教えてもらいながら掃除するぞい!”生半可にするなら許可しない”って父上にも言われたから、全身全霊をかけて掃除するぞい!!」



「・・・・・・・・・・」



「え~っと、スカーレット嬢、君、侯爵令嬢だよね?」


 殿下がハッキリと、誰もが思う疑問を口にしてくれた。


「そうだぞい!でも、貴族だからって掃除をしたらダメって決まりはないぞい!それに、クリの課外授業を手伝うようになって思ったんだぞい!やっぱり、領民のために勉強を教えるクリも、国民のためにお忍びで学校で教える殿下もスゴイぞいって!!だから、わたしも誰かのために、今のわたしにできることをしたいんだぞい!!!」



 私は、殿下が王都にある庶民向けの学校で剣術や勉強を教えてることを、いっしょに昼食をとるようになってから初めて知った。


 前世の殿下は、そのようなことをしていなかったはずだ。


 殿下は「クリスティナ嬢のおかけで、今の自分に何ができるか考えることができたんだ」と仰ってくれた。



 でも、私がしていることは所詮は自己満足なのだ。


 何もしなかった前世の自分ーーー。


 周りを見ようとしなかった愚かな自分ーーー。


 その罪滅ぼしでもあって、決して褒められるようなことではないのだ。


 今の殿下も、スカーレットも、純粋に”誰かのため”にという想いだけで動けていることが、どれだけ凄いことか私は知っている。




「そこまでの考えがあるとは知らずに、失礼なことを言ってしまい申し訳ない。スカーレット嬢の気持ちは生半可ではないこと、よくわかったよ」


 殿下が謝罪を口にすると、スカーレットはニカっと笑いながら、


「殿下が簡単に謝ったらダメぞいぞ!見ていてぞい!立派に掃除をしてくるぞいよ!!」


 スカーレットは拳をあげて宣言する。


「あぁ、期待しているよ。でもね、ボクは王族だけど、お礼も謝罪も言える”人間(ひと)”でありたいんだ。それはきっと、これからも変わらない」



 その言葉に、みんなが尊敬の眼差しを殿下へと向ける。



 『そうね・・・このまま高等部まで変わらずにいてくだされば、ね』



 私だけが、暗い感情を持ったことだろう。



 すると、そこにミレーネの明るい声が入ってきた。


「あの!わたしも行ってもいいかな!?」

「ミレーネも掃除したいぞいか?」

「うん!天使様のお掃除、わたしもしてみたいの!お掃除に自信はないけど、わたしも出来ることはやってみたい!お父さまの許可があれば、わたしも行ってもいい?」



 思えばいつからだろう。


 ミレーネが自分の意志を伝えられるようになったのは。


 前世のミレーネは大人しくて、自分の意志を伝えることができず虐げられている場面に何度も遭遇した。


 だから、今世では「私が守らなくては」と思っていた。


 それがどうだろう。


 いつからか、自分がしたいこと、行きたいところ、ダミエレ様のこと、そして今この瞬間。


 ミレーネはしっかりと自分の意思を言葉にするようになった。本来は、こんなに明るくて芯がある子だったのだ。


 「私が守らなくては」なんて、なんと烏滸がましいことか。


 殿下もミレーネも、私のように前世と今世では違う道を歩いている人間なのだと、改めて思い知らされる。




「わたしも、、行く、、スカーレット、、だけだと、、心配」

「なんでぞい!?」

「なにか、、壊し、、そう」

「うぐっ!」

「私も孤児院でお掃除や畑仕事は手伝ってはいるんだけど・・・少しはお役に立てるかな?」




 こうして、私たちは父親の許可を得て、「侍女を1人ずつ同行させる」という約束のもと、天使殿の掃除をすることになったのだった。







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