呼び名
リュドヴィック殿下との、まさかの遭遇のあと、私たちは無事に新初等部2年生を迎えた。
クラス替えがないため、いつも通りの授業を受けてお昼休憩となり、私たちは食堂へと向かう。
廊下を歩きながら、私はずっと心に秘めていたことを、友人3人へ向かって話し出す。2年生になったら絶対に言おうと決めていたことだ。
「あ、あのね!名前の呼び方なんだけどね!そろそろ、”様”付けをやめてもいいのではないかな〜.....なんて.....」
すると、前を歩いていたスカーレット様とモアナ様が立ち止まり、こちらを振り向いた。
私の隣を歩いていたミレーネ様も立ち止まり、3人ともポカンとした顔で私を見ている。
『あら!?もしかして、呼び方については時期尚早だったのかしら!?』
私は不安になってしまったが、スカーレット様がポカンとした顔からニカっと笑うと、
「賛成だぞい!呼び方のことなんて忘れていたぞい!!」
「”様”なくしたら、、呼ぶの、、ラク」
「わたしも嬉しいけど、公爵家と侯爵家の人に対していいのかな.....」
「ミレーネ様!私がそう呼んでほしいの!」
「わたしも気軽に呼んでほしいぞい!モアナだって、わたしのこと呼び捨てだぞい!!」
「みんなが気にしないのなら、わたしも”様”をつけないで呼んでほしいな.....」
「フレン、、ド、、リー」
そして、私たち4人は顔を見合わせて笑う。
再び、食堂へと歩き出した私たちは、お互いに何と呼び合うかと話をする。
あーでもない、こーでもないと話しながら、各々がトレーに昼食をのせて、いつものように食堂右側の一番奥の席に向かおうとした時だった。
「やぁ、みんな。偶然だね」
私たちに声をかけてきたのは、今朝ぶりのリュドヴィック殿下だった。
「リュドヴィック殿下.....こんにちは」
「殿下と食堂で会うなんて珍しいぞいね!」
「そうかもね。みんなもこれから食べるなら、ボクたちもいっしょに食べていいかな?」
まさかの、殿下からのお願いである。
殿下も、殿下の隣にいるダミエレ様も、手には昼食がのったトレーを持っている。
まさに、これから食べようとしている王族からの申し出を断るわけにはいかないが、なんと答えたものかと考えていると、
「いいぞいよ!どこで食べるぞい?」
スカーレット様、決断が早すぎます。
「いつも、みんなが食べているところで構わないよ。あっ、1つだけお願いできるなら、ボクを端に座らせてほしいかな」
なぜか殿下は、いつも私たちが座っている席を知っているような口調だ。
「いいぞいよ!みんなで食べれば美味しいぞい!!」
モアナ様は、
「乙女、、ガンバ」
と、意味不明なことを言う。
ミレーネ様は緊張しながらも、
「ご一緒できるの嬉しいです」
と、目線は合わせられていないが、ダミエレ様のほうを向いて言っている気がする。
3人とも了承しているため、私が否と答えられるわけがない。
いつもの席は、狙っていたかのように6人分の席が空いていた。
一番奥の端に殿下、向かい側にダミエレ様が座り、
「スカーレットは、、ここ」
と、モアナ様に促されたスカーレット様は、なぜか殿下から一つ席をあけて座ってしまった。そして、モアナ様はスカーレット様の向かい側に座る。
ダミエレ様の隣にはミレーネ様が座りたいだろうと思った私は、殿下の隣に座るしかなかったのだった・・・。
「「「いただきます」」」
本日の昼食メニューは、下町で大人気のナポリタンとコーンスープ、そしてサラダである。ナポリタンには目玉焼きがのっている。
「それでぞい?クリスティナ様は”クリスティナ”ぞいか?」
スカーレット様が、呼び方についての話の続きを始めた。
もちろん、私たち3人は意味をわかるのだが、何も知らない殿下とダミエレ様は「何を言い出したんだ?」という顔をしている。
「今まで”様”をつけて呼び合っていましたので、”様”をつけない呼び方について相談していたのです」
「「あぁ、なるほど・・・」」
私が説明すると、殿下もダミエレ様も理解したようだ。
そして私は、左隣に座るスカーレット様のほう向いて、
「私の名前は”クリスティナ”で、長いし言いにくいでしょ?だから、省略してくれてもいいんだけど.....」
「クリスティナ様の愛称は”ティナ”?」
「両親には、そう呼んでもらってるね〜!」
ミレーネ様の質問に、友達にも愛称で呼んでもらえるのかと少しワクワクしていると、急にガタっとスカーレット様が椅子から立ち上がった。
「クリ!”クリ”がいいぞい!!」
「クリスティナ様の、、”クリ”?」
「それもあるぞいけど、目が”クリクリ”してて可愛いからだぞい!クリスティナ様にピッタリだぞい!!」
「たしかに、”クリ”って呼び方は可愛いから、クリスティナ様にピッタリかも!」
「”クリ”・・・そう呼ばれるの初めてかも!嬉しい!」
こうして、私は「クリ」と呼ばれることになった。
「スカーレット様の呼び方は?」
「そういえば、スカーレット様はご家族にもマリエ様にも”スウ”と愛称で呼ばれているけど、モアナ様は愛称ではなく”スカーレット”って呼んでるよね?」
「うん、、スカーレットは、、スカーレット、、だから」
「モアナ.....」
モアナ様の言葉に、スカーレット様は感動している様子だ。
モアナ様の言葉の意味を、後に私は知ることになるのだが、この時の私は「”スカーレット”の名の如く、髪は黄赤色で炎の色だから、”スカーレット”という呼び方はピッタリだよね」としか思わなかったのである。
そうして、クリ、スカーレット、モアナ、ミレーネという呼び方に決まった。
名前を呼び捨てで呼び合うなんて、なんとも嬉し恥ずかしい瞬間である。
4人とも照れてモゴモゴしながらも、お互いの名前を呼び合った。
つい存在を忘れそうになっていたが、口を挟まずに一部始終を見守っていてくれた殿下が、
「ボ、ボクも!みんなのこと、名前で呼んでもいいかな!?」
その言葉に、みんなの視線が殿下に集中する。
「あっ!いきなり呼び捨てにはしないよ!せめて、家名ではなく名前で呼ばせてくれないかと・・・」
殿下の言葉に、不敬ながらも”カワイイ”と思ってしまい笑みが溢れる。
「ふふふっ、殿下なら許可など得ずとも、好きに呼べるではないですか?」
「そうかもしれないが、やはり相手がイヤだと思うことを無理強いはしたくない。だけど、ボクもみんなともっと仲良くなりたいから・・・」
『あぁ.....そうだった。本来の殿下は、相手を気遣える方だったわ』
「優しいぞい!殿下!わたしのことは、どうぞ”スカーレット”と!!」
「べつに、、いいよ」
「畏れ多いですが、わたしも構いません」
「私も」
私たちの言葉に安心したのか、殿下がまた心からの笑顔を見せてくれる。
「ありがとう。クリスティナ嬢、スカーレット嬢、モアナ嬢、ミレーネ嬢、改めて今後ともよろしくね」
そのあと、ダミエレ様と目が合った私は、
「シュルーダ様も、どうぞ私のことは名前で呼んでください」
「ありがとうございます。では、ボクのことも名前で」
こうして、私は再びダミエレ様のことを名前で呼べるようになった。
「学園では敬語ではないほうが嬉しいんだけどな」
すると、殿下が期待を込めた目で見てくる。
「さ、さすがに、それは・・・」
前世でも敬語を使っていたのですが。
「スカーレット嬢もモアナ嬢も、気軽に話してくれるから大丈夫だよ?ミレーネ嬢も気軽に、ね?」
さすが、怖いもの知らずのお二人です。
「ぜ、善処します・・・」
小動物のようにプルプル震えながら答えるミレーネ、かわいい。ダミエレ様、ちゃんと見てるかしら?
「徐々に慣れていく・・・ということで構いませんか?」
そう私が答えると、
「あぁ!それで構わないよ!」
今日一番の笑顔を見せてくれたリュドヴィック殿下であった。
「乙女、、殿下、、男に、、前進」
モアナがそのようなことを言い、ミレーネとダミエレが笑っていたとは気づかずに・・・。
スカーレットは、
「みんな友達だぞい!!」
と、喜んでいたのであった。
『ーーーーーよろしく、クリスティナ嬢』
遠い記憶がーーーーー懐かしくて優しい風が、私の心を通り抜けた気がした。
クリスティナの呼び方は「クリ」に決まりましたが、3人娘の呼び方に”ひねり”がなくてスミマセン・・・笑
それにしても、2年生になってからリュドヴィック頑張っていますね!!
積極的に頑張ろうとするリュドヴィックの心情も描いていきますね~\(^o^)/
私も怠けずに描き続けたい!!おもしろい小説があると、ついつい読みふけってしまい更新が遅くてスミマセン......(´;ω;`)泣




