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天使のほほえみ  作者: L
65/72

短い春休み④ ~メアリーと天使殿~





 短い春休みの後半。




 今日は、スカーレット様の誕生日プレゼントを買いに行く日である。


 4月生まれのスカーレット様は、新学期と同時に私たちより先に8歳を迎えるのだ。


 朝早くからウェバー伯爵家へと赴き、モアナ様の姉であるマリエ様に庶民風コーデをしてもらった。


 ウェバー伯爵家の隣は、スカーレット様のグスタフソン侯爵家のため、私とミレーネ様を乗せた馬車をスカーレット様に見られないように、朝からグスタフソン3兄妹は遠乗りに出掛けているそうだ。


 スカーレット様を連れ出すように、マリエ様がフレイム様に頼んでくれたらしい。



 そして何より驚くのが、マリエ様とウェバー伯爵夫人のテンションの高さである。


 朝からテンションが高すぎて、「よくテンションが1日もつな〜」と感心してしまうほどだ。



「あら〜!!あなたがロバート公爵令嬢様ね〜!!ロバート公爵夫妻とは学生の頃に同じ生徒会で私の後輩だったのよ〜!!お二人のいいとこ取りした、なんて可愛らしいお嬢様なのかしら〜!!!」

「そうでしょ〜!!お母様!!あの!ロバート公爵様と公爵夫人の愛の結晶であるクリスティナ様よ!!さぁ!お顔をよく見せてちょうだい!!今日の庶民風コーデは、この私が完璧に仕上げて差し上げますわよ〜〜〜!!!」


 と、早口マシンガントークを炸裂していた。


「お母さま、、お姉さま、、うるさい、、ウザい」


 と、まったり、ゆっくりな毒舌トークをするモアナ様。


 きっとモアナ様は、テンションが高いお母様とお姉様を見て育ったため、まったり、ゆっくりと、話すようになったのではないだろうか・・・と想像する。


 このテンションを緩和する人が必要だものね。


 ウェバー伯爵夫人もマリエ様もテンションが高いだけで、決して悪い人ではない、むしろ善人であるから憎めないのだ。



 こうして、マリエ様を筆頭に、ウェバー伯爵夫人ことカイラ様により、私とモアナ様、ミレーネ様は商家の娘風に変身したのである。


 今日は、スカーレット様はいないため、護衛はロバート公爵家から用意した。カーティスの他に2名、どちらもロバート公爵領私兵団の者である。


 ロバート公爵家から護衛を出すことについても、ミレーネ様の父親であるワグナー伯爵もモアナ様の父親であるウェバー伯爵も、二つ返事で了承してくれたという。


 家紋がないロバート公爵家の馬車へと乗り、王都の一般通りを目指す。




 一般通りに到着した私たちは、慣れた足取りで雑貨屋さんへと向かう。


 私たちは、スカーレット様へのプレゼントを何にしようかと馬車の中で相談したのだが、3人の意見は意外なことに一致していた。



「「「大きなクッション!!!」」」



 先日も行った雑貨屋さんに置いてある大きなクッションは、私の誕生日プレゼントを買いに行ってくれた時にもスカーレット様はとても気になっている様子だったらしく、モアナ様の誕生日プレゼントを買いに行った時にも肌身離さず持ち歩いていたのだ。お店から出る時には、名残惜しそうに置いていたっけ。


 

 雑貨屋さんに到着して、すぐに大きなクッションが置いてある場所へと向かう。


 スカーレット様が気に入っていた大きなクッションは、まだ売れていなくてホッと安心した。


 いくつかある柄のなかでも、赤い布地に黄色い鳥が刺繍された大きなクッション。


 なんてスカーレット様の名に相応しい色合いだろう。



「今日は来ていないお嬢ちゃんが、ずっと持っていたものね〜。それをプレゼントしてあげるなんて、お嬢ちゃんたちは本当に優しい友達じゃの〜」


 と、店主は笑みを浮かべながら、大きなクッションを包んでくれた。



 そして、広場での屋台巡り。


 もう、私は怖くなかった。



 モアナ様がウッドボックスに新しいお菓子を入れたいと、チョコレートやキャンディーを量り売りするお店を覗いたり、ミレーネ様が天使族に関する本がないかと古書店を覗いたりして、アンのパン屋さんへと向かう。



 ログハウスの扉をあけると、


「いらっしゃいませ!!あっ、みんな来てくれたんだ〜!」


 アンの元気な声が出迎えてくれる。


「アン!こんにちは〜!」

「アン、また来ちゃった」


 すると、モアナ様が一歩前へと出て、


「アン、、ごめんね、、身分、、隠してて」


 と、アンに謝った。


「モアナ!謝らないで!たしかにビックリしちゃったけど、ここでは今まで通りでいいって約束したんだし!」


「うん、、でも、、これ、、食べて」


 モアナ様は、先ほど量り売りで買ったキャンディーをアンへと渡した。


「えっ!?もらっちゃっていいの?本当に?」

「うん、、食べて、、ほしい」

「ありがとう!大事に食べるね!」



 モアナ様は安堵したように口角を上げた。


 そして、パンを購入しようと私たちが選んでいると、


「あのね!あたしもごめんね!!」



 急にアンが謝ってきたのだ。


 身分を隠していたのは私たちなのに、何に対してアンが謝っているのかわからず、私たちはポカンとする。


「どうしたの?アン?」


 私が続きを促すと、


「あ、あのね、あたし、お貴族さまってイジワルな人だと、ずっと思ってたの。平民は勉強もできないってバカにするし。でも、みんなと友達になって、お貴族さまにも優しい人はいるんだって思ったの。だって、みんなが優しいのは、きっと、みんなのお父さんもお母さんも優しいからでしょ?スカーレットの兄ちゃんたちも優しいし。だからね、お貴族さま全員をイジワルだなんて思ってたから、あたしもごめんなさい!!」



 アンは勢いよく頭を下げてきた。


 私たちはアンへと近づく。


 トレーを持っているため抱きしめることはできないが、


「顔あげて、アン」



 アンを怖がらせないように声をかける。


 アンもまだ7歳なのだ。いくら、貴族である私たちが「敬語ではなくていい」とか「呼び捨てでいい」と許したからといって、いつか罰せられるのではと不安に思っていたとしてもおかしくはない。


 きっと、実際に貴族から心無いことを言われたこともあるのだろう。


 ソロソロ.....と、顔を上げるアン。



「ここでは”今まで通りに”というのは、私たちの我儘だよね。でもね私は、ここのパンも好きだし、アンという友達も大好きなの。私は、貴族の世界はしきたりばかりで、庶民のように気軽に話したり、気軽に名前を呼んだりできるのが羨ましかったの。アンには、絶対に迷惑をかけないと約束するよ」

「迷惑だなんて.....そんな.....」

「アンに、”わたしたちのお父さんもお母さんも優しいんでしょ”って言ってもらえて嬉しかったよ。わたしのお父さまもお母さまも本当に優しいの。庶民の人たちを傷つけるようなことはしないよ。だから、安心してほしいな」

「アンを、、傷つける、、貴族が、、いたら、、絶対、、許さない」

「ありがとう、みんな.....本当に、今まで通りでいいの?」


「「「もちろん!!!」」」



 そしてアンは、泣き笑いになりながらも、今日1番の笑顔を見せてくれたのだった。



 また今日も、大量に買ってしまったパン屋さんを後にした私たちは、約束の時間が迫っているため最後の目的地へと向かう。




ーーーそこは天使殿。



 天使殿の前には、私の専属侍女であるメアリーが待っていた。


 実は、初めて天使殿を訪れたあとに公爵邸へと帰宅した私は、すぐにメアリーに天使殿のことを話したのだ。


 メアリーも、王都に天使殿があることを知らなかったようで、とても驚いていた。


 みんなが正式な祈り方を知りたいと言っていたことを話すと、快く引き受けてくれたのだ。



「メアリー!!」



 私たちに気づいたメアリーは、深々とお辞儀をする。


 侍女服ではない私服のメアリーを見るのは初めてかもしれない。


 17歳の少女らしく見えて、とても新鮮である。



「メアリー!迷わずに来れた?」

「はい。王都警備隊屯所のお隣だと伺っておりましたので、迷わずに来れました」

「メアリーさん、今日はよろしくお願いします!」

「よろしく、、お願い、、します」


 ミレーネ様とモアナ様がメアリーに挨拶をすると、


「ミレーネ様、モアナ様、身に余るお言葉、恐縮でございます。僭越ながら、こちらこそ宜しくお願い申し上げます」



 みんなの挨拶が終わったところで、



「ねぇ、メアリー?天使殿の外観は、大天使殿と似ているの?」

「いえ、大天使殿は白を基調とした外観となっております。こちらの天使殿は大天使殿よりも.....どっしりとした、という感じでしょうか?」

「たしかに古くて重厚感のある建物だもんね。外観は大天使殿とは違うんだ〜。あっ、今日も片側だけ扉があいてるね」

「私が着いた時からあいておりました。てっきり、他の方が中にいらっしゃるものかと思っておりました」

「前もあいていたんだよね」

「あいてました」

「いつも、、あいてる、、片側だけ」

「両側ではなく片側だけ、いつもあいているのですか・・・」



 メアリーは不思議そうにしながらも、私たちは扉へと向かった。



 中へと入ると、やはり誰もいなかった。


 するとメアリーが、


「わぁ〜!」


 と、口元に両手を当てて感慨の声をあげる。



「天井に描かれている天使様の絵も、ステンドグラスの柄も、とても、とても、大天使殿と似ております」

「外観は違うけど、内装は同じってことなんだね」

「やっぱり、ここは天使殿で間違いないってことなんですね」

「太陽が、、まぶ、、しい」



 私たちは、陽の光が燦々と降り注ぐ天使像の前まで行く。



「本当に、男性の天使像なのですね」

「やっぱり、メアリーも初めて見る天使像?」

「はい。大天使殿にある天使像は、大天使アーリエル様だけですから、私も初めて拝見いたします」

「カーティスたちも知らなかった?」


 後ろに控えているカーティスたち護衛3名にも確認してみる。大人だからね。


「はい、私どもは公爵領育ちではありますが、王都に天使殿があることさえ知りませんでしたので、大変驚いております」


 護衛を代表してカーティスが答える。



 『やはり、公爵領の大人でも知らなかったということね』



 私が疑問に思っていると、


「メアリーさん!ぜひ、正式な祈り方を教えてください!」


 ミレーネ様が期待の眼差しをメアリーへと向けていた。


「では、僭越ながらご説明させていただきます。まず最初に”この国を守護し、天界を統べる天使様”と、天使様に呼びかるお言葉を言います。そのあとに、ご自分のお名前を伝えて、日頃の感謝やお護りいただきたいことを伝え、最後に”私とご縁があった方々に、ご加護をお与えください”と、周囲の方々のためにお祈りを捧げるのです。以上ですが、大切なことは心から伝えるという”想い”だと、大天使殿の使徒長様に教わりました」

「しとちょうさま?」

「はい。大天使殿を守護する方を”使徒”といいます。他国の神殿で例えるのでしたら、神官といわれる方と同じです。その最高責任者を”使徒長”というのですよ」

「使徒も、使徒長も、知らなかった」

「わたしも知らなかったです」

「わたし、、も」


 私たちの言葉にメアリーはニコっと笑い、


「では、後ほど使徒についてはご説明いたしますので、先に天使様にお祈りを捧げましょうか」

「「「はい!!!」」」




 天使像の前に、私たちはメアリーを中心にして横に並び、膝を床へとつけて胸の前で手を組む。


 私たちの後ろには、カーティスたち護衛3名も同じように祈りの動作をする。



 そして、目を瞑って祈りを捧げた。



「この国を守護し、天界を統べる天使様」


 メアリーの祈りの言葉に私たちが続く。


「「「この国を守護し、天界を統べる天使様」」」



 ここからは、各々が心の中で祈りの言葉を紡いでいく。



「私とご縁があった方々に、ご加護をお与えください」


 メアリーの祈りの最後の言葉に、また私たちも続く。


「「「わたしとご縁があった方々に、ご加護をお与えください」」」



 そうして、ゆっくりと目をあけた。



 なんだか、男性の天使像が笑っているように見えるのは気のせいだろう。


 なぜなら、男性の天使像は両手を胸に当てたまま目を瞑っているのだから。



「とても心が洗われた気がしました」



 そう言ったメアリーは、優しい笑みを浮かべている。


 不思議な世界で見たメアリーは、この場所で切なくて悲しそうな表情をしていたため、今のように穏やかな表情をしてくれていると安堵してしまう。




 そして、私とミレーネ様、モアナ様は、先日と同じ長椅子に座り、その前にメアリーが立つ。



「では、先ほどの説明の続きですが、使徒や使徒長様のお話の前に・・・天使族や魔族について説明させていただいてもよろしいですか?」


 穏やかな表情のままのメアリーが私たちに聞いてきたため、私たちも笑って頷いた。


「ありがとうございます。それでは、認識の違いがあるかと思いますので、まずは天使族と魔族について私の知る範囲ではございますが、ご説明させていただきます」



 天使族や魔族についても、私たちが知りたかったことだ。



 メアリーの声が天使殿に響くーーーーー。



「今から三千年前、まだ国と呼べるものがなかった時代、天界を統べる天使族、地底を統べる魔族は、この地上で人間と共に生活をしていましたーーーーー」














ついに天使族と魔族について語られそうです(^O^)/

なんと!人間と共に生活していたの!?

コフィア王国がつくられた背景とは!?



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