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天使のほほえみ  作者: L
64/72

短い春休み③ ~忘れられた天使殿~

前回からの続きです。

春休みに入る少し前の時間軸ですね☆彡


よろしくお願いします!




 そうして、最後に連れていきたいところがあるとミレーネ様とスカーレット様に案内されたのは、王都警備隊屯所の隣にある建物だった。



 その建物は前世の記憶にもなく、古くて荘厳さを感じさせる建物。


 周囲に並ぶ建物よりも奥まった場所にあるせいか、通りを歩く人々はその建物に目を向けようともしない。



 でも、私は不思議とその建物に入らなければならない気がした。



「ここは......?」

「天使殿だよ」

「天使殿?あの、”大天使殿”と同じ天使殿?」

「本を読んで探してみたら、ここは遠い昔からある天使殿みたい。先々代のリュバン王は、よく来られていたみたいだよ」


 ミレーネ様の説明を聞いて、私は唖然としてしまった。



 天使に守護されるコフィア王国ーーーーー。


 それなのに、王都にある天使殿の存在を知らなかったのだ。


 前世の私は、たしかに王都の貴族通りですら来たことは数えるほどしかないが、それは王太子妃教育で多忙だったからだ。


 王太子妃教育では様々なことを勉強した自負はある。天使族や魔族について、あまり習わなかったことを疑問に感じてはいたが、”賢王”と呼ばれたリュバン王が訪れていたという天使殿にも関わらず、王太子妃教育でも学園でも教えないなんて、どうなっているのだろうか。



 取り壊すこともせずに残してあるということは、見られたくない何かがあるわけでもなさそうなのに。



「忘れられた天使殿.....」



 私は、そう呟いていた。



「あっ!また扉があいているぞい!!」


 なぜか、天使殿の両開きの扉が片側だけあいていた。


「前もあいていたんだぞい!クリスティナ様!中はとってもキレイなんだぞい!入ろうぞい!!」


 スカーレット様が走って扉へと近づいていく。私とミレーネ様は頷き合い、スカーレット様を追いかける。



 扉を抜けると、すぐに奥にある大きな天使像が目に入った。


 室内はそれほど広くはなく、3人掛けの長椅子が左右に3つずつあるだけ。天井には小さな天使様たちの絵が描かれており、橙色や緑色など様々な色を彩るステンドグラスの窓からは陽の光が差し込んで、柔らかい空間だと感じさせる。



 『あら?ここって、どこかで見たことがあるような気がするわ・・・・』


 

 もちろん、ここへ来るのは初めてだ。王都の一般通りへ来たことも初めてなのだから。


 ミレーネ様とスカーレット様は、迷いなく天使像のもとへ歩いていく。


 私も後ろをついていき、初めて実物の天使像を見つめる。


 大天使アーリエル様の天使像の絵は本で見たことはあるが、前世でも実物を見ることは叶わなかった。



「あれ?男性の天使像?」


 天使像は女性だと想像していたため、私は驚いてしまった。


「そうなの。こちらの男性の天使像についての本を探しているんだけど、まだ見つかってないんだよね。お父さまにも聞いてみたんだけど、お父さまもわからないって」

「でもぞい!クリスティナ様!天井には男の子の天使様も描かれているぞい!だから、男の人の天使様がいてもおかしくないんだぞい!!」

「たしかに!大天使アーリエル様の名前しか知らないから、勝手に天使像は女性だけかと思ってた!」

「これはモアナが教えてくれたんだぞい!」


 自分の手柄にはせずに、正直に打ち明けるところがスカーレット様らしい。


「名前はなんて言うのかな?」

「今まで読んだ本にも、大天使アーリエル様以外の名前は載っていないんだよね。王国の始祖であるリュー陛下の王妃も、”天使族の姫”という記載しかないんだ」

「たしかに、私もそれしか知らないかも」


 前世の記憶を辿っても、天使族に関しては大天使アーリエル様以外の名前を見たことはない。



「それなら!リュドヴィック殿下なら知ってるかもしれないぞい!!」

「リュドヴィック殿下!?」


 ここで、まさか殿下の名前が出てくるとは予想もしていなかったため、素っとん狂な声が出てしまった。


「うん!リュドヴィック殿下なら王族だし、初代王妃様の名前とか天使族についても知ってるかもしれないぞい!!」

「たしかに.....そうかも。殿下なら、王族の歴史についても詳しく学ぶはずだもんね」


 ミレーネ様が納得したように同意する。



 『前世の王太子妃教育で私が教わらなかっただけで、殿下は知っていたのかしら?でも、たしかに王宮の図書館には禁書庫もあるという噂はあったし、まだ婚約だけで王族になっていない私だったから、教わっていなかっただけなのかもしれないわね』



「学園の新学期が始まったら、殿下に聞いてみるんだぞい!!」

「そ、そうだね。き、き、緊張するけど頑張る!天使様のことが知れるんだもん!」


 ミレーネ様がスカーレット様の言葉に対して既にプルプルと緊張しながらも、決意を固めたようだ。



 『そういえば、ミレーネ様もリュドヴィック殿下とお話されているのだったわね』



 まだ話せていないのは私だけなのだと思いながら、改めて目の前にある男性の天使像を見つめる。


「なんだか、吸い込まれるような不思議な感覚・・・」

「わかるぞい!わかるぞい!」

「みんなでお祈りしよう」


 ミレーネ様の言葉に私もスカーレット様も、そして護衛の3名も、自然な動作で膝を床へとつけて胸の前で手を組み、目を瞑って祈りを捧げる。



 『私の名前はクリスティナ・ロバートと申します。天使様のお導きで、私は2度目の人生を歩いております。大切なものに気づかせてくださり、心から感謝申し上げます。同じ過ちを決して繰り返しません。 見ていてくださいませ、天使様。優しさを返し、恩を返し、そして大切な人たちを心から愛します。こんな私に、やり直しの人生を与えてくださり、本当にありがとうございます』



 祈りを終えて目をあけると、先ほどよりも強く、ステンドグラスから陽の光が天使像へと降り注いでいた。


「きれい......」

「きれいだぞい......」


 私とスカーレット様が、引き寄せられるように瞬きもできず呟くと、


「あ、あのね、クリスティナ様、スカーレット様。前にスカーレット様とモアナ様とここへ来た時は夕方で、あまり長くいられなかったから、今日は少しだけ椅子に座ってゆっくりしていってもいいかな?」



 ミレーネ様、なんて可愛いお願いなのだろう。


 まだ空は橙色に染まっていない。前回よりも、ここへ来たのは早い時間だったのだろう。


 もちろん、私とスカーレット様はすぐに頷いた。


 私も、もう少しここにいたい気がしたから。


 私たち3人は一番前の長椅子へと座り、各々がキョロキョロと天使殿を見回す。


 ゆっくりと、天使殿の全体を眺めていて思う。



 『立派な天使像もあり、これほど天井に描かれた天使様もステンドグラスも素晴らしいのに、どうして忘れられているのかしら・・・』



 するとミレーネ様が、


「実は、天使様への正式な祈り方を知らなくて・・・」

「それなら、わたしも知らないぞい!みんなは知ってるぞいか?」


 スカーレット様が大人である護衛に尋ねるが、彼らも「知りません」と首を横に振る。


「私も知らないんだ。さっきも、一応は自分の名前と感謝の言葉はお伝えしたんだけど.....知っていそうな人かぁ.....あっ!メアリー!!」

「えっ!?自分の名前も言うんだぞいか!?」

「メアリーさんって.....クリスティナ様の侍女の?」


 スカーレット様とミレーネ様が、全く違うことに反応した。


「私も、自分の名前を伝えるのかどうかさえ知らないんだよね。たださっきも、なんとなく伝えただけで。それで、メアリーはね私の侍女なんだけど、あの大天使殿のあるアンヘルの出身なの!前に、大天使殿にはよく行っていたと話していたから、もしかしたら祈り方も知っているんじゃないかな~!帰ったら、メアリーに聞いてみるよ!」

「ぜひ教えてほしいわ!」

「わたしも教えてほしいぞい!!」


 と、メアリーのことを話した直後、


「あっ!!!」



 『思い出したわ!ここは、不思議な世界で成人したメアリーとヒュース様がいた場所よ!!』



 ここへ入った時に感じた既視感は、夢のようにも感じ現実のようにも感じた、あの不思議な世界で見た場所だったからだ。


 あの不思議な世界では、メアリーもヒュース様もこの長椅子に座っていたし、ヒュース様は王都警備隊の隊服を着ていた。


 この天使殿の隣は、王都警備隊の屯所だ。ならば、前世でメアリーとヒュース様は本当にここへ来ていたということなのだろうか。



「クリスティナ様!急にどうしたんだぞい!?」

「大丈夫?クリスティナ様?もしかして、何か忘れ物とか?」


 私が急に大声を出したものだから、2人を驚かせてしまったようだ。


 しかし、「ここを不思議な世界で見ました」なんて言うわけにもいかず、


「あっ、ごめんね!なんでもないの!ただ、私のお父様から聞いたんだけど、我が家にあるダフネを植えたのは初代ロバート公爵で、その初代公爵が天使族だったのではないか、という話があるらしいの。だから、私も公爵家のことを調べてみようと思って!えへへっ」

「そうなんぞいね!クリスティナ様の髪色は天使族の血を受け継いでいるだろうから、公爵家のことも調べてみるのはいいかもしれないぞいね!!」

「そうだね!クリスティナ様のお家の門にあったダフネのことだよね?あれが何千年も前に天使様が植えた木なのだとしたら、とてもロマンチックだもの!」



 咄嗟についた言い訳が、2人を興奮させてしまった。

 

 嘘はついていない。


 でも、ごめんなさいお父様。言い訳に使わせてもらってしまいました。


 心の中でお父様に謝罪する。



「あぁ~!やっぱり、ここへ来ると頭がスッキリするぞい!!」

「わたしも目の調子がよくなった気分だよ」

「えっ!?そうなの?」

「そうぞい!なんだか、勉強が進むんだぞい!!」

「わたしも、少しだけ視力が上がったの。実は、この眼鏡も度数を少し下げて作り直してもらったんだよ」

「モアナは、食べ過ぎてもオナカが痛くならないって言ってたぞい!」

「天使様の力だとしたら、すごいね~!」

「気のせいかもしれないぞいけどね!」

「ふふっ、たとえ気のせいだとしても、そう思っているのは悪いことではないよ!」



 私たち3人は、笑いながら天使殿の扉へと歩き出す。


 外へ出ると、西の空は少しだけ橙色に染まってきている。



「あれ?あれってなんだろう?」


 私は、空の方向へ指を差す。


「どれぞい?」

「どれかな?」

「あの、水色の輪?っていうのかな?」



 空よりも低い位置に、水色の輪がまるで王都全体を包んでいるかのように見えているのだ。


 明らかに空の青色よりも薄い色のため、空ではない()()ということは明白なのだが・・・。



 『前からあった?ないわよね?』



 しかし、


「水色?空はあるぞい?」

「うん。輪は.....雲のことかな?」


 どうやら、スカーレット様とミレーネ様には見えていないようだ。



 『私の目が変になっちゃったのかしら?』



「ごめんね!私の勘違いだったみたい!えへへっ」



 また誤魔化してみたものの、2人は不思議そうな顔をしていたが。



 私たちは、最後にもう一度だけ天使殿を見上げてから、馬車が待機している王都警備隊屯所へと歩き出したのだった・・・・。







次回は、時間軸が戻ります。

春休み中に、スカーレットの誕生日プレゼントを求めて、クリスティナ、ミレーネ、モアナが王都に繰り出します\(◎o◎)/!

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